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倒産リストラ110番

日本労働弁護団が開設

強引に退職に追い込む企業


 日本労働弁護団は六月六日、「倒産リストラ一一〇番」を全国二十四カ所で開設した。

 相談件数は全国で六百九十三件で、昨年三月に全国二十二カ所で行った際の六百四十九件を上回った。また、北海道(四十四件)、愛知(八十二件)などではこれまでになく相談が多かった。

 相談内容では、不況を理由とする相談が約半数(四六%)を占め、これは昨年三月(二一%)に比べ、非常に高くなっている。長引く不況が、労働者に大きな犠牲を強いていることがわかる。具体的には解雇、退職勧奨、退職強要に関する相談が多く、次に賃金不払い、退職金不払いなどであった。

 退職勧奨に関する相談では、仕事はずしや配転などの嫌がらせで退職に追い込むものだけでなく、一時失業給付を受けるようにさせ、後に解雇を通告したり、再就職先と雇用期間については話がついているいわれたのに、再就職先から期間前に退職勧奨されるなど、悪質な手段で解雇に追い込まれたという相談もあった。何が何でも退職させようとする企業の姿勢が露骨になっている。

 また、昨年から引き続き、中高年者からの相談が多い。年齢別にみると、四十五歳から五十四歳が二六%(百八十三件)で最も多く、次いで五十五歳以上(二四%、百六十九件)となっている。

 不況が深刻な日本経済だが、大企業はばく大な利益を上げている。上場企業の九八年三月期決算では、大企業は大方が増益、トヨタ自動車などは、八千二百八十七億円の利益を上げている。これらの増益は労働者への過酷な合理化・リストラも大きな要因で、多大な犠牲が労働者に押しつけられている。


相談の実例

◎退職したが、退職金が支払われない。退職金規定では、一カ月以内に七百万円を受け取れることになっているが、会社は毎月十万円の七十回払いを提案してきている。(機械加工の中小企業、五十歳代・男性、管理職)

◎もとは契約社員だったが、パートに変更された。有給休暇を取得したら会社の態度が変わり、勤務時間を変えるなど嫌がらせを受けた。さらに会社から求められた勤務時間帯の変更について、子供の養育上、応じられないと返事したら「もう来なくてよい」と言われた。(食品製造業の三十歳代・女性、パート)

◎専門学校を卒業し四月に新卒入社、五月に解雇通告された。具体的理由の説明なし。他にも解雇通告された人がいるようだ。専門学校が会社に抗議した。(カタログ作成会社の二十歳代・男性、社員)

◎昨年、課長から係長に降格された。今年四月、体調を崩し会議を欠席したら「辞めてくれないか」と言われ、辞めると返事していないのに、退職を社内発表され、退職願いの提出を強要された。懲戒解雇では退職金が出ないと脅され、やむなく自己都合退職届を提出した。(リース業会社の男性、営業社員)

◎他社との合併にともない、新たな給与体系が作られ、一〇%の賃下げに。同意書に署名させられた。(外資系大企業の五十歳代・男性、非管理職)

◎四月に倒産、解雇された。未払い賃金が残っている。(電気工事関係の中小企業、五十歳代・男性、管理職)

◎昨年、パートか退職かを迫られたが、正社員として残った。今年になり、景気が悪い、働きが悪いとの理由で賃金三〇%カットをいわれた。返事はまだしていない。正社員からパートに切り替えさせられた人が、契約期間終了とともに辞めさせられている。(毛皮関連の小企業、五十歳代・女性、社員)

◎元請け企業からコストダウンをいわれており、賃金切り下げのおそれがある。(運輸の中小企業、四十歳代・男性、嘱託・有期雇用)


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