労働新聞 2003年11月15日号 青年

中国・西安市の抗議デモに思う
今もなお厳しい対日感情

歴史認識で中国人とギクシャク
留学で知った侵略の歴史

大学生 岡田 幸恵

 中国に留学していた時、中国の友人に「君は何も知らないんだね」とよく言われました。今、中国にいる日本人留学生も、きっと同じことを言われているだろうと思います。
 今回の西安事件も、そんな日本人留学生による大学文化祭での過剰な演出がもとで起きたことです。実際、その留学生に悪気があったわけではないようです。
 しかし、そもそも私たち日本人が考えている以上に、中国人は過去の歴史について過敏だということを理解しないといけないのです。中国人は、日本軍によって二千万人が殺された怒りを、今も忘れていないということです。

戦争の話で突然怒鳴りだした先生

 実際に私も中国でこんなことを経験しました。いつも熱心に授業をしていた先生と学生がいっしょにご飯を食べに行った時のことです。少しお酒も入って話をしていると、ふとしたことから日本の話が出てきました。その瞬間、それまで穏やかだった先生の表情が一変、すごい勢いで怒鳴り始めたのです。
 私は初め、方言交じりの先生の言葉が理解できませんでしたが、良く聞いてみると日本が侵略した戦争の話でした。先生はもちろん私が日本人であることを知っていました。それから二時間、先生はしゃべり続けました。結局、先生とはそれが最初で最後の食事となりました。
 同様に、韓国・朝鮮人も日本のことになると、怒り出す人は少なくないといいます。
 中国にいる間、日本の侵略戦争のことでこんなふうにギクシャクすることは日常茶飯事でした。
 今回の西安の事件も、こうした歴史認識の違いがきっかけで起きたものではないでしょうか。

神奈川県知事の発言は許せない

 そんな時に石原知事は論外にしても、神奈川県の松沢知事が「日本にいる中国人留学生、就学生は皆コソ泥だ」と発言しました。間違いにしても、なぜ簡単にそんなことが言えるのでしょうか。
 一方では、今年から国立大学の独立法人化によって留学生の奨学金制度が改悪され、生活のために多くの留学生が夜遅くまでアルバイトをせざるを得なくなってきました。
 こういうことでは、せっかく日本に来て勉強をしても、日本の印象が悪くなるのではないかと心配です。
 中国へ行って、日本の歴史を改めて学ばなければいけないことに気づかされたのは、とても残念なことです。


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