980615


国労採用差別事件

不当判決を許すな

政府、JRは責任を取れ

国労本部委員長・高橋 義則氏に聞く


 よもやあのような判決が出るとは思っておらず、判決を聞きながら腹の底から怒りがわいてきた。特に民事十一部は昨年五月にJRなどに和解勧告を行っており、昨年十二月には解決策まで提示していた。しかしJRが応じないので、われわれは判決を出してくれと要請し、判決が五月に出ることになった。われわれは絶対勝てると確信していた。

 民事十九部は、われわれの証人申請についても、今までの証人で十分だと応じなかった。それでも不当労働行為を認め、JRに責任があると指摘した。そういう経過も含めて、あの判決が出された。

 分割・民営化から十一年が経過したが、不当に解雇された仲間と家族は十一年間、アルバイトや物品販売などの活動で生活してきた。今回の判決は、人道上からも許されることではない。

 われわれは分割・民営化と採用差別は国家的な不当労働行為にほかならないと主張してきた。十一部では四月から裁判官三人が代わるという異常事態も起きており、まさしく政治的な不当判決だ。

 だから、この闘いは何としても勝たなければならない、がんばらなくてはならないと思っている。

 判決が出された当日、日比谷野外音楽堂での決起集会、夜には弁護団、闘争団などが集まり、裁判の中身や今後の闘争方針などを議論した。もちろん、判決のショックは大きく、なかにはくやしくて判決を家族に電話さえできなかった闘争団の人もいた。多少時間はかかったが、今は全体として意思一致ができている。

労基法改悪反対と合わせ闘う

 六月二日に全国代表者会議を開き、負けたけれど原点に立ちかえりしっかりと闘う意思統一をした。

 まず、われわれが判決の中身をしっかり学習、不当判決の中身を地域の皆さんに訴えていく。

 そして、判決は労働委員会制度を否定するものであり、労働委員会を守ろうとする世論もある、この点を訴えていく。

 さらに労働法制の規制緩和、労働基準法の改悪問題がある。この三点を合わせてみれば、連携して闘っていく条件が広がっている。労働法制の規制緩和にしても国家的規模で行われたのは、国鉄の分割・民営化であり、われわれの闘いは道理があると考えている。

 今年に入って全国で県集会を取り組んできた。闘いの到達点と労働法制の規制緩和反対の集会を取り組んできた。

 最近、闘争団と懇談したが、ここまできたので家族も含めてとことんやろうという意見が多かった。

 また労働組合をまわっているが、労働委員会を否定する判決は許せないという意見が多く、労働法制の規制緩和とあわせて今後いっしょに闘えると感じている。

国民の足、安全を守れ

 国鉄の分割・民営化は赤字減らしを口実に行われたが、国鉄当時も単年度決算は黒字で、新幹線建設のためなどの長期債務が赤字だった。分割・民営化後、ローカル線は廃止され、過疎になっている。こういう状況をつくっても、二十八兆円もの赤字をつくっており、逆に赤字は増えている。しかも分割・民営化によって国鉄職員は二十七万人から二十万人に減らされている。

 JRになり、本州だけは黒字だが、北海道、四国、九州は赤字だ。それは国鉄時代からそうで、東京や大阪などの黒字で補てんしてきた。それを分割すれば本州以外は赤字になるに決まっている。政府は国鉄時代には毎年補助金を出してきたが、今はJR各社に課税している。この差は約一兆円になる。これでは赤字が増えるに決まっている。

 北海道や九州によく行くが、まず人口が少なく乗る人が少ないのだから赤字は当り前だ。それでローカル線を廃止したが、その町や村では怒っている。地方では「鉄道は文化を運んでくる」といっている。また第三セクターもほとんどが赤字でうまくいっていない。

 さらに最近は中央線での自殺問題など深刻化している。職員を減らしているのだから安全性がそこなわれるのは当然だ。JRは乗客の安全を無視して、もうけだけに走っている。

 やはり鉄道の持つ公共交通としての使命を無視すれば、国民に足も安全も犠牲にされ、そのうえ赤字を国民に増税という形で押しつけられる。国鉄闘争はそういう意味でも国民的な課題であり、これからも国民の皆さんと連携して闘っていきたい。


たかはし よしのり

 七七年から国労新橋支部執行委員、書記長を歴任。八七年国労東京地本書記長、九三年同委員長を経て、九七年から本部委員長。


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