労働新聞 2004年1月1日号 青年

新春学生座談会
私たち、イラク派兵に反対です

参加者
稲田 夏美(大学3年生)
江島 菜穂(大学2年生)
日向 雪(大学1年生)
村井 千香(大学3年生)

世界で高まったイラク反戦 
行動すれば輪が広がる

司会 新年おめでとうございます。昨年の春は、イラク戦争に反対する運動が日本でも世界各国でも高まりました。皆さんはその時、何を感じ、どう行動したのか、お聞かせください。

村井 この戦争に反対だと感じている友だちといっしょに、初めてデモを企画しました。いろんな学校にビラを張りに行って宣伝したり、友だちを誘ったりして、たくさんの学生に呼びかけました。おかしい! と感じている人はすごく多くて、いっしょに行動することはいいなと思いました。
 米国領事館に抗議に行きましたが、すごい人だかりでびっくりしました。いてもったってもいられず何か行動しようと、たくさんの人が街頭に出ていることを感じました。
稲田 とにかく若い人からお母さんや子供、おじさん、おばさん、在日外国人など、幅広い人が参加したと思います。インターネットやテレビ・新聞などを通じて世界の動きも伝わってきたので、仲間がたくさんいると感じました。
日向 反対のために私が何か行動したかというと、あまり何もできていません。のん気なように思われるかもしれませんが、まず今何が起きているのか、なぜそうなってしまったのかを学び知って、考えていくことから始めていったので、具体的なことはこれからの課題です。
 その第1歩として、先日、岡村昭彦さんという写真家のベトナム戦争写真展を行いました。戦争の悲惨さを感じ、平和へとつなげていこうという企画です。
江島 私は特に反戦運動をやってはいませんでした。ただ、戦争の早期終結を願うばかりでした。でも、戦争後、私が所属しているボランティア・グループの企画で、戦時中のイラクの人びとの写真を駅に展示したりしました。展示した写真は数少ないものでしたが、それでも会場に足を運んでくれた人たちはそれを真剣に見てくれました。

派兵のどこが国益なの? 日米同盟は危険な道

司会 世界の反戦の声を無視して、3月にブッシュ大統領はイラク戦争を開始しました。皆さんはこれをどう受け止めましたか。

村井 この戦争が「正義の戦争」だと、証明されるわけがないと思いました。実際に、大量破壊兵器は見つかりませんでした。米国は世界中の意見を無視しているし、米国がいちばん核を保有している。こういったことがしだいに明らかになっていくだろうなと思いました。
稲田 最初はすごく無力感に襲われました。ブッシュや米国という国、そことつながる産業・資本の複合体がとんでもない怪物に思えました。だけど最近思うのは、そんな怪物を構成しているのはやっぱり人間なんだということ。だから、きっと動かせるのではないかと。
 イラク攻撃を止められなかったけれど、人のつながりは増えました。1人の人が動くことは、そのまわりの人びとに影響するから、とても大きな意味をもつと思います。ただ、私たちにはまだたくさんの仲間の思いを組織して、国のあり方に対して影響力をもつまでの力は足りない。それがいちばんの課題だと感じています。
江島 イラク戦争開戦直後は、ただ悲しくて仕方ありませんでした。でも、多くの友人とこの戦争について意見を交わしている中で得た1つの答えは、「今回の世界規模での反戦運動に、イラク戦争を食い止めるほどの力がまだまだ足りなかったのではないか」ということです。もっと多くの人たちに反戦運動の波が広がっていたら、もう少し何かが変化していたのではないかと感じました。
日向 私たち1人ひとりの声は政治の代表者までは届かないのだなと思いました。運動に対する無力感は私の場合常にあり、悩んでしまうのですが、ここまでひどい状況になると、腹立たしさとくやしさで、無力感は以前ほど感じないように思います。

十分に考えて行動したい 多くの人とつながろう

司会 その後、日本では有事法制、イラク特別措置法などが急速に決定されました。自衛隊派兵について、どう思いますか。

稲田 私は絶対に行ってはいけないと思う。憲法解釈も通りこして自衛隊を海外派兵して、政府は既成事実をつくろうとしていると思う。米国との軍事協力も進んでいるし、アジアに対して不安と怒りの種ばかりばらまいている。自衛隊員の命も、イラクの人びとの命も、国を動かしている中枢の人たちはまったく考えていないと思う。こんな理不尽な侵略行為のお手伝いに行かされるなんて、よくもよくもという気持ちになります。
 署名活動で接した人たちも、反対という意見が多い。しかし、状況がひっ迫しているだけに、「自分は派兵賛成」といって議論を投げかけてくる人もたまにいる。
日向 どうして派兵という方向にいってしまうのか、まったく意味が分からない! 戦争がしたいというようにしか受け取りようのない行為。本当にイラクの人を援助しようと思うなら、なぜ自衛隊を送るのか? なぜ銃をかまえていくのか? まわりの人もほぼ同じ意見です。
村井 自衛隊まで派兵して、今日本はますます戦争への道に向かっていると思う。私はもちろん反対です。この前、友だちとつくったビラをまきながら街頭で宣伝しました。「がんばって!」と言って、応援してくれる人もいました。でも、「反対ばっかり言ってんと助けたれや」と言う人もいましたね。
江島 私も反対です。派遣の理由がハッキリ示されていないと感じます。もちろん、真の意図を明らかにすることは決してありえないことだと思いますが。
稲田 日本の民主主義はものすごく貧弱であることがよく分かります。政府は私たちをだまそうとするばかりです。「対テロ戦争」とか、「朝鮮民主主義人民共和国の脅威」とか言って、不安で成り立つ社会をつくろうとしている。私自身も学びながら、まわりに発信していかないといけないと思います。

司会 小泉首相は、イラクへの自衛隊派兵決定に際して、「日米同盟が試されている」「自衛隊が行かずに困るのはイラク国民だ」などと発言しました。これについてどう感じますか。

江島 「自衛隊派遣が実現しないことで困るのはイラク国民だ」という小泉首相の発言には疑問を感じます。彼はイラク国民ではないのに、どうしてそのようなことが言えるのか。
 自衛隊派遣にかんするこのような理由づけは、ただ国民の理解を得ようとするためのものに過ぎません。彼はただ、「日米同盟を何よりも重視する」という政治体制を、国民の目から少しでも逸らせたいだけなのです。私は、彼の発言からそのように感じ取りました。
稲田 日米同盟は日本の国益と合致するという前提で話していて、すでに私たち日本の国民の意見聞く気ないじゃないですかー! 本当に対等な立場から弱っているイラクの人びとの役に立ちたいというのなら、自衛隊が武器を持っていくのはおかしい。イラクの人びとは先の攻撃で本当に傷ついて、生活も破壊されているはず。そんな侵略行為を、日本はいち早く支持しました。
江島 まわりには、派兵に賛成意見の友だちもいます。「自衛隊派遣が本当にイラク国民のためだと思うか?」と尋ねたところ、「メディアがそう言っている」という返事が返ってきました。
村井 そもそもイラクを攻撃することがなければ、派兵する必要もない。米国や日本こそがイラクの人たちを困らせていると思う。

司会 北海道では自衛隊員の恋人をもつ女性が、1人で派兵反対のビラを配っていることが報道されました。もし、自分の恋人や家族がイラクに派兵されるとしたらどう思いますか。

日向 ニュースを見て、悲しくなりました。私自身、恋人はいないのですが好きな人はいるので、もしその人が派兵されてしまうとしたら、愛を築くどころか、振られることすらできないので、とてもとても困ります。恋愛が自由にできないようになってしまったらそれは、ひどくつまらない世の中です。
村井 困る。
一同(笑い)
江島 それはすごく難しい質問ですね。私自身としては「反対」ですが、私の恋人がイラクに派兵される道を強く希望しているのなら、また少し考え方も変わってきそうです。でも、恋人がイラクに派兵されるという事実に直面すると、派兵反対の運動を行うかもしれません。
稲田 そんなことをさせる国に対して強く強く怒る。彼氏には兵役拒否をするようすすめて、私はこれを全力で応援します。

司会 最後ですが、イラク戦争に反対し、自衛隊を派遣させないために、私たちにできることはなんでしょうか。

江島 ひとことでいうと、1部の地域に限定された運動だけでは、自衛隊派遣を食い止めることができないのではないかということです。運動の規模を全国範囲のものにしていくことがキーポイントとなるのは確かだと思います。
稲田 「イラク戦争」とは何であったのか、真の目的は何であるのか、このことに日本が巻き込まれたら、どんなことになるのかについて、人びとに真実を伝えること。共感できる人とつながること。展望を持って行動していけるように、運動仲間と学習したいきたいと思います。
日向 自分はなぜ反対なのか、反対していくことについても軽はずみではなく、十分に考え行動していきたいと思っています。具体的に今、私ができることは、同じように不満や疑問をかかえながらも、どうしていったらいいのか分からず悩んでいる人たちと、少しでも多くつながりを持つことだと思います。
村井 私は、反対の声を街頭に出て訴え、同じ気持ちの人とつながり、いっしょに行動したい。今の日本や米国の政治について、明らかにすることが大事だと思います。

司会 ありがとうございました。武装した自衛隊のイラク派兵は、日本の将来を左右する重大な問題です。私たちの思いをこれからも発信し続け、運動の輪を広げていきましょう。


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