20010515・発言

小泉政権成立の事情と政局について(1)

目前の参議院選挙で社民党は支持しない

会議における大隈鉄二議長の発言


 この「会議での議長発言」は、小泉政権成立の事情や当面する政局についてのわが党の観点や判断を、労働新聞の読者、ホームページのアクセス者に広く提供するために公表しました。内部の記録ですから、一部修正、削除しましたが、責任は労働新聞編集部にあります。主な内容は、この問題にどう接近するかの方法論、小泉政権の成立の事情と政権の課題と手法、手をなくした野党とその混乱、社民党問題とわが党の態度、などとなっています。

 議論の続きをやりませんか。昨日はどちらかというと、ひと当たりの意見で、いくつかまだ問題がある。討議して意思一致を図っておかなければならん問題がある。その一番最たるものは、実践上というか、例の社民に対する決定の見直しなど、ニュアンス程度にしても、「社民を支持しない」方針の見直しが必要ではないかとの意見もあったわけですから、その前提となるような情勢、その他いろんな議論はまだ足りないと思います。
 この局面をどう見るか、諸階級というか、諸勢力というか、諸政党というか、それらが目指していたもの、それらがどういう事態に当面したのか、それらがこの状況をどう評価しているか。そして、それらを前提にして諸勢力が、この現れた局面にどう対処するだろうか。
 まだ、結論をきちんと出している政党は少ないと思いますが、それにしても動きが始まったわけで、それらの相互関係や全体を見て描く、あるいはその結果はどうなるだろうかというような、われわれとしても「社民への見直し」という意見も出ているわけですから、それも含めて、この新しい局面を再吟味し、これまでの結論を動かすのか、動かさないのか、という問題がある。そんな議論も必要だと思います。
 それで、私だけが発言していないので、昨日A同志、それからB同志、C同志、D同志の順に、情勢の全面展開ではありませんが、この局面を理解する上でのいろいろな接近の仕方だとか、それからそれなりのこの局面に対する自分の判断みたいなことを述べました。これを今朝もう一度(ICレコーダー)聞いてみたんですが、それを前提にして、私なりにこの局面をどう理解しているか、しようとしているか、というようなことを、少し発言してみたいと思います。
 それではまず、基本的には前回の政治局(三月二十六日)での討議、私の発言を踏まえて、この時点でどういうつもりで言ったのかも含めて、発言してみようと思うんです。


 まず一つは、前回の政治局会議の頃の局面は、いわば三月に入って急に株安というかそれがあって、そして情勢を株安だけで説明してはだめですよという意見を言いながら、あれは、株が少しもち直してきたような局面での議論でしたね。その時に、政局のいろいろな移り変わりを見る場合、こういう時期、つまり経済危機が非常に深まっているこういう時期には、主として経済状況の変化から突き動かされて、政局を含む情勢の全体が動く、こうしたことが非常に多い、という話をした。
 これを単純に言うと、森が成立したのも、森が崩壊したのも、急に評判が悪くなって崩壊したわけですが、そういうようなことも含めて、それから総裁選、そういういろんな局面で、それを突き動かしているもの、政局を突き動かしている要因として、今のような時期には、主として経済の所に注目しておかなければならんと。これが大きな要因になって財界が動き、政治が突き動かされている、と言った。
 内因、外因についての話ですが、政治それ自身は政治の力学で動く。その内部の要因、メカニズムで。その内部のさまざまな要因やら政党の相互関係、あるいは、特に政局などというのは、議会の比率だとか、勢力関係などで動く。
 私が言おうとした、政治を突き動かしその背景をなす経済は、政治から見るとある意味では基礎をなすんだけれど、経済それ自身は外因ですよね。
 だが、経済が変わっていくと、主として経済を運営している経済界の状況判断も変わる。それに政府のいろいろな政策は、国の経済に大きな比重を占めているので、政治に対する評価にも何かと影響してくる。したがって、政府に対する要望にもなる。経済界と結びついた政党や政治家の動きとなる。こういったわけで、政治それ自身の内因として政治の中に組み込まれる。あるいは反映される。
 ここで私は、まず最初に、グローバルな時代ということ、それから日本と米国との関係、もちろんアジアとかその他ヨーロッパとかも相互関係があるわけで、それぞれ作用し合っているわけですが、ここではちょっと極端に日米関係にしぼって、話したい。
 米国のさまざまな経済や政治の動きは日本に影響を与える。つまり相互関係があるわけで、日本の政治や経済を含む国の動きに影響を与える。例えばブッシュ政権が成立したというようなことは、直接的には日本の国の進路に大きな影響を与える。政治的影響を及ぼす。つまりブッシュが成立するとブッシュのいろんな対外政策を予測して、あるいは現実の対外政策となって日本に対してさまざまな要求が出てくるから、日本の政治もそれに対応せざるを得ない。構造的に、そうなっている。
 米国の経済はどうかというと、米国の経済はいま、特に去年の十月時点からだが、米国経済の落ち込みは、それが表面化したのは今年になってからだが、でも経済界はとっくにいろんな手ごたえを感じていたはず。
 だから、米国のいろんな国情が日本に影響するとすれば、最近のわが国の情勢を考えてみると、ブッシュが成立したことと、米国経済が落ち込んだこと、この二つですね。
 仮にこれが、組み込み済みであったり、この数カ月とか、この数カ年変化しないという条件のもとでならば、相互関係があったにしても、主として日本の要因、日本の経済あるいは政治の要因で、日本の情勢の現状とすう勢、あるいは変化を、判断することは可能ですね。
 しかし、米国が大きく変化した。政治も経済も変化した。つまり、二〇〇〇年の秋口以降、政治も経済も大きく変わったということですね。政権がブッシュになる。つまり、民主党から共和党へ。これはそれなりに政治が動く、日本の政治にも響く。それから、米国の経済は十月から落ち込んでいて、これまた日本への影響は大きい。
 ここでは、主として経済を取り上げてみたいんですが、米国の今度の落ち込みの影響をどう見るか。日本の側から見ますと、もちろん米国のことは外因。
 だが、日本の経済や政治の移り変わり、特に経済面をみると、日本はもうバブルがはじけて十年になる。にもかかわらず、なかなか景気が回復しない。それから九七年のアジア危機も大変だった。そこで、米国との関連だが、全体としてアジアがV字型というか、立ち直ったのも米国経済の好況に支えられた。それから、日本がバブルから立ち直らなくて十年苦しんでいるとはいえ、このくらいで済んだのは、やはり米国の好況というのが前提にあった。そういう状況のもとで、つまり米国がずっとバブルでやってきたお陰でアジアも立ち直ったし、日本もこのくらいで済んだ。ヨーロッパもまあまあだった。こうした事情があった。

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