20020615

地方の厳しさを実感

青年の失業問題で署名活動
職安前は社会を映す鏡 若者にも職場を!

日本労働青年団 坂下 はるか


 現在、労働青年団は、「失業者ネットワーク」の人びとが取り組んでいる、6月14日の「怒りの国会行動」を支持して、ぜひ成功させようと願っています。それで、首都圏だけでなく、地方でも宣伝と青年の失業・就職に関する署名集めのため職安前で若者に声をかけています。 日ごろは、学生としてサークル、自治会活動など学内の課題を中心に取り組んでいますが、今回、大学から足を踏み出し、失業という社会問題に取り組んでみて、あらためてこの社会のリアルな現実に触れ、多くのことを学び始めています。何より同世代の若者が職を求めて苦闘している姿は、大卒就職率が5割というこんにち、私たちに他人事でない切実な問題として迫ってきます。
 労青団として以降どんなことを重視して活動していかなければならないのか、基礎的で大事なことを教えられているように思います。地方での、この取り組みの一部をご紹介します。

■6月6日(木)午後  A職安前
 かつての伝統産業が集中する地域の中心部に位置する職安。午後も人出が絶えない。私は東京の職安前でも署名集めを行ったことがあるが、そのときは圧倒的に中高年ばかりで若者が少なかった。東京には渋谷の「ヤングハローワーク」のように若者専用の職安があるというだけでなく、まだサービス業など、とりあえず若者が働く場所があるのだろう。地方の職安に若者が多いのは、それだけ厳しい雇用情勢を反映しているのだろう。署名も東京よりはるかに早いペースで集まる。
 署名してくれた人に、首都圏では失業者の行動が始まっており、6・14 には失業者ネットワークが呼びかけて、国会行動を行うことを伝える。遠いため、さすがに「行こう」という人はまれだが、「地方から参加しても交通費が出るのでしょうか?」と尋ねられるなど、関心は高いようだ。
 署名活動を手伝ってくれたA君は、積極的に自分から若い人に近づいていく。まず署名をしてもらい、いろいろ話を聞いていた。また、相手に、大学は卒業したが仕事を見つからない自分のことも話していた。署名の住所から、自分の近所に住んでいる同年代の青年も多かったとのこと。中には自分と少々年代は違うにせよ、同じ小中学校に通っていた人もいたという。自分自身が一求職者としてその職安に通っているにもかかわらず、そこに来る人と言葉を交わすことはなかったので、同世代で同じような境遇の人が「やっぱりいるんだな」と確認できたことが新鮮だったようだ。署名をすることが、新たな「自分」を発見することにもつながったのでしょうか。
 3月に大学を卒業した男性で、「今、大卒でも内定率は55%くらいで厳しいですよね」と言ったら、「自分の大学はそれ以下ですよ」との答え。同級生もほとんど就職していないとのこと。
 高卒未就職の女の子や男の子もいた。3年生のとき就職活動したが見つからず、こんにちに至っているという。話をしていて共通して返ってくる答えは、A君も言っていたが「今日も職は見つからない」との声……。
 職安の外に喫煙スペースがあるのだが、そこにおっちゃんたち8人くらいがたむろして、話をしている。署名ボードに張られた「若者に楽しく働ける職場を!」という文字を見て「俺らはすでにダメってか〜。中年に職場を、だったらいくらでも署名するで〜」「どうせ、今の世の中では俺はゴミや。ゴミみたいな扱われ方や。ゴミや…」とからまれる。
 「ゴミや」を連発するおっちゃんの悔しさと怒りがしみじみ伝わる。A君が「中高年も大変だけど、若いもんも経験問われたりして、大変です」などと話して、おっちゃんにも署名してもらう。こうしたことがあり、A君の意見も取り入れ、「若者に職場を」を「若者にも職場を」に変更。

■6月10日(月)午後  B職安前
 交通の要所にあるこの職安にも、若年失業者や学卒未就職者でいっぱい。たくさんの失業者と話ができた。
 20代女性。新卒4月から仕方なく生保社員をしている。ひと月のノルマがきついので、辞めたい。転職先を探しているがない。新卒でも厳しいというのは本当にそう。
 20代男性。運送業だったが、腰を痛めて辞めた。会社は続けていいと言ったが、雰囲気として居づらくなったので自分から辞めた。今、腰が悪いので事務系で探しているが見つからない。
 20代男性。高校卒業して、18八歳から今まで10年間。いまだ就職できない。バイトで食いつないでいる。
 ここでも「若者より中高年だろ」とからまれる。仕事が見つからないストレスもあるのだろう。「若者に仕事を奪われている」と怒りの矛先を若者に向ける人もいる。世の中のあり方を、ちゃんと説明できるようになりたい、と痛感。また、「国が悪い」を連発する人や「天皇や。あいつらつぶしてまえ。人の税金で食ってるくせに、手なんか振って!」などおっちゃんの話はおもしろい。
 署名集めに参加した学生からは「自分は学生をやっているが、いろんな(境遇の)人がいるんですね」という感想が出た。軽いショックを隠せない。また、参加した労青団員からは「職安によって雰囲気が違う。違う職安に行くことも勉強になる」との声も。青年学生にとって、職安前の署名集めはもっともよい社会勉強になるのではないか。
 失業者に労青団の紹介をしたら、「そういう団体があるんですかあ」と感心されたり、「がんばってください、ぼくもがんばります」と激励されたりすることもしばしば。本当にこの課題での活動が切実に求められていると再認識した。要はこちらの働きかけ方次第で、大きな動きをつくり出せる! と予感してます。