正規雇用を破壊する派遣労働

991205

新派遣労働法シンポ

正規雇用を破壊する派遣労働

賃金低下、使い捨て

労働者の権利守る闘いを

　改悪された派遣労働法が十二月一日から施行された。労働基本法の改悪など労働法制の規制緩和によって、労働者の権利や労働条件が次々に破壊されている。さらに政府は、大企業のリストラ攻撃を支援する産業再生法を成立させ、ますます大量の労働者を街頭に放り出している。新派遣労働法は、正規雇用を破壊し、不安定就労をさらに拡大し、企業がいつでも労働者を使い捨てできるばかりか、実質的な賃下げをもたらす。労働組合はこうした攻撃に対し、全力で闘うことなしに、労働者の権利や労働条件を守ることは出来ない。新派遣労働法施行の前日、東京で「派遣労働サミットシンポジウムが行われた。

　「『新』派遣法がやってくる！　施行前夜の集い　派遣労働サミットシンポジウム」＆「派遣労働ネットワークＮＰＯ宣言！」が十一月三十日、東京で行われた。派遣労働ネットワークが主催したもので、派遣労働者など約二百人が参加した。
　シンポジウムは派遣労働ネットワーク代表で弁護士の中野麻美氏がコーディネーターとなり、パネラーとして生田正之・労働省民間需給調整室長、高橋均・連合総合組織局長、関根秀一郎・東京ユニオン書記長が並んだ。
　中野氏は「新派遣労働が明日から実施されるが、明治書院のように整理解雇、闘争中にもかかわらず派遣労働の導入という最悪の問題も出ている。しかも、派遣では禁じられている営業職であった。こうしたことから、本当に改正派遣労働法が機能するのか疑問だ。また、リストラなどで派遣労働を求める人が増えているが、賃金は時給で千七百円から千四百円ぐらいまでに下がっている。これで安定した生活ができるのか、などの問題もある。明日からの施行に向けて、問題点を整理し、労働者の権利を守るためにシンポジウムを成功させたい」とあいさつした。
　生田氏からは「改正派遣労働法にともない、新たに認められた二十六業種について、派遣労働の継続を三年を限度とするということが誤解されている。あくまで派遣労働は一時的なものであり、三年も雇用するなら正社員にするのが常識と理解している。常識だからあまり宣伝しなかったが、企業のなかには三年たったら契約を打ち切らなくてはと思っているところもあり、もっと法改正について周知していく」と改正派遣労働法について説明がなされた。
　関根氏は「派遣労働にともなうさまざまな相談を受けている。その中で、新派遣法に不安の声を多く聞いている。セクハラについても派遣先企業のセクハラ一一〇番に相談したら、契約を打ち切られた人が二人いた。このように、いつ契約打ち切りの目に遭うのか、不安でいっぱいだ。また、派遣元がいったいいくらマージンを取っているのかもわからない。派遣先からは『高い給料を払っている』とイヤミをいわれるが、もらっている給料は低い。こうしたことから、私たちは労組として派遣事業『スタッフフォーラム』を来年に立ち上げる。それによって①派遣料金から最低経費以外を賃金にして、賃金を引き上げる、②職能訓練を重視し、雇用の安定を図る、③派遣労働を求める労働者に仕事を拡大する、などの効果がある」と、労組として派遣事業を行うことを報告した。
　高橋氏は「連合は組織拡大、組織化というと企業別に考えてきた。だが、非正規雇用の拡大の中で、企業別に組織化といっても難しい。そこで連合も労働者供給事業を行うことにした。連合版のハローワークをつくる、つまり派遣会社と職業紹介所設立に取り組むことだ。そうすれば、①情報公開が可能になり、適切な緊張関係がつくれる、②マージンを公開することで時給アップにつながる、③苦情にしても職を失う覚悟がなければ言えない現状を打破する、などのメリットがあるし、そこから労組への組織化も展望できる」と語った。
　会場からの発言では、高砂香料工業労組の立花氏が「十八年間会社の受付に派遣で働きながら、突然契約を打ち切られた小川さんのことを派遣の人とも知らず、解雇も知らなかった。同じ職場にいて恥ずかしかった。そこでわれわれも解雇撤回を求めて会社に要求している。小川さんも一人の問題ではなく、派遣労働者全体の問題として闘っている。われわれは同じ職場の人間が首になったのを放っておいては、労組としても同僚としても何なのかと問われる」と派遣労働者とともに闘っていることを報告した。
　また、明治書院労組からは整理解雇、首切り反対闘争の中で派遣労働者が入ってきた報告がされ、粘り強い交渉で派遣労働者が撤退したことが報告された。
十二月一日実施の新派遣労働法の問題はこのような問題点を数多く抱えており、労働者の権利を守る闘いがますます重要になっている。