20020715

学卒未就職者の手記

失業者の国会行動に参加
閉塞(へいそく)から前進へ!

大阪・高舟 猛雄


 私は大学卒業後、就職が決まらないまま、アルバイト生活と職安通いを続けてきた。はじめのうちは、「いずれ何かにありつけるだろう」というのんびりした気持ちでいたが、月日がたつにつれ、未だ就職できない現実に、焦りと閉塞感をおぼえるようになっていた。
 職業安定所という、本来は国民にとって頼みの綱となるべき場所が、精神の安定すら提供できないものになっているのは、ほとんどの求職者が感じていることなのではないだろうか。私自身も多いときで週2、3回は通い、すべての求人をチェックし、面接も受けた。しかし、職安係員の対応はいずれもマニュアル的で誠意のないものであったし、記載の応募条件と実際との食い違いも少なくなかった。
 収穫なき日々は心を悶々(もんもん)とさせる。職安の前にたたずむ、あふれんばかりの人たちと、そんなむなしさを共有していることを実感していた。
 そんな折、友人から6月14日の「失業者ネットワーク」主催の国会行動について知らされた。以前の自分ならどんな行動をしたところで何も変わることはないとしか考えなかった。だが、この沸々たるうっ積を吐露しないわけにはいかなかった。
 そして、日本の土台を支えてきた中高年世代から、次代を担うべき若年世代に至るまで仕事を得ることができないという異常な現実に対する国の認識を見てみたい、という思いもあった。かくして私はバスで東京へと向かった。
 国会行動当日、私は他の青年失業者共々、厚生労働省への要請団に参加した。
 会場となった庁舎ロビー横の1室には無表情な官僚がズラリと横1列に座っている。失業者側からの発言が始まると皆一様にペンを動かしてはいるものの、その表情は微動だにせず、失業者の切実な訴えに対しても画一的で意味不明な返答をタラタラとのたまうだけ。まるで「官僚コピーロボット」が設置してあるのではないかと感じざるを得なかった。
 私自身も、職業安定所の求人情報管理のずさんさ、職員の対応の悪さについて訴えた。また発言の最後に、失業は若年層にも侵食しており、多くは八方ふさがりな精神状態であって、いずれは爆発しても不思議ではないとも付け加えた。
 もとより、真摯(しんし)な反応というものはさほど期待していなかった。偏狭な、エリートコースの世界しか知らない凝固した脳みそには、切迫した人びとの苦しさなど到底理解できないものなのだろうと思う。
 しかしながら、要請団の訴えはいずれも憤怒に満ちたものであったし、あらゆる欠陥点をつきつけたことの意義は非常に大きいと感じた。
 その後院内集会、全体集会へと会場を移った。そこで今行動がいかに広域かつ広範な連帯によって取り組まれているかを、私は初めて知った。失業者個々人における微妙な政治認識の違いはあると思う。しかし、財界=マスコミによって虚飾された小泉構造改革の下、しだいに露呈してきているのは国民生活の根こそぎからの破壊に他ならない。先行きへの失望と怒りが、国中に渦巻きはじめている。
 それがひとつの行動への連帯として結実したものであることを、多くの参加者や労働組合、賛同諸組織を見て、私は気づいた。
 財界・大企業のために、国民の最低限の生活はことごとく犠牲にされている。決してぜいたくを求めるものではない、ささやかな暮らしをも根底から崩し、支配層のぜい肉と化していく。にもかかわらず、わが国における直接行動は、なぜかくも低迷しているのかと思っていた。しかし、国会行動に参加してみて、実際には将来への不安は今や国全体の共通認識であり、政治を根本からたたき直していく火種はそこかしこにくすぶっているのではないかと感じた。
 行動当日、会場にはわれわれと同世代の青年失業者の姿も少なくなかった。大学を卒業しても仕事がない、あったところで、決して安定的なものではない。若いうちはアルバイトでなんとかやっていけたとしても、それが将来へつなげられる保証はない。
 若い世代の多くをバイトや派遣といった不安定雇用の中に意図的におきながら、その一方でいわゆる「勝ち組」だけの支配をつくる。
 こうした矛盾への認識そして怒りが、少しずつではあるが、青年層内部にもひとつの潮流として形成され始めていると感じた。
 政治を変えていく力の源は、能書きからではなく、身に迫った問題から生まれるものであると私は考える。そういう意味で現在の閉塞状況は、これを団結にむけて打破していくべき絶好の機会に他ならない。すべての世代がいかに、政治による構造的暴力に闘いを挑んでいくか、私はこれから実践しながら探っていきたいと考えている。
 14日の最後を飾った、日比谷公園までのデモのシュプレヒコールは、都心のビル群に響き渡っていた。近いうちに、ビル群を崩壊させてしまうくらいのシュプレヒコールにしていこうではありませんか!