980415


希望退職など跳ね返し、勝利

断固たる闘争に展望が

東京・スタンダード靴労組


 スタンダード靴労組(組合員九十三人)の又辺建二委員長は、「倒産目前にした闘いで、先ざきを思うと、眠れない夜も多かった。われわれ労組は、支援共闘の仲間をはじめ様々な人びとの支援を得て、闘いをやり抜き、会社側の首切り合理化攻撃を跳ね返すことができた。やはり、闘わなければ労働者はつぶされること、暮らしや権利を守るためには団結して闘う以外にないことを身を持って知らされた」と力強く語った。


 不況の深刻化、金融危機や貸し渋りの下で、またヨーロッパやアジアのからの輸入品の増大で、アサヒ靴のような大手メーカーも含めて靴業界も深刻な経営難におそわれている。

 靴メーカーとしては大手にはいるスタンダード靴株式会社(資本金六億円、従業員三百六十七人)は、ことし二月十六日、スタンダード靴労組と職員組合に対して「経営再建計画提案」を行った。これは、早期退職優遇制度による五十歳以上の労働者に対する五十人の希望退職募集、九八年の昇給停止、九八年の夏・冬一時金は各一カ月、退職金規程の改悪などという労働者に犠牲を押しつけるとんでもない「再建計画」であった。加えて、東京工場などが存在する千六百八十坪の土地売却と東京工場の将来移転計画も同時に提案された。

 こうした「経営再建計画」の提案に対して、その場の団体交渉が怒り渦巻く抗議の場になり、労組執行部は直ちに「白紙撤回」を求めて闘うことを決定した。以降、四月六日の労組臨時大会での妥結決定まで約五十日間、緊張した闘いの日々が続いた。スタンダード靴労組と支援共闘会議は団結の力と粘り強い闘争の力で会社側の攻撃を阻止し、闘いに勝つことができた。

   ◇  ◇  ◇

 現在、経済危機の下で、全国で多くの労働者が、首切り、出向・配転、賃金切り下げ、ただ働き残業の強要など犠牲を押しつけられ、苦しんでいる。こんにち、企業の経営危機に対し、労働者・労働組合が会社側の攻撃に対抗して攻撃を阻止し、労働組合の組織を守り、団結を強めることは重要である。

 スタンダード靴労組は、闘いに立ち上がり、企業の狙いを断念させ、勝利した。現在のような深刻な不況の下でも、労働者が団結して闘えば敵の攻撃を跳ね返すことができることを事実で示し、地域の仲間、全国の労働者、労組を励ました。

 なぜ勝つことができたか。又辺委員長は、「家族会も含めて労働組合の団結があったこと、また地域の労働組合、民主団体など支援共闘会議がいち早く作られたこと、これが大きかった」という。

 労組にとって、今回の首切り・合理化反対闘争は、七六年に闘われた二百七十一人の臨時工首切り反対闘争、八三年の二百十三人の首切り合理化反対闘争に続く三回目の大きな闘いであった。会社側は、過去の闘いの後に、「今後雇用には手を着けない」と確約したにもかかわらず、攻撃してきたのである。

 スタンダード靴労組は、こうした闘いの教訓を踏まえ、家族ぐるみの団結の力を営々と長期にわたって築き上げてきたことが、闘いに勝利した原動力である。

 また、東京・東部地域の働く仲間(四カ所の地区労など)たちがいち早く闘争の支援に駆けつけ、支援共闘会議を発足させたことも力を発揮した。そうできたのも常日頃、地域の労組と春闘などで共に闘い、相互に信頼関係を作っているからである。

 闘い方が徹底していたことも会社側をひるませた。立ち上がりが速かったこと、また「希望退職」募集を中止させた後も、東京工場移転に関する協定を最後まで追求したこと、及び会社側の経営責任を激しく追及したことなどである。


闘いの主な経過

二月十六日 会社側より「経営再建計画」が提案される。労組執行委員会および職場委員会で「白紙撤回」の闘いを組織することを決定。

二月十七日 臨時大会で九五・九%の高率でスト権確立。直ちに半日ストに突入、十一団体が闘争支援に駆けつける。

三月五日 スタンダード靴反合理化支援共闘会議が五十二労組、民主団体の参加で結成される。

三月十八日 団交で牧野社長が「早期退職優遇制度」による退職者の募集を打ち切ることを表明。

三月三十一日 四月一日からの四十八時間ストを背景に第十二回団交。会社側は、雇用を守る、東京工場移転に関する覚書を提出する、社長は全員の前で陳謝する、など労組の要求をほぼ認める。

四月六日 労組臨時大会を開催、妥結する。


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