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千四十七人の国労組合員に対する

不当判決糾弾、解雇撤回を

学者、文化人などが「JRに人権を」市民集会開催


 東京地裁は五月二十八日、「JRと国鉄は別法人」として、JRに国労組合員を救済することを求めた中央労働委員会命令を取り消す不当判決を出した。中労委、国労とも東京高裁に控訴し、闘争を継続する中、JRが国労を敵視し、不当労働行為を繰り返していることに、国労をはじめ多くの労働者が反撃に立ち上がっている。東京都をはじめ全国三百八十自治体も、紛争解決のために話し合うことを求める意見書を採択している。こうした中で、かたくなな態度を取り続けるJRに反撃する世論をつくっていこうと、集会が行われた。


 「JRに人権を! ストップリストラ・首切り社会を!千四十七人の復職を求める市民集会」が八月二十日、東京で開かれた。主催は、評論家の鎌田慧氏、女優の左幸子氏などが呼びかけている「JRに人権を! 千四十七人の復職を求める一万人意見広告を広げる会」。五月二十八日の不当判決から、再度闘いを広めていくために開かれたもので、国労組合員や支援の労働者など約六百人が参加した。

 第一部では、評論家の佐高信氏が「中労委命令をひっくり返した東京地裁判決を斬る」と題した講演を行った。氏は、東京地裁の不当判決を糾弾した後、「今はリストラが上から下に行われ、多くの労働者が苦しんでいる。この社会をよくするには、下から上へのリストラが必要だ。小渕首相こそリストラしなくては、日本はよくならない」と述べた。

 連帯のあいさつでは、埼玉県のカメラなどのディスカウントショップであるカメラのニシダ再建委員会の労働者五人が発言。「銀行に仕組まれた計画倒産となった。従業員三十一人は七月二十一日、労働組合を結成し、職場に泊り込んで、企業再建に向けて奮闘している。職場を守り抜き、未払いの労働債権をかち取り、企業を再開し、雇用を確保するために闘う」と決意を述べた。

 第二部は国鉄闘争の勝利に向けて、パネルディスカッションを行った。

 参議院議員で弁護士の福島瑞穂氏は「衆議院で旧国鉄の債務処理問題が継続審議となっている。国労問題が無視されたまま、国鉄債務問題が議論されている。しかも債務は増えている。国鉄の分割・民営化によって解決するといったことがでたらめだったことが明らかになった。また、国会では労働基準法の改悪が継続審議になっている。規制緩和で労働法制が規制緩和されれば、弱肉強食によって労働者の権利が奪われてしまう」と国会報告を行った。

 国際労働運動研究センターの戸塚秀夫氏は「九〇年代に入って、欧米では労働運動が反撃に転じている。リストラの時代にあって、東京地裁の不当判決は、労働運動の反撃を防ごうとしているものである。だから国鉄闘争に勝利することは、労働運動全体にかかわる問題だ」と語った。

 評論家の針生一郎氏は、「現在、ガイドライン反対署名運動で労働組合をまわっている。組合幹部は、『個人的には賛同するが、組合は連合に所属し、民主党を支持しているので、上部と相談させてください』という。かつては労働組合がこうした問題で真っ先に反応していた。国労つぶしは、まさに闘う労働組合をつぶす策動だったことを実感している。国労攻撃は全労働者への攻撃であり、各界が連合して闘うことが重要だ」と述べた。

 水俣などの映画を描いた監督の土本典昭氏は、「人材活用センターのビデオを観たが、まるでアウシュビッツと同じだと思った。国労への攻撃はまさに政治的な攻撃であり、許せない」と述べ、国労闘争の勝利のためにいっそう闘おうと呼びかけた。

 最後に国労闘争団、家族会からアピールが行われた。釧路闘争団の渡辺恵美子氏は「東京地裁の判決には、今度こそと勝利を確信して取り組んだ。しかし、私たちの思いは伝わらなかった。これが日本の司法かと腹が立ち、情けなかった。十一年前、JRに採用されなかった時、JRは『設立委員会に聞いてくれ』と言い、東京地裁はJRには責任がないという。差別は許さない、と前を見すえて闘ってきたことを誇りに思っている。闘争団でもリストラで職を失う人も増えている。これからも一人でも多くの人びとに国鉄闘争を理解してもらえるようがんばります」と語った。

 博多家族会の柳瀬つる代氏は「この間、子どものバスケットシューズをなかなか買えない状況もあった。東京地裁の判決には納得いかない。どんなに苦しくても、後悔したくないので、前を向いて進みたい。これからも夫と家族とともにがんばります」と決意を表明した。

 長時間の集会であったが、参加者は国鉄の分割・民営化攻撃、国労つぶしに国民的な反撃を開始することの意義や闘い方について確信を深めるものとなった。


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