990305


分割民営化後10年間で210人が犠牲に

下請け作業員5人死亡事故



 二月二十一日未明、JR東日本の山手貨物線、目黒駅付近で作業員五人が臨時回送列車にひき殺される事故が発生した。五人はJRの下請け会社の作業員であり、JRの安全確保の責任が問われている。JRによると十年間でJR社員、下請け作業員あわせて二百十人の命が事故で奪われている。これは安全を無視し、効率化のみを追求してきた結果であり、労働者の命をも犠牲にする経営側の姿勢に憤りを感じる。事故の起きた同じ作業に従事する国労組合員に話を聞いた。

JRは安全無視し合理化
東京・国労組合員

 事故の詳細については、「警察が調査しているので報告できない」と、会社側が箝口(かんこう)令をしいている。事故以降、JR社員が直接行う保守業務など以外の工事は、「安全確保が得られるまで」ということで中止されている。

 今回の事故は、信号区の請負業者による工事のときに起きたもの。関連会社の単独施工で、JR社員は一人も立ち会っていない。

 新聞にも「安全の業者まかせ」と書かれていたが、その通りで、JRは安全を無視して、これまで社員が行ってきた保守業務、周辺工事などを外注化し、合理化している。それが今回起こったような直接死亡事故のような痛ましい事故にまで発展している。

 自分の先輩でも触車事故があったし、社員の死亡、関連会社の労働者の死亡が多い。

 国労がこれまで指摘してきたことは、JRは安全問題を軽視していること。莫大な設備投資で新しい機械の導入はしているが、たとえばATOSという電車運行管理システムが導入された中央線では運転障害がかなり多発している。飛び込み事故やホームにおける事故についても、ホーム要員の合理化が起因しているんじゃないか。

 国労東京地本でも、安全については、ホーム要員が配置されているかどうか、飛び込み事故が何件あったかと調査もし、会社側に指摘してきた。JRが効率化を追求した結果が、現在のホームの飛び込み事故や運転障害につながっているんじゃないかと考えている。


JR東日本・東京支社管内、山手貨物線(目黒駅〜五反田駅間)における下請け会社の作業員五名の死傷事故に関するコメント

一九九九年二月二十二日
国鉄労働組合中央本部
国鉄労働組合東日本本部
国鉄労働組合東京地方本部

 二月二十一日午前〇時十五分ごろ、JR東日本・東京支社管内の山手貨物線、目黒駅付近で作業現場に向かう途中の下請け会社の作業員五名が背面から進行してきた臨時の回送列車に触車して死傷するという事故が発生した。

 原因については、現在、調査中であり断言は出来ないが、マスコミなどの報道によれば、工事責任者が「現場に到着するのが遅れ、作業前に臨時列車の運転の有無をJR側に確認するのを怠った」などと、警察の調べに対して供述している模様である。

 下請け会社の作業員が、線路内で作業中に触車して死亡するという惨事は、昨年一月にも吹雪の中で除雪作業中の作業員四名が進入してきた列車に触車して死亡するという事故が東青森駅構内において発生している。

 これまでも、一九八八年十一月十二日に、中央線甲府駅〜竜王駅間においてロングレール交換中に電車に触車して四名が死亡した事故や、一九九〇年三月の、常磐線水戸駅構内においてポイント装置の交換工事を行っていた作業現場に遅れて到着した特急列車が到着番線を変更して進入したため、退避が遅れて三名の作業員が死亡する事故がおきるなど、作業中の見張りの不十分さと退避の遅れ、列車の遅れによる到着番線の変更、臨時列車の運行確認の不徹底などが原因でおきている事故があとをたっていない。

 JR会社の公表した資料によれば、JR発足から十年間でJR社員が四十二名、下請け会社の作業員が百六十八名も尊い命が失われ、昨年度も減少傾向にないことが明らかになっている。

 私たちは、安全な作業体制を確立するうえからも、見張り要因の確保はもとより正社員の配置と十分な作業打ち合わせや、余裕をもった作業時間の確保、作業従業者に対する教育・訓練の充実などを会社側に求めてきたが、今回の事故に鑑み引き続き取り組みの強化をはかることを表明するものである。

 尊い生命を失われた犠牲者に対して心からお悔やみ申し上げますとともに、会社に対しては、再びこのような惨事を繰り返さないために、事故原因を徹底的に究明し、抜本的な安全対策を立てることを強く求める決意である。


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