労働新聞 2003年6月15日号 青年

教育への攻撃を許さず闘おう
大学改革打ち破る闘いを

茨木 多重子

■国立大学法人法案の国会通過を許すな
 
 99年以降、改革政策の目玉の1
つとされてきた「国立大学法人法案」と関連5法案が、衆参両院を通過・成立の見通しとなった。
 この法案は、大学に対する国の統制強化を狙い、文部科学大臣による中期目標の設定、業務の評価を行う評価委員会の設置、学長への権限集中や半数が学外者で構成される経営協議会、教職員の非公務員化などが盛り込まれている。「大学の自立性の破壊」「企業化」「淘汰と統廃合」を狙う法案である。国公私立を問わず、多数の大学職員や学生がこれに反対しているにもかかわらず、与党は強引にこの法案を押し通そうとしている。
 今年元旦に、財界(支配層)の要求として出された、日本経団連の提言「活力と魅力溢れる日本をめざして」(奥田ビジョン)は、大学改革を、「教育面では国際舞台で通用する……人材育成」「研究面では……世界水準の研究に取り組むこと」を目的として、産学連携の推進で、「これまでの制約を取り払って大学に自由と責任を与えるべき」「競争と自己改革を促すべき」と迫っている。ここにこそ支配層、多国籍大企業の大学改革の狙いがある。さまざまな民営化、改革攻撃とあわせて、多国籍大企業のための大学破壊の攻撃を許してはならない。

■いよいよ学生への攻撃が本格化する
 
 奥田ビジョンはまた、「国立大学は独立行政法人化をゴールとはせず、……その結果が民営化であったとしても驚くにあたらない」と述べている。彼らの真の狙いは、国立大学の法人化にとどまらず、すべての大学が国の手を離れ、完全民営化されることである。今回の「国立大学法人化」は、そのための1つの布石に過ぎず、これを契機に大学改革という攻撃が一気に加速することは自明のことである。それは、支配層に余裕があった時代とは違い、財政危機の下で大学教育へのコスト(公費注入)を削減し、し烈な競争の中で企業にとって必要な「人材」「研究」を割安につくり出すことが、彼らが国際競争の中で生き抜くための条件になるからである。それはまた、騒がせたくない学生運動の高揚を予測しながらも、この改革に着手せざるを得なかった彼らの危機の深さをも物語っている。
 したがって、大学人の闘いも、以降はリストラ・労働強化との激しい闘いとなるだろう。また、学生への攻撃もあからさまになってくる。
 「企業」としての大学の経営難は、授業料値上げとなり学生とその親に跳ね返るし、国際競争での生き残りをかける支配層の望む研究がこぞって強制され、学問の自由は完全に奪われる。そして多くの学生は、日本の産業が押しつぶされていくのにあわせて、現状以上に就職難に喘ぐこととなるだろう。しかし、戦後学生運動の歴史を振り返っても、支配層の危機が深まり、大学と学生に対する激烈な攻撃がやられたときこそ、不可避的に学生の闘争は生まれ、発展してきた。
 敵の目的がここまであからさまになった以上、切実な抵抗は高まり、仲間は増え、われわれの闘争に有利な条件をつくりだすといえるだろう。

■学園の現場から、学生運動は動き始めている

 闘いの勝利の鍵は、学生を中心とした大衆運動の発展にある。共産党などの議会政党に頼るのではなく、学生が学生自身の利益を守るための運動を巻き起こさない限り、その他諸階層との共闘も無力である。すでに、いくつもの学園現場で、管理強化や校舎移転問題、自治会・自主活動潰し、就職難問題など、この流れに抗する動きが芽を出している。そして、その動きは今後、避け難く全国的に大きなうねりとなるであろう。
 学生活動家には、その芽を見逃さずに、これまでの大学改革反対の運動を総括し、その教訓に学んで、闘いをさらに発展させる重要な任務がある。
 支配層による卑劣な教育改革との闘いは避けられないものとなった。この改革の真の狙いを暴露し、全国の仲間とともに、敵の策略を跳ね返す力強い学生運動を巻き起こそう!


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2002