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全逓大会に参加して

ますます「業績優先」の方針に

地方、現場には闘う意欲

全逓組合員  上原 和之


 全逓信労働組合(全逓・高頭進委員長、十六万人)は七月二十二日から三日間、秋田市で第五十二回定期大会を開いた。郵政三事業の分割・民営化は阻止されたものの、中央省庁再編で郵政事業は「総務省内局」と「郵便事業庁」に分割され、二〇〇三年以降は、「郵便事業庁」は新たな国営の公社となる。五十二回大会では、より労使協調を推進するための「コミニュケーション・ルール(コミ・ルール)」が打ち出され、業績優先の経営を追求し、企業性を念頭に置いて検討するなど、全逓労働運動はますます組合員の要求からかけ離れたものとなった。本部方針に組合員の不満はさらに大きくなった。


不満が噴き出し始めた

 今年の全逓大会で印象に残ったことは、総合担務制、コミ・ルール問題、新昇格制度や政党支持問題などで不満が出ていたことだ。

 総合担務制とは、郵便だけでなく、保険も貯金もなにもかもやれる職員をつくるということだ。端的に言えば、郵便を配りながら、保険、貯金のセールス、集金をすることになる。

 またコミ・ルールとは、新しい労使協議のあり方を示したもので、「新型公社でより弾力的な経営を追求するため、企業性を念頭に置いたもの」となっている。つまりこれまでの労使交渉を、より経営に奉仕する内容に変えるということである。

 これらは労働者の権利をますます放棄する方針であり、反対は当然だ。

 全国大会前の県段階の地区委員会では、そうした問題について、おかしいという声が次々に上がった。地区委員会は、言わせるだけ言わせておくという全国的なガス抜きの場になっている。

 実際の大会になると、地区、支部段階の役員は中央の役員の顔色を見ながら発言しているので、トーンが変わってしまう。

 それにしても、不満の多く出た大会だった。次第に現場での不満が蓄積されており、それがだんだんと噴き出し始めている。

現場では危機意識が

 本部が提起した大会の基調は、民営化を阻止できたことが何よりも成果だったということに尽きる。しかし、それを実現した背景として、組合員の力を強調しない。特定局長会や自民党郵政族を巻き込んだことは正しかったかもしれないが、組合員の力をこそ評価すべきだ。

 しかも民営化阻止の陰で、「広域交流」という強制配転や人員削減などが行われ、組合員にどんどん犠牲が押しつけられた。その問題については触れられなかった。

 郵政省は三月に「中長期効率化計画」を発表し、貯金事務センターと簡易保険事務センターを将来、統廃合するとしている。

 大会ではこの問題について多くの反対意見が出て、全国貯金代表者会議の開催などを要求する声が相ついだ。

 本部は「統廃合に反対する理由がないとはいえ、当然、組合員の雇用は最優先させる」としたが、全国貯金代表者会議については、必要に応じて開くとしか答弁しなかった。これは現場段階の危機意識と中央本部の危機意識のズレが大きいことが示された。

 大会中に全国の貯金代表者の集まりがあった。いつもはだいたい飲み会で終わっていたが、今回は各支部、地本の代表から「中央に任せておいてはどうしようもない」「自分たち自身で会議を開こう」などという声が出ていた。中央本部役員がいなかったので、出たのかも知れないが、それでも自分たちの問題としてがんばろうという声が上がっている。こうした自発的な声や動きが大事だ。

現場の声を取り上げて闘う

 大会後、支部で報告会を行ったが、支部員から「中央の考え方が信じられない」と言われた。中央と現場のズレが非常に大きいと改めて感じた。

 しかも今後は県単位の地区本部をなくし、東北や九州などの地方本部に一本化していくという。すると役員はますます現場と離れ、ズレを是正するのが難しくなる。

 「広域人事交流」、つまり強制配転問題だが、私の支部では起きていない。だが、組合の目の届かないところで強制配転の準備が進んでいる。管理職から職員に「強制配転はよかった」というパンフレットが配られている。   支部の組合員の率直な要求や発言が、地区本部に上がり、地本に上がるとだんだんきれいな言葉に変わっていく。だから組合役員としては、相当にアンテナを高くして、組合員の声を集める努力が大事だと思う。その現場の声を生で上部にぶつけていくことだ。

 また、組合運動の活性化のためには他労組との交流も重要だ。行革攻撃など「改革」の犠牲になっている中小商工業者と連携して闘うことが、行革攻撃を打ち破ることにつながるだろう。そうした努力も含めてがんばりたい。


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