99年新年旗開き


大隈議長あいさつ(1)


 おめでとうございます。

 恒例のように、情勢についてだとか、党のやろうとしていることについてご報告させていただきたいと思います。 たくさんの友党の皆さん、先輩の皆さん、友人の皆さんがおいでいただいていることに、感謝申し上げて、新年のごあいさつにしたいと思います。

 また、党創立二十五周年でもあります。労働党の歴史を振り返りながら、結党に参加され、あるいはその後のさまざまな段階でこの党に参加された同志たちに、いっそうがんばろうと呼びかけたいと思います。

 私は以降の報告で、わが党のような組織が、十分敵を戦略的に蔑視(べっし)する根拠がある、ますますそれが明らかになったということを申し上げ、心を一つにしていっそう前進する、そういう決意を固めるよい機会になれば幸いだと考えて、ご報告を申し上げたいと思います。

(1)昨年の概括

 まず、昨年を概括的に振り返りたいと思います。

世界の情勢から申し上げます。経済危機がご存じのように昨年、もともと一昨年のタイの通貨の下落から始まった経済危機ですが、ちょうど昨年の今頃、「これは短期間で終わらない。容易じゃないなあ」、そういう認識の状況でしたが、それがロシアに広がり、中南米に広がって、ついに全世界を巻き込んだ。それだけでなく、米国でヘッジファンドの危機が表面化しました。などで、ドルを中心とした世界経済の限界が見えた、あるいは世界の資本主義体制の危機が重大な局面にきている、と人びとに気付かせた。そういう一連の変化ではなかったかと思います。

 ユーロが誕生し、ドル、ユーロ、円の協調でドル体制を軟着陸させ、こんにちより安定した世界にしていこうという考え方も生まれてきておりますが、これが幻想であることも、昨年末の動き、また年が明けて今日までの動きを見ると明らかではないかと思います。

 かくして、『世界の資本主義はどこへいくのか』という、皆さんもNHKのテレビで見られたように、また新聞もこのように問題を取りあげ、にぎやかですが、どれも明確な展望がない、こういう事態になっています。

 その経済状況と深く関連しておりますが、世界政治や安全保障面でも、昨年は大きな変化があったと思います。

 インドやパキスタンの核実験がその一つです。

 五大国、つまり国連の常任理事国はすべて核兵器を持っておりますが、考えてみれば、他国につくらせないという核独占体制は、よくいままでもったといわれるほど、危ういものだったんですね。こうした体制で世界の平和が維持できるなどと幻想をもつ人びとを、あの両国の実験は頭から水をかけて目を覚まさせたのではないか。

 逆説的ですがわが党は、このことによって本当の意味で核のない世界を目指す問題がもう一度人びとの認識を呼び覚ましたのではないか、核が広がるということは確かに危険なことですが、しかしこの事件は、核兵器をなくしていくという課題を真正面から掲げなければならないという面では、積極面があったというふうに理解しております。核独占の支配体制は打ち破られたとみて差し支えないと思います。

 また昨一年、米帝国主義の限界とあせりがますます明らかとなって、国際政治にはこれまでと違った変化も見られる動きがあったように思います。そのひとつは、米国が中東和平に決め手をもたない、あるいは力の限界というものを暴露したのではないか。また、イラク爆撃もその一つだろうと思います。かつての湾岸戦争の時には先進資本主義国のほとんどすべての国が追随しましたが、それに常任理事国間での大きな亀裂はありませんでしたが、昨年のイラク爆撃では、ロシア、中国、フランスなどが、これに同意せず反対した。国際政治が、やはり変化しつつあることを示したのではないか。

 もう一つ、これはいろいろな角度から取りあげてみなければなりませんが、例のヨーロッパにおける十三カ国での社民政権の成立です。社民政権の成立それ自身はヨーロッパにおける労働者階級と広範な社会層の救済、あるいはその要求の実現につながるものではありませんが、しかし、ユーロに向かってのヨーロッパ支配層の引き締め政策、既得権に対する攻撃、膨大な失業者、これらに対する労働者、各社会層の反応を示すものとして、いわばユーロの裏側として注目すべきことではないかと思います。

 いずれにしても世界のすう勢についていろいろな見方があります。世界は次第に多極化に向かっているという考え方があります。これはその通りだと思います。また、世界は安定に向かっているという考えもあります。これは私はウソだと思います。主要国の関係は、最近の経済危機の状況、行動からみて、協調は容易ではあるまい、したがって世界は当面安定へではなく、劇的な動揺、若干の安定など、起伏はあるかもしれませんが、けっして安定に向かうものではない、むしろ不安定に向かっているとみて差し支えないと思います。

 安定に向かうという考え方は、米帝国主義が理性によってその限界を知り、歴史から去るという考えだろうと思いますが、ことはそれほど簡単ではないと思います。

 いずれにしても世界は、激動に向かう。私は、予想もしない大きな激変が近くにきているとみて間違いないのではないかという、予感めいた気分で新年を迎えました。

 

国内問題について若干振り返ってみたいと思います。

 九六年に橋本政権が誕生し、安保での日米共同宣言、そして九七年は基本的に二つ、支配層の側から動きがあったと思いますね。

 一つは、国際政治面で特に後半ですが、日ロ、日中、米中、米日と、あわだたしく、米軍が東アジア戦略にそって十万の大軍を配置し、アジア情勢に備えようという体制と関連した、大国間の、政治の調整といいますか、戦略同盟などという言葉も使われましたが、そういうことがあった。

 もう一つ九七年は、国内政治で橋本政権が年初から『六大改革』を唱え、そして九七年の十一月には赤字削減の財政改革法を成立させた。

 わが党は、この政策が破たんすることは、内外情勢からみて避けがたいと主張してきましたが、九八年の年初には、すっかりその改革政治は破たんし、まったく逆のことをやらざるをえなかった。そして、昨年七月の参議院選挙で惨敗し、小渕政権が成立しました。

 彼は「金融システムを立て直したり景気を回復するためには何でもやる」、こう言って銀行のために国民の税金を六十兆円も投入する、景気対策に数十兆円。なりふりかまわずやっておりますが、すべてのそういう政策が、効果がない、どうにもならなくなっている。これが昨一年の橋本改革政治の破たんと小渕政権の成立、その結果であって、自民党政府は容易でない危機に直面しているんです。

 ユーロが発足しましたが、前後してドルがいっそう動揺し、日本の支配層の危機感は頂点に達するほどのようであり、まったく打つ手がない。こう思います。

 ただ、昨年の後半から始まった注目すべき政治面での動きです。自自連立です。対米従属になに一つ変更を加えず、安全保障や憲法問題など、反動政策を軸にしての政権基盤の強化が進められています。彼らは、国の根本的な大枠、激動する世界情勢の中で日本はどう生きていくか、対米関係をどうすべきか、これに変更を加えないまま、国内政治だけを反動的に再編することによって政権基盤を強め、切り抜ける道に踏み出しています。これは、今年の闘いにとって一つの大切な問題だと思います。

 経済界は、合併や買収など資本の集積、集中をいちだんと強めて国際的な流れに対処しようとしており、減量化もいよいよ本番になってきております。工場閉鎖や倒産の激増、失業者の増大など、昨一年いちだんと進みました、今年はもっと激しくなると思います。

 野党の闘いの状況ですが、民主党の正体も随所に見えたと思います。銀行救済の六十兆円。自民党は日本の巨大銀行の番犬、この主人の餌(えさ)をもらって食べているそういう政党ですが、民主党も基本的には同じだということが、明らかになった。

 また、イラク問題、朝鮮問題に対する態度でも、民主党はすでにその正体を明らかにしています。朝鮮問題で事があったら後方支援するということも明確に約束した。そういうわけで、民主党がどういう政党であるかは暴露されてきていると思います。

 公明党については、内部にいろいろな矛盾はありますが、それでも基本的にそう民主党と違わないのではないか、こう思います。

 社民党ですが、昨一年の動きを見ますと、確かに参議院選挙を前にして自民党と袂(たもと)を分かった、与党離れをしましたが、まだやはりムチウチ症みたいな後遺症が残ってるようで、方向が定まっていないのではないか。個々の政治家はともかく、社民党という政党全体としては、やはりそう見えた一年であったように思います。

 共産党はますます月並みな市民政党になって、その道を進んでいる、こう思います。

 労働組合の連合は経済危機の中で立ち往生をしています。財界とのアベックはますます断ち切れない。財界自体が、労働者を街頭に放り出して企業の生き残りをかけているが、これと闘わない。結局のところ、減量化に打つ手もなく、賃上げもできない。労働者階級の中で連合は、中核的な組織だと思うんですが、そしてしかるべき役割を演じるべきですが、何百万人も出る失業者から見ると、何のあてにもならない。自分だけ生き残っている、そう映る。

 いよいよ減量化は、国の機構についても避けがたく、地方自治体も財政危機は進んでおりますから、民間だけでなく、官公労全体にも及ぶ。どうするんでしょうか。

 私はかつての旗開きで、官公庁の労働組合も、いよいよやけどするようになれば、熱いぐらいは言うのではないか、こう申し上げたことがありますが、もう各所でやけどが始まったのではないか。内部には闘いも模索もあるようですが、でも、待つ以外にないですね。

 ただ、それでも危機は進んでいるし、労働組合の指導部がどんな態度をとろうと、企業内のクビを免れた労働者に対する攻撃はますます強まって、街頭に放り出された失業者は激増している。これからもっと大失業時代となる。中小零細企業の倒産も、記録を次々に更新しております。

 したがって、闘う以外に道がないということ、これが昨一年の変化でますます明らかになったのではないか。

 昨一年の労働党の問題ですが、労働新聞、各種のパンフレット、街頭宣伝、職場や地域での各種の活動で、政府の政策と野党の欺まんを暴露し、政党としての任務をできるだけ果たそうとしました。労働者の闘いを各所で激励し、失業者問題にも取り組みました。

 国際政治問題でも、たとえばインド、パキスタンの核実験、私どもは、支配層やマスコミが、核独占と闘わないで妥協的な意見を出すそういう見解があふれる中で、敢然と問題の真実を訴えました。各所から私たちの主張に賛意が寄せられました。その賛意の中には、勇気ある発言だとの激励もございました。つまりこれは、本当はそうなんだけれどもなかなか人が言えない、こういうことだろうと私たちは理解し、わが党こそそれらの見解を堂々と発言すべき責任があると思いました。

 米国のイラク攻撃についても断固として反対しました。朝鮮問題でも、私たちは日本の国内で広く行われている北朝鮮に対するいわれのない批判に反対いたしました。また中国との友好運動についても各所で努力をいたしました。

 広範な国民連合の発展のためにも、参加する皆さんと共同してわが党員は各所で努力し、その組織的発展に貢献いたしました。党建設でも一定の努力、前進をいたしました。

中日共産党問題について申し上げたいと思います。 

 昨年夏以降、この問題について発言しておりませんので、党の内外からいろいろな質問がございました。あまり急ぐことではないのですが、二十五周年でもありますし、新年でもありますので、ご報告申し上げたいと思います。

 まず第一に、この両国共産党の関係回復は、国際共産主義運動とは関係のない、したがって、かつての関係の復活ではなく、回復の名に値しない両党間の関係樹立であると理解しております。

 中国共産党はこんにち、国際共産主義運動を自国の当面の重要な戦略的任務とはしておりません。もちろん共産主義を捨てたという発言もしておりませんが、しかし、ご存じのように経済建設に熱中しております。共産主義を口にしないのはもちろんですが、帝国主義、覇権主義に反対する統一戦線を呼びかけてもいません。前進した国際政治、経済上の地位、こうした国力を背景に、大国としての政治をやっている、そういう政権党であります。その政権党が、対日政策の一部として、日本共産党の問題を解決したのです。日本共産党の不破も、共産主義運動としての関係回復ではないと言っているわけで、当然のことです。

 中国の政権党と、ますます月並みな議会政党である日本共産党、この二つの党がそれぞれ自国の必要さ、自党の必要さによって関係を樹立したということです。

 中国共産党は対外関係ではずうっと前から、たとえば日本の政権党である自民党、世界の政権党と関係をもっております。野党とももちろん連携をもっている。中国共産党は自分の当面の戦略課題にそって、対外関係をそれにふさわしく調整し、関係の樹立を進めておるわけで、国際共産主義運動の復活などかんぐる理由はまったくないのです。

 次に労働党から見た若干の経過と問題点、わが党の態度について少し触れてみたいと思います。

 中国共産党がわれわれにこの問題を口にするようになってからもう十数年になります。わが党は、「中国共産党の必要さからそれをやることに、われわれは何の異議もない。それは両党の問題。われわれが日本の国内で共産党に反対し、新しい党をつくって前進しているのは中国とは関係のないこと、これがわれわれの態度だ」と明確に述べてきました。

 日本労働党は中国共産党の仕事を手助けする組織ではない。党をつくったのは日本国内に理由があったからで、日本共産党のとっておる政治路線とその政策、それが私どもの新しい党の成立の前提である。

 したがって私どもは、中国共産党の諸君に、十数年前から伝えてあります。「あなた方は中国料理がおいしいと言っている、それをあなた方が食べるのに何の不服が私どもにありますか。日本にも和食があってわれわれは和食が好きだと言う。これは長い歴史や経験から来ていることです。お互いに自分の好きな料理を食べるのは自由ではありませんか。あれ食べちゃいかんというのは両党間にはない」。こう申し上げました。

 ただその時、私どもが要求したわけではないのに、中国共産党の諸君は、「日本共産党と関係を回復しても決して労働党との関係を切ることはありません」と、くり返し約束しました。全世界でこの種の関係回復がやられたときに、ほぼそれを原則としていると聞いております。

 今回の中日両共産党の関係樹立とこの問題の関係は、どうなっているかでありますが、日本共産党の出版物、不破の発言等々の中では、日本労働党との関係を中国共産党は切ると約束した、とくり返し発表しております。中国側からは何の発表もありませんが、しかしこの問題を契機にして、中国共産党とこれまで関係のあった日本のさまざまな政治グループとの話し合いの内容から察するに、その通りだと思います。

 ただ、これはまた聞きですし、直接確かめようもないので、私はわれわれ自身の経験からこの問題を申し上げてみたいと思います。

 この三年くらい前から中国共産党は労働党と公式な連絡を絶ちました。私どもは何度も連絡を試みましたが断ちました。したがってさまざまな、さっき申し上げたような日本人に対する中国側の説明と、日本共産党の文書の内容は、思い過ごしかもしれませんが、事実であるとの感触をもっております。私どもはしかし、あわてておりません。

 正直に言えば、口約束であれ、くり返しなされたそれらのことは本来は説明があってしかるべきだと思います。そうしていないんですね。ただ、わが党の側から、信頼を裏切らなかったことは幸いだったと理解しております。

 個人の相互信頼ならば、それはそれで友に対する失望をかくしきれないかもしれません。しかし、個人ではなく両党、これは国と国との関係も同じでしょうが、時々の必要さで友を求め、都合が悪くなればその友との行き来を差し控える、国際政治では冷厳な現実ですね。こうしたことで私たちはきわめて効果のある歴史的経験をいたしました。わが党の水準を現実に即したものにするという点でよい教育を受けたと思います。

 中国共産党とわれわれの関係についてのわが党のこれからの態度ですが、今回の問題でのやりとりを、わが党の側からやることはありません。わが党の力が十分発展しなかったので、労働党とつきあうより日本共産党とつきあった方が得だと考える中国共産党の考え方にはそれなりに根拠がある。わが党はそう思います。

 また日中両国人民の友好や交流運動についていえば、たとえば日本共産党もある時期、それに山口派もある時期そうでしたが、両党間の意見の相違があると、どこからともなく、いつとはなしに、実質的に両国人民の友好運動に反対するようになった歴史的経過があります。私は、両国が近くにあって、両国人民が友好を継続することが、戦争を避けたり、共存していく上で不可欠ならば、これこそ政党の義より大義であろうかと思います。そういう点で私どもの側からいささかもこの点で、揺らぐことはありません。

 もちろん、わが党は従来にもまして中国共産党がとっている内外政治について意見をいうことが束縛されなくなったという意味で、悪いことばかりではないと思います。現に、日本の政権党、各国の政権党、野党も、中国共産党と同じ意見をもたず、中国共産党のさまざまな政策を批判していて、それでいて関係は成立しています。われわれもまたそうであってちっとも差し支えないのではないか、こう思います。これが私どもの態度です。

 私どもは中国共産党がとっている対外政策についても、社会主義建設の路線についても、いささか異なった意見をもっています。しかし、それをいつどんな形で論戦するかそれが有益か、などは私どもが判断すべきこと、そう理解しております。

 以上が、中日両国共産党問題とわが党の態度の問題です。

 いずれにしても昨一年は、敵側のシステムが非常に危機に陥っている、日本の支配層がどうにもならなくなった、そういう意味で、私どもが新年を大きな確信、情勢の発展を予感しながら迎えるのには十分な情勢、根拠が示された一年であったと、申し上げたいと思います。



Copyright(C) Central Comittee OfJapan Labor Party 1996,1997,1998,1999