990725


低賃金、長時間労働、雇用の不安定化

女性労働者に権利を


 労働者派遣法と職安法の改悪案が成立した。これは企業の「安上がりな労働力」という要求にこたえたもので、労働者の雇用をさらに不安定化するものである。臨時雇用の女性労働者のおかれている状況や、労働組合の果たすべき役割などについて討論する国際フォーラム「女性と労働」が開かれた。


 国際フォーラム「女性と労働」が七月十七日、都内で開かれ約二百人が参加した。このフォーラムは、フィリピン・アメリカ財団が日、米、フィリピンの三国で女性臨時労働者の状況について調査した結果をもとに、実行委員会が主催したもの。

 フィリピン・アメリカ財団のアイリーン氏の司会で会は始まり、氏は「三国の女性労働者の状況には共通点が多く、限定された不安定な職業に追いやられ、しかも低賃金で嫌がらせを受けている。男女の均等は法律の制定だけでは十分でなく、その実施こそが問題だ」と述べた。

 続いてパネルディスカッションに入り、「文化と経済が女性の雇用状況にもたらす影響」と題して行われた。エレン・ブラボ氏(働く女性のための全米委員会)は、「『女性は特定の職業を選んでいる』という意見があるが、真の理由は雇用主が低賃金しか払わず、それを『競争のためには仕方ない』と考えているからだ。多くの女性はどう闘えばよいか自信がなく、政治を信じてもいない。変革のための組織が必要だ」と述べた。

 中野麻美氏(働く女性のための弁護団)は「経済のグローバル化という国際的安売り競争の中で、『がんばって働き、賃金は上がらない』という状況が国際的に広がっている。派遣法改悪などの規制緩和で、時間外・長時間労働と雇用の不安定化が進んでいる。労組の中でも女性の役割が重要だ」と提起した。

 パトリシア・マングロバング・サレナス氏(フィリピン下院議員)は、「経済危機が女性労働者の雇用の不安定化を進めている。フィリピンからは多くの移民労働者が国外に出て人身売買などの被害にあっている。国内の経済政策として雇用の場を確保する必要がある」と実状を訴えた。

 午後の座談会「不安定雇用労働者を変える力とは?」では、中野氏が「同じ労働内容があれば、正社員と同様の処遇をすべきだ。労組がこの主張をどう取り入れるか課題だ」と提起した。

 マーシャ・グリーンバーガー氏(全米女性法律センター所長)は「均等化の実施は時間がかかるが、とくに臨時雇用の労働者保護は実施レベルが低い。臨時労働者を正社員として扱わせることが必要だ」と述べた。

 マギー・ジャクソン氏(AP通信記者)は、マスコミの立場から「米国の小荷物輸送の最大手ユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)のパート労働者のストライキには、全米から同情が集まった。自分たちも同じ思いがあるからだ。そのため、ハンバーガーを買う感覚で派遣労働者を求める雰囲気は減っているという前進面もあり、希望はある」と労組の闘いの重要性を指摘した。

 竹信三恵子氏(朝日新聞学芸部)は、「パートに従事している主婦は、自分が『主婦』であるという自覚はあるが、『労働者』という自覚はない。臨時労働者に労働者としての自覚をもってもらう必要がある」と、マスコミが果たす役割について述べた。

 パット・スカーセリ氏(米食品商業労組副委員長)は、「米国では好景気で千二百万人の雇用が生まれたとされているが、レストランのウエイトレスからすれば『そのうち三つが私よ』と言いたい状況だ。つまり臨時労働、不安定雇用が増加している。これらは、新しいレベルの貧困層になっている。食品商業労組では三十年前からパート労働者を組織しており、ストライキによって時給レベルでは正社員と同じレベルをかち取っている」と、闘いの成果を報告した。

 最後に発言にたった久川博彦氏(連合労働対策局長)は、「臨時労働者の歴史的背景と雇用構造の解明が必要だ。もはや労組だけの問題ではなく、雇用形態の違いは賃金や身分差別に近いものになっている」と、ILO条約の未批准の問題も含め、日本での課題を提起した。

 夕方まで合計八つのシンポジウムや座談会が行われ、国際的に低賃金・不安定下に置かれている女性臨時労働者の問題について熱心な討論が行われた。シンポジウムの中でもたびたび指摘されたが、臨時労働者の地位向上のため、労組の果たすべき役割がますます重要になってきている。


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