労働新聞 2003年11月25日号 青年

国立大学法人化法の成立糾弾!
学生生活守る闘いはこれから

京都大学・全学団体交渉実行委員会
西村 悟さんに聞く


●全学団交実行委員会を結成

−−京都大学で団体交渉を行うに至る経過を教えてください。

 独立行政法人化に関して、学生側としては全学団体交渉実行委員会を結成、総長や当局に対し、法人化についての説明と、学生の意見を聞くことを求めてきた。現在は「国立大学法人化究明会」という形で交渉をもってきており、「団体交渉」は準備段階だ。
 以前から京大当局は、一方的に「法人化説明会」を開いていたが、学生や教職員の意見をくんだものとは言えなかった。そこで、7月に行われた説明会の席で、参加した学生が「われわれと話し合いを行え」と当局につめ寄り、以降、どういう話し合いを行っていくか、話し合った。当局が開催を長引かせたものの、足掛け4カ月たった11月になって、ようやく第1回目の法人化究明会が実現した。
 京大の長尾総長は、国立大学協会(国大協)会長として、国立大学の法人化の流れをつくった人物。その意味では、京大内だけでなく全国的に責任のある立場のはずだが、肝心の説明責任をまったく果たしてこなかったということになる。

−−究明会の中身は、どのようなものだったのでしょうか。

 11月14日に行った法人化究明会では、その長尾総長が過去に行ってきたことを説明させ、その内容・姿勢について謝罪させるのが目的だった。
 交渉では、総長はじめ、総長補佐(教官)が数名出席した。これまでと違うのは、文部官僚(事務長)が顔を連ねていたこと。これは、法人化によって、逆に大学への支配強化を手中に収めた文部科学省の、大学政策のあらわれだと思う。
 国大協がなぜ法人化反対の立場を貫けなかったのか、という追及に対して、長尾総長は「外部に負けた。民営化を阻止するためには受け入れざるを得なかった」と発言した。しかし、この発言はそのまま受け取れない。だれが見ても、国立大学法人化は民営化の布石であることは明らかだ。

●法人化究明会で総長を追及

 この大学の構造改革(法人化)には、教授や職員のリストラ、「企業に役立つ大学」という像がはっきり盛り込まれているというのに、長尾総長はこれまで反対の世論を喚起し、まとめるという作業をしてこなかった。なぜならば、彼個人は、法人化によってよい目をみるからだ。
 また総長は、「国大協・京大評議会(教授会)では、法人化に反対意見は出なかった」と言う。しかし、教授内に反対意見はあったのに総長自身が握りつぶし、学生に対しては意見を求めたこともなかった。そんな人物に、これから民営化という事態の中で反対表明ができるのかと問いただすと、彼はぐうの音も出なかった。逆に、会場からは拍手がわいた。
 また、長尾総長は「学生は国の資源」「大学は国のために」といくつかの文章に書いている。国家主義的な発言で、まるで中身を伴わないものだ。このことで学生から追及を受けると、「その通りです」と180度意見を変えてしまった。この種の社会的な問題について、深く考えているとは思えない態度だ。
 国立大学法人化は、私立大への影響も計り知れない。ほとんどの大学は解体・再編され、地盤沈下していく。このような危機にあるのに、究明会では、大学当局の無責任さが浮き彫りとなり、長尾総長の責任が改めて追及されるべきものであることがはっきりとした。
 12月3日には、初の団体交渉を予定している。究明会で明らかになった問題点に根ざして、この団交の場で法人化の波に対してどうやって具体的な対抗軸を打ち出していくのか、学生としても模索していきたいと考えている。究明会では、参加者の4割ぐらいが学生だったが、まだまだこれからだ。各現場の切実な状況を訴え、団体交渉に取り組んでいくことで、結集を勝ち取らなければと思う。

●団結して闘えば必ず勝てる

−−大学と学生とのあり方や「自治」について、どうお考えですか。

 学生は「サービスの消費者」とか「国の資源」と言われたりするが、実際は違う状況だ。大学当局の決定に自らの意見を盛り込ませるルートをもたず、団交権も拒否権もない。つまり、大学の「主体」として認められていないということだ。主体として認められていない学生が、本来は最も重要な存在のはず。また、学生だけではなく、京大に関わるすべての人びとを含めて、運動をつくりあげていきたい。
 さらに言えば、東大・京大など旧7帝大は、予算などの面で地方大学より優遇されている。つまり、その他多くの統廃合される大学の犠牲の上に成り立っている。この「京大の責任性」も追及していきたい。

−−学生の自主的な活動や学生運動の状況、あるいは闘いの決意をお願いします。

 われわれの置かれている状況は悪いのだから、逆に言えばこちらに有利。われわれには理(ことわり)があり、当局や文科省にはない。そして、相手の側には、学生と同様に既得権を失うことを恐れている連中もいれば、財界にすり寄る連中もいて、権力はあるが内部の結束はない。
 学生が自ら足を引っ張ることがなければ勝てるという自信がある。団結して、闘って勝つしかない。そして、勝てるんだということを全国の大学関係者や学生に示すことができれば、大きな勝利だ。そうして、厳しい状況に置かれている他の大学に力を貸していけるような状況をつくれればいいし、まずやって見せれば、各大学現場も元気になるだろう。
 各大学現場でのさまざまな問題は、大学をめぐる全体状況の悪化とつながっているし、それをリンクさせていくのが僕らの仕事だ。例えば、京大当局が、自主活動のための校舎を、老朽化などを理由に解体した問題がある。長尾総長は、学生の意見を聞いてきたと言うが、学生が代替施設を求めた申し入れを受け入れず、2年間も放置してきた。
 法人化含む構造改革、文科省の統制強化から企業への大学開放など、その目的のために学生の創造の場を圧迫していることを考えれば、こういう問題を個別の問題のままにせず、全体状況と結びつけて闘っていくことが重要だ。
 社会全体の状況は悪くなっているように思えるが、これをひっくり返したい。労働者も農民も学生も、各々の現場を社会全体の状況と結びつけて、現場の運動をしっかりやること、そして理をもって、彼らを超える実力を身につけることが必要だと思う。
 抑圧されている人間は多数派です。結集さえすれば僕らは勝てる。お互いがんばりましょう。

−−ありがとうございました。


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