980925


規制緩和に反対し、職場を守る運動を

再びストライキも辞さず闘う

全日本港湾労働組合委員長 河本 末吉氏に聞く


 米国は、わが国の港湾事業に対し規制緩和を要求し、制裁措置を取ってきたが、政府は米国の圧力に屈してきた。これに対し、全日本港湾労働組合(全港湾・一万五千人)も加盟する全国港湾や港運同盟は、一昨年からストライキなどで闘ってきた。河本末吉委員長に、規制緩和問題、雇用問題など今後の闘い方などを聞いた。


 政府が今年の三月に、港湾運送事業の規制緩和を閣議決定した。国際的な大競争による合理化に加え、政府の進める規制緩和策は港湾に深刻な影響を与えている。定期大会では今年の秋闘、それから来春闘に向けて、組織の総力をあげて規制緩和に反対していくことを決定した。これは産別組織である全国港湾も同じだ。

 規制緩和問題で政府は、一般論から個別問題にまで口を出してきている。例えば、港湾の事業者は免許制だが、政府の規制緩和案は届出制にするという。これによって、悪質な労務供給事業者の参入という問題が予想される。現在は免許制という規制があるので悪質な労務供給事業者は参入できない。ところが政府はまず規制緩和ありきで、「許可制にした場合、こういう悪い状態が起きるので、これらを参考にして具体的に許可の歯止めにしたらどうですか」と提案している。

 それに対して、われわれは「現在規制があり、何も悪くする必要はない」主張している。

 また派遣事業の適用問題では、港湾運送事業はすべて派遣事業の対象外とわれわれは認識していた。ところが労働省が最近になって、検数・検定などを派遣事業の対象にすると言い出してきた。

 われわれはこうした動きに対し、十月には、規制緩和問題などについては運輸省・労働省、さらに地域では県などの労働部に対する抗議、要請行動を行う。それから十一月には全国港湾の産別運動のなかで規制緩和反対でストライキを含めた大衆行動を予定している。今のところ全港湾としては、半日以上のストライキを考えている。

幅広い連携でガイドライン反対

 新たな日米防衛協力の指針(新ガイドライン)については、非常に重要な段階に来ており、各地域、地方本部段階で地域の活動に積極的に参加するということで、今日までもやってきた。また、これからも幅広い人たちと反対行動をやっていく。

 大会でも決議されており、地域で連携した形で取り組んでいきたい。

雇用・失業対策で政府に要求を

 不況の中、中小零細の多い港湾では倒産・廃業問題が深刻になっている。

 大阪支部の関係で倒産が三件でている。この秋から来春にかけて、景気はさらに悪くなるだろう。景気が上向いたとしても、港湾では三カ月から半年ぐらい遅れる。そうすると倒産、合理化は地方から報告がない段階でもかなり進んでいるとみなければならない。

 合理化では、賃金体系や手当の見直しが出ている。また、健康保険の企業負担を減らすなどの問題がある。これらはどこの地域でも共通している。港湾は中小が多く、合併・協業化で新しい仕事ができるという状況はなく、倒産・廃業といったギリギリの所にきている。

 組合としては、合理化反対で闘うが、不況全体の問題は企業努力だけでは解決しない。政治問題として、政府や自治体に中小企業対策として無利子の融資を求めることや、雇用対策、失業保険の長期支給などの対策を要求する。つまり政府に対して性急に対策をやれという政治闘争を展開する。地域、職場では合理化反対闘争を行う、これが基本になる。

今こそ産別強化が急務

 これから派遣会社がどんどん大きくなるだろう。すでに米国の一番大きな企業は、社員が五十数万人もいる派遣会社だ。

 労働組合は、もっと労働者を組織するしかない。これからはどんな大手の企業でも、労働者が会社に永久就職しようとしても、その保証はない。そうすると、お互いに日雇いであれパートであれ、組織して横のつながりをつくって、自分たちを守る以外にない。労働法が改悪されればなおさらだ。われわれとしても、産別の強化によって雇用、労働条件を守る闘いを強化していく。


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