980915


統一で中小運動の強化を

「雇用か賃金か」は誤り

全国金属機械労働組合 書記長 小山 正樹氏に聞く


 金属機械(北裏昌興委員長、二十万二千人)は、八月二十六日から三日間、群馬県内で定期大会を開いた。来年九月にはゼンキン連合(服部光朗会長、三十一万一千人)と統一し、機械金属産業における労働組合の影響力は大きくなる。統一の意義や、労働運動のあり方などについて、金属機械書記長・小山正樹氏に聞いた。


JAM連合へ統一の意義

 金属機械は、来年九月九日にゼンキン連合と統一し、JAM連合になる。大会では、「JAM結成へまっしぐら!」をメインテーマとした。

 JAM連合結成の意義は二つある。一つは機械金属産業の中で、労働組合の影響力を拡大すること。統一によって五十万人規模になると、経営者やそこで働く労働者への影響力は非常に大きくなる。そして社会的にも労働組合として影響力を発揮していきたい。

 もう一つは中小労働運動を担う産別として、JAM連合が労働運動を強化する役割を果たせるだろうと思う。この二点に、大きな期待があるし、意義がある。

雇用守る労働運動を

 失業率がこれだけ高い状況の中、連合としてやるべきことは二つあると思う。一つは政策的な課題。もう一つは労働者の連帯活動として何ができるか、という運動の課題。大会では、「倒産も出始めている。連合を通じて雇用を救える方法はないのか」という切実な声も出された。

 今年の春闘は、厳しいものになった。一割の支部できちんとした一時金が出ていない。中小ではいつ倒産するか、中堅でも人員整理の話しが出てきている。これから秋にかけて、そういう動きが強まるおそれがあるし、来春闘も厳しくなると予想されるので、秋から来春闘に向け準備を始める。とにかく経営のチェックをしていくことが大事で、日常的に支部と地本との連携を強化していく。

 また、失業の問題に関して言えば、雇用保険では失業手当給付の増額や期間延長などで失業しても不安のない環境も大事。その上でどうやって雇用を作り出していくのかという問題がなる。

 労働運動の問題としては、倒産になった場合の闘いのノウハウが蓄積されていない。処理できる組織者が減っている。倒産は企業によってケースが違うし、経験の蓄積が必要。この問題を解決しないといけない。

 JAM連合の方針として、来春闘へむけ全ての組合員の賃金実態を明らかにして、確保すべき賃金水準を設定していこうとしている。この取り組みをしていくことによって、情報を公開し、格差を実態で比較をしながら賃金の底上げをしていく運動を展開したい。

ベアゼロで雇用が守られるか

 経営側は「賃金か雇用か」ということを二者択一的にいってくるが、賃金を我慢すれば雇用が守られるということはない。賃上げをかち取ったら雇用が守られないのかといえば、そうではなく、二者択一的な問題ではない。

 それを経営側と同じように「どちらを取るべきか」という議論を労働組合がするべきではない。

 「ベアゼロで雇用を」という笹森・連合事務局長の発言をめぐって議論が起きている。連合を強化するためにもあえて言いたいが、連合の役割はこういう厳しいときこそ、旗振り役をやることだ。連合は「景気回復のためには賃上げによる内需拡大、消費拡大を」という主張をしているわけで、改めてその主導役をするのが連合の役割だ。

労働運動のあり方

 国際競争の激化の中で、競争に勝つことが第一という傾向が強まり、労働組合の中にもそれに押されているところがある。あらためて労働組合の役割はなんなのかということを考えなくてはならない。

 無制限な競争は、よりいっそう格差の拡大と労働者の権利の侵害につながる。そういった考え方に対して、労働者の連帯と団結を大事にして、連合の強化を進めていかなければならないと思う。

 経営側は明らかな意図を持って攻撃してくるわけだから、労働組合として意思一致しながら、日本の労働運動をどういう方向に持っていくのか議論していかないと大変なことになる。

 最近は春闘について「企業ごとに勝手にやればいい」などという声も聞こえるが、それは大間違いで、全ての労働者の賃金を公正な基準のもとで引き上げていくことが重要だ。春闘という労働界全体の統一闘争はむしろ強化されるべきだ。


こやま まさき

 七四年品川製作所入社。同支部(総評全国金属東京地本)の青年部、執行部を経て八〇年から総評全国オルグに。九〇年から金属機械・青年婦人対策部長、九五年から同書記次長、九七年から現職。


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