20020215

大卒就職厳寒期 ノイローゼの友人も

将来が見えない!

大阪 武田晶子


 事情があって、私が就職活動を始めたのは4年生の9月下旬と、他の多くの友だちよりもずいぶん出遅れていました。早い人で3年生の秋・冬から合同説明会に参加したり会社訪問をしたりしていますが、私が就職活動を始めた時点で同じゼミ生12人のうち、内定しているのはわずか2人という厳しい状況でした(現在でも3人決まっているだけ)。理工系の学生は比較的決まりやすいと聞きますが、文系の女子は、最後まで内定をもらえずに残っている典型だと聞きます。
 面接などでいくつかの会社の方と実際に話をする機会をもって気が付いたことは、本当に私という人間を知ろうとしてくれている「本気の面接」と、はじめから落とすつもりで行っている「形だけの面接」があるということです。
 前者の場合は、私にも面接官の真剣さが伝わり、お互いがお互いについてできるだけ多くの率直な情報を得ようとします。結果がどうあれ、とても有意義な面接だと感じます。私の場合、合同面接なども含めて10数社の方と話をしましたが、そのような前向きな面接は、2度だけありました。
 後者の場合は、面接官からの質問もつまらないものです。開始早々「今日のわが社の株価は?」と聞かれたり、遠回しに女性は募集していないことをほのめかしたりします。
 いちおう世の中は雇用においても「男女平等」のようなので、「女性はいらない」とはっきりいえないようです。仕事の内容いかんによっては男性向き女性向きがあってやむを得ないこともあるでしょうから、逆にその場合ははっきりと面接者に伝えてもらえればよいと思います。また、もしもその会社や面接官の頭が硬く、男性を優先して採っているのであれば、(偉そうな言い方ですが)女性の視点を取り入れようとしないなんて先見性のない会社なのね、と思います。 「30十歳をすぎたら皆夢を失う」と、ある先輩が言っていました。「会社で自分が必要とされていないのが分かる」と、別の先輩が言っていました。どちらも同じクラブで後輩からの人望も厚く、多くの人から信頼されている先輩です。そんな素晴らしい尊敬できる人からこのような言葉を聞くと、大げさな言い方かもしれませんが、一体今の世の中で、人間が本来もつ能力のどれくらいが発揮されているのだろうかと考えてしまい、悲しくて残念な気持ちになります。
 「会社で必要とされていないのが分かる」といった先輩は、世の中に疑問や不満がたくさんあり、学生時代は新聞をよく読んでいて、社会問題について話し合うこともよくありました。しかし、今では毎日仕事で動き回り、疲れて新聞を読む時間もなく、自分が世の中の動きから遠のいていくのを感じると話していました。
 就職活動を始めた当初、私は自分の能力が社会で活用するにはまだまだ未熟なのだと思い込んでいました。しかし、新聞などで大企業が数千人規模で従業員を解雇している現実を目のあたりにすることで、少し考え方が変わりました。
 つまり、自分の能力が他の人よりも劣っているとか優れているとかではなく、今この世の中で利潤を出していくために必要とされる能力をもつ人材を、企業は選んでいるのだと感じるようになりました。これは一見あたりまえのことのように聞こえるかもしれませんが、先に述べた尊敬する先輩たちの空しい言葉を思い出すと、そのような企業や世の中が生み出しているものは、本当に人びとが必要としているものだろうかと疑ってしまいます。
 何10社もしくはそれ以上回っている友だちに比べれば、私の就職活動などは生やさしいものでしょうが、おかげで、就職活動ノイローゼにもならずにすみました。何10社も断られ、なぜ自分が受け入れてもらえないのかと、真剣に悩む友だちもいます。でも私は、率直にそんな世の中に疑問をもち、もっと不満を表現してもよいと思うのです。と、言っている私も目前に迫る卒業後の進路がまだ見えない状態ですが。
 若者、がんばります!