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解説

IMF管理下の韓国

14万人がストライキで闘う


 労働者の闘いが続いている韓国で、民主労働組合総連盟(民主労総)が七月十四、十五日、約十四万人規模のゼネストを闘った。参加したのは民主労総傘下の五十二労組。十五日には金融、公共部門の労働者も参加した。

 これは企業による整理解雇や、政府による企業整理にともなう解雇に反対したもので、民主労総は各地で集会やストを行っている。二十三日からは、自動車メーカー第二位の大宇自動車が三千人の整理解雇を表明したことを受け、解雇撤回を要求し大規模スト第二弾に突入する方針も出している。

実質失業率16%以上

 韓国統計庁は七月二十三日、六月の失業率七・〇%、失業者百五十二万九千人と発表した。

 しかし、民主労総によると実際の失業者数はもっと多い(五月時点)。政府の統計には、新卒で就職できない「新規失業者」五十九万七千人や、求職意思はあるが「失望失業者」とされる六十六万二千人などが含まれておらず、このような数を含めると実質失業者は三百六十五万人にのぼり、失業率は一六%になる。

 また、週十七時間以下しか労働に従事できない不完全就業者、日雇いなど半失業者が百三十万人以上になるという。

 さらに政府は、六月末から七月にかけて、五十五企業と五つの金融機関の整理と公共企業の売却を発表。五つの金融機関で約九千人の労働者が失業する。民主労総は六月二十九日の記者会見で「整理銀行の職員の雇用引き継ぎを保障しない強制的な銀行構造調整に反対する」と表明、七月二日には五金融機関の労働者三千人が共同集会を開いた。

 現代自動車はすでに二千六百人に整理解雇、九百人に二年間の無給休暇を通告しており、失業者はさらに増加が予想される。

IMF管理下で生産が縮小

 韓国は昨年十一月の通貨危機で国際通貨基金(IMF)から融資を受け、管理下におかれた。IMFは十二月、(1)GDP(国内総生産)の成長率三%、(2)消費者物価の上昇率五%、(3)経常収支赤字約五十億ドル(GDP一%)以内、(4)財政均衡または若干の赤字に抑えるという超緊縮措置を打ちだした。

 しかし実際には、九八年第一四半期(一―三月)のGDP成長率はマイナス三・八%で、八〇年以来のマイナス成長となった。

 経常収支は一月から四月までの累計で約百四十七億ドルの黒字となったが、これは生産が急激に縮小し、輸入が急減したため。第一四半期の産業生産は前年同期比マイナス七・八%となっている。そのため、IMF支配後、「通貨・金融危機が実体経済にも及んだ」といわれている。

国民生活を直撃

 ウォンの対米ドルレートは通貨危機でほぼ半分に切り下がった。これによりエネルギーや生活必需品など輸入品の価格が高騰、砂糖は八〇%、小麦は七六%も物価が上昇した。

 国民の所得格差も進んでいる。中所得層の所得は富裕層所得の六八%(九一年は七六%)に、低所得層は同二八%(同三二%)に低下した。

外国人投資家に規制撤廃

 ウォンだけでなく、株価も暴落した。三月二日の全上場株式時価総額は約百十一兆ウォンだったが、五月二十五日には約六十二兆ウォンに半減。泡と消えた差額の五十兆ウォンは国家予算の三分の二にあたる。ウォンと株価が半値になったことは、外国投資家や外国企業が韓国企業を買収しやすくなったということで、「バーゲンセール」といわれている。

 さらに政府は外国人の投資制限や土地所得制限を撤廃、緩和させている。

 これまで銘柄あたり五五%に制限されていた外国人株式投資限度は五月二十五日に撤廃され、七月には外国為替取引全面自由化が始まった。米国人投資家に対する制限を撤廃する「韓米投資協定」も年内に締結することが合意されている。


 このように、外国企業や投資家には規制を撤廃・緩和している政府は、労働者には整理解雇を認める整理解雇制を導入し、ストライキ規制を推進するなど労働者に犠牲を強いている。IMF管理による緊縮経済は国民生活の悪化を招いており、韓国人民、労働者の闘争激化は必至だろう。

九七年十一月二十一日 IMFに支援要請

九八年一月六日 労使政委員会、整理解雇制の導入合意

四月十五日 大企業の大幅な人員削減計画明らかに 現代電子産業が千五百人、サムスン電子が約千人削減

四月十六日 起亜自動車労組が全面スト

六月十八日 金融監督委員会、企業五十五社の整理を発表

六月三十日 現代自動車労組三万二千人が時限スト

七月六日 現代自動車労組、四十八時間スト

七月十二日 韓国労総、民主労総が雇用を求め十万人集会


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