991005


連合結成10年
企業主義を克服し、全体の団結を強めよう

怒りを表し 国民に見える闘いを


 失業、倒産は引き続き、雇用・生活を守る闘いはますます重要になっている。そうした中、連合は十月十四日からの二年ぶりの定期大会を開催する。連合が、結成十年の運動を真剣に総括し、労働者階級が国民諸階層の先頭に立ち、国の進路やひとにぎりの大企業のための自自公の悪政と闘う方針を確立するよう希望する。全国一般の田島恵一書記長に、連合十年の歴史を振返ってもらいながら労働運動の課題や以降の闘い方などを聞いた。


田島恵一・全国一般書記長に聞く

 まずわれわれ全国一般の状況から話したい。今日の中小企業労働者の置かれている状況は、かつてなく厳しくなっている。倒産や閉鎖、あるいは九九春闘に現れた何でもありの賃下げや合理化攻撃に対して、どう闘いを構築していくのかが全国一般の定期大会の一番の焦点だった。
 大会では、長崎の菱光などから勝利報告があった。やはり、闘ってきた仲間の発言には重みがある。「闘わない者には勝利がない」「信念をもって闘えば道は開ける」。これはいま、本当に苦しんでいる仲間に訴えたいことだ。闘っているときは苦しいし、展望は見えないが、展望が見えたときは解決だ。それまでは、迷うこともあるけれども、その時に地域の仲間や中小の仲間ももちろん、連合の仲間も支えるというのが労働者にとって大事なことだ。そうなれば、不当な攻撃を跳ね返す道が開ける。こうしたことが、争議を闘ってきた仲間の発言からくみ取れる。

雇用創出より反失業の闘いを

 労働運動において第一の課題は、いまこそ反失業の旗を掲げて闘うことだ。いつの時代でも経営者側は労働者を使い捨てにしてきた。その口実は経営困難、経営危機である。労働者が経営者の都合だけで、辞めさせられるというのは不当だと、胸を張って堂々という。そういう困難にある仲間がいたら支えていこう、それが連帯だと思う。
 たとえば連合と日経連が百万人雇用創出をうたっているが、中小の労働者にすればむなしく響く。いまの雇用を守る闘い、反失業の闘いを組織しないで雇用創出もないだろうというのが本音だ。雇用創出は大事だが、それ以前の問題として、いまの雇用を守る運動を取り組んでいく。
 二つめの課題は、春闘をどうしていくかだ。大手組合で複数年協定や「もう日本は高賃金だから上げ幅を要求していく時代ではない」などの論調が出ている。これについては、中小労働者として非常に違和感を覚える。全国一般でも毎年、賃金実態を全組合員を対象にきめ細かく調査しているが、四十〜五十歳で平均賃金が二十二万から二十五万円というのはザラにある。こういう賃金水準で「もう上げ幅に取り組む時代ではない」などというのはあり得ない。
 連合の九八年生活実態調査の中で、組合に取り組んでほしい要求項目の第一位が、が賃金・一時金の引き上げで六〇%を超えている。
 全国一般としては、連合が「春闘は社会的な所得配分機能なんだ」と位置づけたように取り組むことが、自分たちの生活向上あるいは格差の是正につながる道だと思う。
 また、日経連が高く評価している業績連動型の一時金がある。だが、業績連動型なら労組はいらない。一生懸命働いて、もうけをいくら上げるかが自分の賃金に結びつくのなら、労働者間の競争は強まるが、団結は弱まる。
 これだけ不況になれば、企業内に閉じ込もろうとする動きが出てくるが、そうではなく、産別やナショナルセンターなど横断的にがんばっていくことが指導者に求められていると思う。その点が、二〇〇〇年春闘ではさらに厳しく問われているだろう。
 三つめの課題は、労働法制の取り組みである。
 労働基準法が実質的に改悪された。時間外の協定、あるいは裁量労働時間制など労資に委ねられる事項が増えている。労働組合を組織していくことが必要になっている。
 また、派遣法改悪などで非正規雇用労働者群が広がる状況だ。全国一般としては、組織化運動あるいは労働相談活動など未組織の仲間も含めて取り組んでいきたい。
 四点目に、未組織労働者の組織化は、全国一般が結成以来、戦略課題としてきたが、さらに重視する。多くの未組織労働者は、労働法などないような働き方をさせられている。時間外手当が支給されない。有給休暇を取ったら辞めてくれとか、まさに労働現場では、働き方のルールが無視されるだけでなく、労働者として人間としての尊厳が踏みにじられている。
 労働者が誇りをもって働ける労働環境をつくるためには、労働組合がそうしたところに常に発信しながら、組織化活動を展開していかなければいけない。
 最後の課題が、周辺事態法に見られるように実質的な改憲が進んでいる中、護憲の運動だ。周辺事態法に端を発し、日の丸・君が代を強制する法の制定、あるいは組織犯罪対策三法など、今日の日本社会は戦争準備に入っているような危険な状況にある。野党第一党の党首が選挙戦で改憲論を打ち出すなどしているが、全国一般としては逆に憲法を守る、平和と民主主義が社会の基礎だとして、がんばっていく。

怒りを結集し大衆行動を

 東京新聞に明治大学の岡野加穂留さんが「ようなもの」というコラムを出している。連合は組合のようなもので、組合ではないのではないか、ということを書いている。なぜかというと、これだけ失業者や自殺者が増えているのに、運動がまったく見えないからだ。こういう時こそ、怒りを表してデモなどの大衆行動をすべきだ。労働組合は国民に見えるように闘わなければ、信頼も支持も生まれてこない。そこが、連合労働運動に問われている。
 連合結成の当初、「顔合せ・心合わせ」が強調されたが、逆に遠慮して、各産別が抱える問題や労働者全体の問題を言えなかった負の側面もあったのではないか。連合も十年たったのだから、これからは本音をぶつけ合い、労働者の利益追求のために企業の壁も産別の壁もとっぱらって、ナショナルセンターとしての役割を果していくのが必要だと感じている。


2000年春闘を節目にしよう
ゼンセン同盟支部役員


 非常に小さな職場支部だが、組合員の団結力は強いと自負している。もちろん、不況の中、仕事量の激減やコストダウン要求など厳しい状況にある。それでも「まともな組合」でありたいと、組合員の要求をきちんと把握し、全員が活動に参加できるように努力している。
 さて、隔年春闘とか実績型の一時金などが大手組合から出されている、本当によいのだろうか、大いに疑問だ。これだけ不況で失業者が増え、賃金が抑えられながら隔年春闘はないだろう。また、中小からすれば来年に会社が存続しているかさえ分からない現状もある。実績型は労働者同士の競争をあおるだけで、組合員の団結は弱まるだけだ。
 また、派遣など非正規雇用の人も増えており、そうした人びとを組織することが、その人びとの労働条件を守ることにもなり、われわれの労働条件を守ることにもつながる。そうした意味で来年、2000年春闘は文字通り節目になるだろう。 


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