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大企業の横暴許さぬ闘いを

ゼネコンによる下請けいじめリストラに反対

全日本建設運輸連帯労働組合書記長 垣沼 陽輔氏に聞く


 深刻な不況が続くなか、建設業界も同様で、そのしわ寄せは労働者、下請け業者に押しつけられている。建設や運輸労働者を組織する全日本建設運輸連帯労働組合(以下、連帯労組)は、中小業者・下請けいじめに対し、中小業者と連携して闘っている。また、ゼネコンによるリストラに抵抗し「建設ユニオン」を組織した。連帯労組の垣沼陽輔書記長に聞いた。


 建設業界には、五十五万の業者があり、六百五十万人が働いているが、これまでの構造を転換する歴史的な時期に入っている。公共事業が削減され、ゼネコン各社は生き残りのために経費削減、合理化を徹底している。大規模なリストラ計画も出されている。また、利益を確保するため、下請け企業に犠牲を押しつけている。そのような実態は、「下請けいじめ相談ホットライン」に寄せられた相談などでも明らかになっている。

 例えば、コンクリートを流し込む型枠を作る仕事は、バブルの時期に一日一人四万円もらえたのが、今では一日一万二千円まで下げられている。これまでマスコミは、スポンサーである建設会社のこのような実態を、取り上げなかった。しかし、われわれの行った「ホットライン」などを一つの契機に、取り上げられるようになってきた。

 また、看板にゼネコンの名前が出ていても、実際に仕事しているのは、ほとんど下請けの人たちだ。ゼネコンは、実際は現場の管理を行っているだけで、その上にあぐらをかいてきた。悪く言えば悪徳ブローカーといっしょだ。

ホットラインに相談殺到

 昨年の十二月と今年二月に二回行った「下請けいじめ相談ホットライン」には、相談が殺到した。

 十二月は東京と大阪の二カ所で行い、二百件近い相談が寄せられた。大阪では電話がパンクする状態になった。

 二月には、神奈川で中小建設業者もいっしょに行い、百件を超える相談が寄せられた。

 中小業者の話では、九六年の後半から、代金不払いや、支払いの遅延、繰り延べが少しずつ出てきた。これまでも問題はあったが、仕事があったので、回転してきた。しかし、次々に赤字を抱えているうちに、仕事がなくなってきた。工事が終わっても、すぐ上の中間業者が倒産して、代金が払われない事態も起きている。だから、中小業者では、貯金を切り崩したり、財産を売ったりして職人に給料を払うような状況がある。

中堅ゼネコンの職員を組織化

 先日の労働新聞にもあったように、大成建設、鹿島、清水建設がそれぞれ千人の合理化を発表している。これまで下請けを切り捨ててきたが、今度はゼネコン本体にリストラ攻撃がかけられている。

 そこで、中堅ゼネコンに働く職員を組織化していこうと「建設ユニオン」をつくった。

 戦後、朝も夜も関係なく働いてきた労働者が、年収を三〇%カットされたり、早期退職、関連会社への出向など、合理化がかけられている。ところが、既存の労働組合は体をなしていない。企業内労働組合では限界で、建設業を産業としてグローバルに見れる組織が必要だ。また、管理職や女性労働者が全く保護されていない。そういう人たちに、労働組合が手をさしのべて、その人たちを組織化することによって本来労働者がもっている権利を守らせていこうと。そういう立場で、個人加盟を原則とする労働組合をつくった。

影響力のある業者団体を

 政治・経済的に影響力のある業者の団体を作ったほうがよいと、中小建設資材産業協会を作った。すでに関東や北信越、九州、四国などから問い合わせがきている。

 ゼネコンは、単価の問題や、不払いが発生したときに、団結して押しかけられないように、業者をばらばらに分断しようとする。業者が団結して、運動体、全国組織をつくり、下請けいじめをなくし、業者の地位向上を図る、などが協会発足の主旨だ。

 業者はライバル同士なので結束しにくい。しかし結束しなければ、自分もまわりも経営できない。

 中小業者は、大企業、独占から収奪されており、一方では労働者から搾取していることは、変わらない。しかし、現実は、正当な単価も保証されず、原価を割る売買を繰り返した結果、企業経営の存亡の危機に立たされている。私たちは、中小企業の経営と権益をきっちり守るために、大企業、独占の横暴を規制していく運動を作っている。その点で、労組に敵対する態度をとらない限り、労資の利害対立を留保して、共通課題に向かってそれぞれの立場から運動を進めていく。労組の立場から産業構造や政策について分析し問題提起をして、連携していきたい。

 また、十二月にもう一度相談ホットラインを考えている。

現場を基礎に闘う

 闘いの現場は職場だから、職場を基礎に、現場の声を方針に反映させて闘っていく。やはり、いかに労働者を組織化につなげていくかということが大事だ。

 労基法改悪が強行され、働く側の環境はますます厳しくなる。終身雇用は有期雇用契約になっていくだろうから、三年ごとに会社を転々としなければならない。

 派遣法や、裁量労働制が産業の区別なく導入されるとなると、トラック労働者などは長時間・低賃金労働にますます拍車がかかる。

 中小の場合は、現行労基法の基準すら守られていない職場が多いわけだから、もっと組織化をがんばっていきたい。


かきぬま ようすけ

 七六年、連帯労組関西生コン支部加盟、同年十月より支部執行委員。九七年九月より現職。


下請けいじめホットラインに寄せられた相談

◎工事途中で契約を打ち切られ、工事代金が支払われない。(施設工事業)

◎ゼネコンの4次下請けで従事、3次下請け会社から受け取った手形が現金化できず、元請け会

社にも責任回避された。(土木工事業)

◎ゼネコンの2次下請けで従事、1次下請けが作業安全面での落ち度の責任をなすりつけ、一方

的に契約を打ち切られた。(重機工事業)

◎元請け会社が注文書を出さず、代金の値引きも強要された。(鉄道工事業)

◎自治体発注の工事で、口頭で契約し、仕事を引き受けたが、元請け会社が賃金の一部を払わな

い。(土木工事業)

◎労務提供型の下請け会社。元請け会社が夜逃げ。その親会社に労務費500万円の支払いを求

めたが、夜逃げした会社に支払い済みと拒否された。(建設業)

◎ゼネコンの2次下請けで従事、97年11月以降、入金がストップしている。(大工業)

◎大手メーカーから指し値受注を強制されている。(設備工事業)


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