皆さん、おめでとうございます。今日はたくさんおいでいただきまして大変ありがとうございます。わが党の同志もたくさん集まっていますが、友党の皆さんや労働組合その他各界の友人、先輩にもおいでいただいています。私たちは毎年こうやって皆さんと一緒に、旗開きをやれることを非常に喜びに感じております。あらためてお礼を申し上げます。
年頭に当たりまして、党の情勢に対する見方や今年どんなふうに闘っていくか、ということをご報告させていただきまして、新年の党を代表した私のあいさつにかえさせていただきたいと思います。
いくつかに分けて報告したいと思います。
最初に、過ぎた一年を振り返りながら、要点だけどんな年であったかということにふれたい。
次に、それを振り返りながら若干、以降の闘いにかかわりのある問題で、党の考え方を述べてみたい。
三番目に、闘いや課題、今年の党の取り組みなどについて報告させていただきい。
最後に、情勢や闘いの展望について申し上げたいと思います。
過ぎた一年ですが、昨年の変化あるいは推移をみますと、内外の危機の深まりや闘いはいよいよこれからだなと、そういう気がしています。支配層もご存じのように内外情勢に突き動かされて現状にはどどまっておれなくなっている。
第二次橋本内閣が成立して、橋本首相は「五つの改革」を「火だるまの決意」でやると言いました。官房長官の梶山静六さんも、危機感を訴えましたし、大蔵大臣の三塚さんも、「命をかけてやる」といった。三塚さんは財政、金融などに深くかかわっているわけですが、この改革がどれほど深刻なものかということ、戦前ならばこの改革はたぶん大蔵大臣の命がいくつあっても足りないほどの問題だと言いたかったのでしょう。
年が明けてから財界などもいっせいに「改革が進まなければ日本が滅びる」という危機感をさかんに表明しています。新聞もみなそう書きたてています。
これらを見ますと日本の財界や政府も現状にとどまれなくなった、この状況を「改革」、つまり打開しなくてはならない。こういうことだろうと思います。
けれども、国民多数の側にとっても、この状況は我慢ならないことだと思います。たくさんの中小零細業者は潰れましたし、規制緩和その他がいっそう本格化すれば、それらのことはいっそう進む。産業の空洞化などで中小業者が潰れただけでなく、大企業はさかんに労働者を街頭に放り出し、倒産した中小業者のところにもたくさんの労働者が働いておりましたから、これまた街頭に放り出された。こういう具合で、国民の多数にとってもこの状況は我慢ならず、闘いはいよいよこれからだというふうに思います。
国際関係を見ましても、やはり昨一年は急速に変わったんですね。ロシア、中東、アフリカ、中南米など、何が起こるかまだわかりにくい地域はありますが、アメリカの動きもアジアにシフトする形で非常にはっきりしてきましたし、ヨーロッパも九九年EU(欧州連合)の通貨統合、またNATO(北大西洋条約機構)の東方への拡大など、明確に変化がでています。
ASEAN(東南アジア諸国連合)の発展、あるいは中国の強大化、それにインドなども含めアジア全体の興隆、こんな具合に見てみますと、今世紀末から新しい二十一世紀にかけての姿がますます見えるようになってきた、こう言えるのではないかと思います。
これらの内容について、もう少し述べてみたい。
内政では、ご存じのように昨年の正月には村山首相が辞任して、同じ三党連立ではありますが、橋本内閣が成立しました。
その下で、年初から現地沖縄を中心に闘いがさらに燃え上がって、アメリカとわが国の政府を追いつめました。大田知事や沖縄県政の態度への評価などさまざまな意見があることは承知しておりますが、私は沖縄県民は大きな一つの成果、戦後あまり見られなかった大きな前進を闘い取ったというふうに思います。
大きな闘いには起伏、あるいは曲折はつきものですから、それを理由に沖縄県民の闘い、その大きな成果を低めてはならないと思います。基地の県内たらい回しなど政府はごまかしをしておりますが、県民の闘いはとてもそれを許す状況にはないと思います。
次に、四月には安保再定義がありました。
これは実質的に、わが国の政府あるいは財界が、一つの重大な選択をした、アメリカの東アジア戦略構想にそって、十万の米軍を前方展開することを認め、アメリカとともに生きていく、集団安保にも基本的には踏み切ったということだろうと思います。
これは日本の進路にとって、敵側からする一つの重大な選択だった。もちろん、今年の十一月までのガイドラインの見直し問題や国内法の整備等々残ってはいます。沖縄問題も政府が思う通りには進まないだろう。しかし安保再定義は、日本の支配層が選択したという意味で、重大な影響を以降の発展に及ぼす出来事でした。
ついで日中関係ですが、きわめて悪化しました。これは偶然ではないと思います。中国の核実験問題での対応、「台湾問題は中国の内政」とする従来の見解からの実質的後退、日米安保の範囲の拡大、橋本首相の靖国神社参拝、尖閣列島問題など、こうやって時間的に並べてみますと、明らかに昨一年は日本の、先ほど申し上げた安保再定義の基本的な選択と符合する、そういう流れになったんだと思います。
当然のことながら、日中関係を心配するたくさんの人たちが危機感を強めた。昨年末の一二・一四集会(公開討論「日中関係打開の道」)、元総評議長の槙枝さんや保守政治家では後藤田さんなど各界のリーダーが呼び掛けられたものでありますが、これは日中関係の昨一年の大きな変化に対する国民の側からする最初の注目すべき一つの反応であったと思います。こういう点できわめて注目すべきことではなかったろうかと思います。
十月には総選挙がございました。各政党の消長もさることながら、第二次橋本内閣が成立して、「五つの改革」と銘打って本格的な攻撃が始まった。
さっき申し上げたように敵側には余裕がないことは明らかです。これはわれわれにとっては、いよいよ本格的にこの改革問題での認識を整頓し、隊伍を整え、腰をすえて闘わねばならない時期がやってきた、ということを意味するのだと思います。
総選挙の各党の消長、それ以降の動きなどからみて、政治再編は政治的分岐がまだ明確になってない、議論さえされていない、危機がいよいよこれから本番を迎えるというようなことを考えますと、政党再編もまだこれからが本番だというふうに思います。
国際関係ですが、一つはアジアです。
アジアはここ数年間、速いスピードで成長してきたが、昨年は調整期といいますか、また、円高が円安に修正されたことも響いているのだと思いますが、若干の成長の鈍化がみられました。しかし、NIESやASEAN諸国、中国それにインドなどアジア諸国の経済が引き続き前進し、この地域が二十一世紀に向けての世界経済で、成長の中心であることが一段と明らかになりました。ASEAN諸国の政治的発言力はこの一年もますます高まったと思います。
中国はいっそう前進し、強大化したと思います。
経済も引き続き前進し、アジア地域での経済的、政治的な比重は、ますます大きくなったように思います。昨年の三月、中国は台湾海峡で干渉を許さない姿勢を演習という形で鮮明にしました。
それに続いて中国は外交面でさまざまな成果をあげています。その一つは、南アフリカ(台湾の国際「外交」の大きな柱でした)が、台湾と断交して、中国との国交を回復する姿勢を鮮明にしました。また、昨年末にかけては香港の統一問題で、(今年の七月の実現にむけ)慎重に準備を成功させつつある、まちがいなかろうというような成果をあげています。
その他、アジアやヨーロッパとの外交で、多くの成果をあげていますが、米中関係でも大きな変化をつくりました。
APECの会議直前にクリントン米大統領は、オーストラリアのキャンベラで演説し、対中国政策を非常に重視する姿勢を鮮明しました。中国はこのアメリカともきわめて複雑な闘争で確固として対峙し、外交では引けをとらぬ大きな闘いを演じていると思います。世界政治面で中国は一段と強大になったと思います。
アメリカですが、さっき申し上げたようにキャンベラでクリントンは、実質的に第二期政権の基調的な外交演説をしました。三つ言っております。一つは、同盟国との関係を強める。もう一つは、中国に対する関与政策。三つ目は民主主義の拡大、人権です。
注目すべきは、関与政策との関連で、これから数カ年、中国がどんな対応をするか、これによって二十一世紀は世界にとって明るいことになるか、あるいは別なことになるかが決まる、だから関与政策でなんとしても中国を国際社会に引き入れなければならない、と強調している点です。
これは、アメリカがアジアに十万の軍隊を配置して、中国をいわば軟化させる、「普通の国」にするということです。「積極的関与政策」というのは、中国が自国でその必要さに応じて、自分の方針に基づいて国を建設し、あるいは世界で生きていくという道に対して、アメリカが一つの選択を迫っているんだと思います。だから決して、米中関係が穏やかにはすすまない可能性があると思います。
いずれにしてもアメリカは、世界政治や経済の中で、アジアに比重をますます移しつつあるということが鮮明になった、こう思います。
ヨーロッパですが、九九年の通貨統合に向けての方向が、いっそう定まった。昨年の前半はどちらかといえば、フランスもドイツもその他でも労働者の闘いが非常に高揚しました。後半になりますと、どうやら九九年の通貨統合に向けてヨーロッパが進むのではないかという印象が強くなったような気がしております。
支配層が若干の楽観論を持つようになり、また事実、ユーロ紙幣のデザイン決定など通貨統合に向けての実務的なさまざまな仕事、またEU以外の国でもそれを前提にした動きがすでに始まっています。もちろん、政治と同じでそうなるかどうかはわかりません。ヨーロッパの各国での労働者階級の闘いはやんでおりませんが、そういう状況が一つ進んだと思います。
また、ヨーロッパはNATOをロシアなどの反対にもかかわらず、東方に拡大していくという選択をしました。
そういう具合いで、国際関係もさまざまな危機をはらみながらも、今世紀末と来世紀に向けての姿が大方見えるような昨一年の動きであったと思います。
こうして内外状況を昨一年振り返ってみますと、わが国の支配層、政府の内政も外交も、大きな困難に直面していることは疑いないことだと思います。
確かに闘いは困難さもあると思います。国民の側から闘いを組織する上で、昨年の選挙でわかりますように、各政党はすべて「改革」、「改革」などと言って同じことを唱え、だれが労働者階級の本当の利益を代表するか、だれが中小零細業者とともに闘ってくれるのか、こういう状況はない。これは事実です。
しかし、私は悲観する理由はまったくないと思います。敵側にとっても大変な危機ですから・・。国民を追い立ててもそれは国民を立ち上がらせることになる。国民の大多数、労働者にしても他の中小零細業者や農民にしても、政治が応えなければ、実生活から疑問がますます広がるであろうと思います。
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