980905


雇用も賃金もかち取ろう

強大な反失業闘争を

全国一般労働組合 書記長 田島 恵一氏に聞く


 全国一般労働組合(松井保彦委員長、五万六千人)は、八月二十三日から三日間、富山県内で大会を開いた。大会では、今こそ社会的に強大な反失業闘争を闘うべきことが提起された。失業、リストラが急増する中で、きわめて重要な提起である。さらに「雇用のためにベアゼロも容認」という笹森・連合事務局長の発言に対し、厳しい批判が出された。金属機械、造船重機労連などの定期大会でも批判が相ついでいる。全国一般書記長・田島恵一氏に聞いた。


笹森発言に相つぐ批判

 大会での課題は、第一に春闘の課題。例えば、春闘の個別賃金問題では、平均賃金が批判されるけれども、個別賃金だと全体の引き上げ幅が分からないし、他の層について分からない。賃上げを低く見せるために個別賃金に向かっているきらいがあるのではないか。かち取った成果を労働者全体の財産にしていこうという発想が原点のはずなのに、賃上げを低く見せて経営者の攻撃をかわそうという発想はマイナス要因に働く。春闘の課題として情報公開が重要になるのではないか。

 第二は、反失業闘争の課題。これは二つの側面がある。制度的な面では、労基法、派遣法改悪の闘い。未組織労働者の労働相談をしていると、労基法が平気で破られる実態がある。無法地帯化しており、規制緩和されたらさらにひどい実態が蔓延(まんえん)する。

 失業の問題では失業率四・三%、有効求人倍率〇・五という悲惨な実状。抵抗闘争をする中で、三池をはじめ、血を流して闘ってきた中で雇用が守られてきた。経営者の恩恵で雇用が守られてきたわけではない。そのことが忘れ去られているのではないか。大会宣言でも、反失業の旗を高く掲げていこうと確認した。

 第三は、組織の立て直しの課題。大会では一人でも入れる合同労組の原点を見つめ直そうと提起した。組合員一人ひとりが組合と組織的なつながりを持ち、職場内で完結しない、企業を超えた団結が原点だと。また、雇用の形態を問わず労働者を組織化していく使命があるということを強調した。

企業の社会的責任追及を

 今日の合理化の特徴を見ると、企業は生き残りのために安易に労働者に犠牲を押し付け、労働組合は「企業の現状がこうだから仕方ない」と、「仕方ない論」が先にきている。そうではなくて、企業の社会的な責任をもう少し問いかけていくべきだ。そのために、労働組合はチェック機能を持たなくてはいけない。

 中小企業では経営実態のチェックや、「法を守っていたら経営できない」という経営者がいるので、法を守らせること、さらに組合がこれまでかち取ってきた権利が行使できているのか。例えば、有給休暇の取得率は六〇%ほど。権利を取っても行使できなければ権利は生きてこない。

 このようなチェック機能が日常的になければ、いざ合理化などの問題になった時、要求をたてて闘っていくことはできないのではないか。

合理化に反対して闘う

 最近の合理化は、形態としては二つに分けられる。企業経営がどうしようもない場合と、経営はそこまで至っていないが、収益、競争力強化のために労働者に犠牲を押し付けるリストラ型の場合。

 今こそ声をあげないと、失業者がどんどん増える、あるいは正社員が不安定雇用労働者に置き換えられていく。難しい闘いだが、先輩たちが闘ってきたことを、今の労働運動ができないことはないだろう。

 たちのわるい経営者は労働運動全体が総力を挙げて抗議行動を展開し、経営者を参らせるという運動が、今日、求められているのではないか。

笹森発言は敗北宣言

 「雇用を優先し、ベアゼロ」という笹森発言は、経営の論理に負けていると思う。

 この発言は二つの意味で大きな誤りがある。一つは、連合が掲げてきた「賃金も雇用も」という方針を放棄するもので、「賃金か雇用か」という思想攻撃に負けた敗北宣言である。第二に、敵である日経連の場での発言だというのは問題で、労働運動内部の団結を阻害することになる。

 「賃金か雇用か」といった場合に、「もう生活が豊かになっている」というのは大手企業のごく一部の労働者の発想。中小企業では四十歳を超えて二十万円そこそこというのはざらにある。組織された労働者でもそういう状況で、未組織ではもっと厳しいだろう。

 また、中小企業の経営危機の本質は、大企業の中小収奪で、それを問題にしないで、「賃金を抑えれば雇用を守れる」など幻想だ。「賃金は十分」というのは、労働者の生活実感を知っているのか、といいたい。

 全国一般では九九春闘も物価上昇分、定期昇給分、生活向上分、この三点は堅持して取り組んでいきたい。

実態みつめた運動を

 労働運動は、労働者の実態をきちんと見つめる必要がある。連合はゆとりや豊かさ、公平な社会をいっているが、職場の現実は、ゆとりもないし豊かさもない。豊かなのは一部の層で、多くの労働者は、最近、個人破産や、中高年の自殺者が増えているような状況に置かれている。

 組合を指導する部分は、末端の組合員の立場に立って判断していくべきだと思う。

 不況で「企業があってこそ」という宣伝がされている。しかし、最近は「労働者がいてこそ会社なんだ、経営者がいなくても会社は成り立つ」ということを堂々と言わなくなっている。

 力を蓄えるために組織化運動を始めることからもう一度出直さないと、二十一世紀の労働運動は組織率二割をきることが現実になるのではないか。


たじま けいいち

 七六年から全国一般本部専従、九二年から同書記次長、九七年から現職。


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