98新春旗開き


大隈議長あいさつ(2)

97年を回顧して


 昨年はご存じのように一月から、ペルーで武装集団による日本大使館の占拠事件がありました。ここから始まったんですね。ここですぐ気がつくことは日本の大使館にあれほどペルーの高官が勢ぞろいし、あるいは各国の大使が集まっておる。そして、各国の政府関係者以外にも日本の企業家たちの出先機関がたくさんこの大使館に来ていたわけですね。

 あらためて日本がああいう国々にたくさん進出している。日本の経済面で見る世界的な広がりの一端をはからずもかいまみせたような気がしながら、あの事件の推移をみておりました。

 少し日にちは飛び越えますが、七月のタイでの通貨危機。ここから始まった通貨の下落が、またたくまにアジア全域に広がった。そして、通貨と株の下落、アジアの全ての国で金融システムが動揺し、経済危機が表面化したわけですね。実体経済も非常に深刻となって今日に至っております。年末までにはタイ、インドネシア、韓国の三カ国がIMF(国際通貨基金)の管理下に落ちたわけです。アメリカはこのIMFなどと手を組んで、この危機のさなかに、どさくさにまぎれて市場開放を迫り、銀行をおとし、火事場泥棒のようにアジアに食い込んでいる。こういう状況が現れました。

 それからヨーロッパ。来年の一月には単一通貨になるわけでありますが、そこを目前にして、ご存じのように年末にはフランスの失業者が政府の出先機関のいたるところを占拠して政府に失業者に対する手当を要求して闘っています。それに新聞によりますと、ドイツでは失業者が一二%を超えコール政権は、公約としてかかげた失業対策の目標は達成できないと、発表しました。こうして、ヨーロッパの体制もその内部にさまざまな矛盾と闘いがあって、決して順調ではなく、ゆれている実態があります。

 アメリカは、経済が繁栄していると言われていますが、そんなことはありません。あれはバブルですよ。アジア経済の危機の中で、ひとり影響をうけずにすむという状態でないことは歴然としています。

 アメリカの株もアジア関連などは下落しました。なにより、アメリカは経済的に強いなどと大きなことを言っておりますが、世界で最大の借金国。金を貸しているのは日本です。最近は中国も貸しておりますが、いずれにしても大きな借金を抱えている国ですから、アジアがころべばアメリカはただではすまない。そして、そうなれば世界的規模での大恐慌に突入するかもしれないのです。そんな構造になっているんです。

 そういう実態ですから、世界はきわめて不安定で、それが噴きだし始めた状況だと思います。

 日本の状況ですが、バブルの崩壊以降、経済は政府の景気観測などと違ってなかなか回復しないまま、四苦八苦しておったわけですが、アジア経済のこの状況に直面して、いっそう困難に陥った。わが国金融システムの動揺や円と株の下落等々が、わが国の不況をさらに深刻なものにしたと思います。

 橋本内閣の改革路線ですが、九月以降、第二次橋本改造内閣に移行し、揺らぎ始めると早いもので、まったく行き詰まってしまいました。財政再建路線は破たんしたと思います。

 十一月に財政再建法を強引に成立させましたが、十二月には違うことをやっています。橋本内閣がかかげた六大改革、彼らの改革の進め方では財政再建を前面にたて、あるいは軸にしてやっていたわけですが、それは基本的に破たんしたと思います。財政改革は、二〇〇三年を目標にしておりますが、たぶんその頃にはいっそう膨大な国家財政の借金をかかえて苦しんでおるだろうということは想像に難くないと思います。

 また、この危機の発展とかかわってですが、昨年後半に、いくつか政治状況に変化が見られました。一つは日本共産党の二十一回大会です。詳しくは後ほどふれてみたいと思いますが、どちらかといえばイタリア共産党の歴史的妥協に酷似した路線を採択したということです。危機が近いと見て、彼らは支配層に恭順の意を表すことで、政権に接近しようという路線をとったんです。これは国民の闘いにとって、警戒すべきことだと思います。

 また、年末ぎりぎりには新進党が分解して政党再編の加速化、小沢らは自由党を結成しました。つまり政治・政党の再編は昨年末を境にして、新しい状況になったと思います。

 いずれにしても、最初に申し上げたように、橋本内閣は、昨年後半以降、内外で行き詰まりを深め、崩壊が目前に迫っておるというふうに思います。

 闘いですが、改革政治に反対するさまざまな闘いは、中小業者だけでなく、労働者によっても闘われています。昨年の全港湾の闘いはよかったと思います。沖縄県民の米軍基地反対の闘いは、曲折はあってもその力強さは疑う余地がなく、政府をしだいに追いつめています。

 主としてアジアを軸に動いた世界情勢などにもふれなければなりませんが時間がありません。とにかく内外とも激動しました。そして新年です。

 ですから、この九八年はとてもおもしろい、そういう状況になろうかと思います。


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