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春の全国キャラバン調整連絡会議

労基法・派遣法改悪NO!

権利確立する労働法制を


 政府は、労働基準法改悪案を七月末に招集される臨時国会で強行成立させようとしている。連合をはじめ各ナショナルセンターは、昨年から連携し、労基法改悪に反対し闘っている。四月には全国キャラバンを取り組み、全国三十七カ所で集会などを行った「労基法改悪NO! 九八春の全国キャラバン調整連絡会議」が七月十八日、シンポジウムを開催した。


 「労基法・派遣法改悪NO! 七・一八シンポジウム」が、東京・神田パンセホールで開かれ、労働者など二百五十人が参加した。

 「労働法制改定めぐる争点」と題した第一部では、角田邦重・中央大学教授、宮里邦雄・日本労働弁護団副会長、弁護士の井上幸夫氏がそれぞれ報告を行った。

 角田氏は「政府・使用者団体は労働法制をどう変えようとしているか」と題した報告を行った。氏は労基法改悪の動きを「労資関係をめぐり、二十一世紀をにらんだ攻防が展開されようとしており、今回の労基法改悪はその中の一つとしての法改悪だ。政府・労働省は労基法が制定から五十年たっており、時代の変化や国際基準に合わせるために改正すべきだと主張している。だが、改悪の狙いは資本が大競争時代といわれる国際的な競争に生き残るために、労働者の権利を切り捨て、資本の使いやすいように変えようとするものにほかならない」と指摘した。

 その上で「もともと労基法の規制は非常に弱いものだ。労働者の権利を守る最低限のものに過ぎない。労基法が改悪されれば、労働者は無権利状態に置かれ、資本に都合のよいように使い捨てにされる」と労基法改悪を批判した。

 続いて宮里氏が「労働省の労基法改正のパンフレットには、いかに労働者の働き方が有利になるかと説明している。だが、それは全くインチキだ。例えば、無期限のサービス残業を容認する裁量労働制は『労働者の能力を発揮できるもの』としている。つまり資本の狙いや意図については全く隠ぺいしている。だから労基法改悪によってどうなるのか、資本の意図を実態的に明らかにすることが重要だ」と、政府・資本の労基法改悪の狙いを暴露した。

 井上氏は「労働者派遣法は八五年に制定されたが、多くの労組が雇用が不安定になると反対した。今回の派遣法改悪は『臨時的・一時的な労働力の需給調整』という制定時の理念がくつがえされている。つまり、派遣法では業務が限定されていたものが、原則自由化でどの職種でも派遣が許される。常用雇用労働者の切り捨てをはかる狙いがあることは明白である。安い労働力を確保しようとする資本の意図そのもの」だと批判した。

 第二部は「先取りが進む職場実態報告」が行われた。

 天明佳臣氏(港町診療所・神奈川労災職業病センター)は「文明が進んで病気をぼく滅するといわれてきたが、現実は産業活動で新たな健康破壊が進んでいる。環境ホルモンにしても、自然界に存在しない物質によってつくりだされたものだ。また労働現場では、ストレスや過労をはじめさまざまな生活環境、作業環境などから多くの疾患が発生している。長時間労働など、職場の安全衛生のあり方と労組の対応が問われている。例えば夜勤は長期に続けることは人間には不可能であり、必ず変調をきたす」と医療現場から労働のあり方を問う問題提起が行われた。

 最後に、カンタス航空客室乗務員労組が「私たちは将来は正社員にするとされ、五年間の契約社員だった。ところが昨年夏、会社は賃金大幅引き下げと労働時間の延長を提案し、これを拒否したところ不当解雇された。そこで労組をつくり、解雇撤回を求めて闘っている」と有期雇用の問題点と闘争支援を訴えた。

 シンポジウムでは「労基法・派遣法改悪を阻止し、すべての労働者の権利確立へ向けた労働法制の実現を共に求めていこう」とするアピールを採択した。さらに、全国各地で集会などの取り組みを強め、八月二十四日から九月四日を行動ゾーンとして、宣伝、集会、デモなどの取り組みを強化することを確認した。


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