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労働者派遣法改悪

不安定雇用低賃金招く

リストラ・雇用破壊に反撃を


 労働者派遣法の改悪案が衆議院で四月二十一日可決され、参議院で審議が続いている。政府・財界は、危機打開のために「過剰雇用」の解消を主張し、企業のリストラをいっそう進めようとしている。法改悪は、雇用の流動化を進めるためのものであり、労働組合や派遣労働者のグループ、弁護士などは、雇用不安の増大につながるなどと反対の声をあげている。労働者派遣法改悪反対、雇用・生活危機突破の行動を巻き起こそう。


派遣急増だが低賃金、トラブル続出

 労働者派遣は十三年前から実施され、派遣業界は一兆三千億円の市場に急成長した。 しかし、派遣労働は低賃金、中途解雇など多くの問題を抱え、雇用の不安定化をもたらしている。

 労働条件の大幅な低下は次のような例でも明らかである、

 「手取りが月二十万円から十三万円になりました。退職時には、五年間は派遣で面倒をみるといわれたが、一年で打ち切られた」(外資系石油会社)。「派遣先は派遣料として時給四千円を払っているが、私の時給は千四百円弱にしかならない。社会保険の負担などもあり手取りは月二十万円弱。しかもボーナスもない」(機械設計)。

 また、違法やトラブルが相ついでおり、「妊娠した」「長時間労働に異を唱えた」を理由に中途解雇、契約打ち切りされた相談が「派遣労働ネットワーク」に多数寄せられている。

 米国では社員をいったん退職させ、派遣会社の社員として同じ仕事をさせることが普及している。企業は人件費を抑制でき、社会保険の負担がなくなり、労務管理がいらなくなるからだ。そのために米国労働者の労働条件は大幅に下がり、労働者は二つ三つの仕事をしなくては生活を維持できなくなっている。


正社員を職場から追い出す改悪案

 改悪案では派遣業務の原則自由化をあげている。これは、あらゆる職場から正社員を追い出し、派遣、パートに置き換えることになる。不安定雇用を増大し、雇用不安を増大させる。

 正社員一人の総人件費(賃金、ボーナス、退職金、福利厚生費など)は派遣労働者三人分といわれており、正社員が職場を追われることは目に見えている。それは公務職場でも同じである。たとえば、東京都の清掃車五千台のうち三千台は、運転手が派遣労働でまかなわれている。

 また改悪案では、派遣先が同一職場・業種で一年を超えれば、正社員にするように勧告する、とあるが、法的制裁措置はなく、ただの努力義務に過ぎない。係を変える、三カ月の契約を連続していくなど抜け穴だらけだ。


雇用・生活危機突破の行動を

 総務庁が六月一日に発表した男性の完全失業率は五・〇%に達し、リストラの激化で「非自発的」な失業者は、百十五万人に増大した。

 また、雇用者総数(二月時点)は四千九百十三万人と同年同月比で五十四万人も減少している。しかし、パート・アルバイトなどは三十八万人増の千二十四万人となり、雇用者全体の二割以上となった。

 小渕首相が主催する産業競争力会議は、経済再生のために、バブルの清算として「過剰設備、過剰雇用、過剰投資」の解消をあげ、リストラをさらに進めようとしている。

 こうした中、連合、全労協などナショナル・センターの枠を超えた運動が広がっている。派遣法改悪反対でも、連合と派遣ネットワークの共同行動が実現している。また各地の地方連合も各界との連携を求め、雇用・生活危機突破で闘いを強めている。

 敵の強まる攻撃は、労働者を各所で闘いに立ち上がらせ、団結を促している。怒りを結集し、地域から全国へ、雇用・生活危機突破の行動を巻き起こそう。


労働者派遣法改正案のポイント

◎ソフトウエア開発、通訳、翻訳など26業務に限っていた対象業務を原則自由化する。

◎同一就業場所・同一業務への派遣期間は上限1年とし、1年を超えて使用した場合、労働大臣は派遣先に正社員として雇うよう指導・勧告できる。ただし、罰則規定なし。


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