980315



日弁連

労基法改悪反対シンポ開催

反対運動の機運盛り上げ


 政府は二月二十日、労働基準法の改正案を国会に提出した。法案は裁量労働制、変形労働時間制などを打ち出し、最低限の労働者の権利を踏みにじり、無制限の長時間労働、サービス残業を認めるものである。すでに昨年来より労働界、法曹界などが反対の行動に立ち上がっており、九八春闘の重要な課題となっている。法曹界では、全国の弁護士を組織する日本弁護士連合会(日弁連)が、労基法改悪の機運を盛り上げようと初めてシンポジウムを開催した。


 日本弁護士連合会は三月七日、シンポジウム「仕事も家庭もいきいきと―今こそ、労働条件に関する男女共通の規制を」を東京の弁護士会館で開いた。

 主催者を代表して鬼追明夫・日弁連会長があいさつした後、日弁連の「両性に関する委員会」から基調報告が行われた。基調報告では「日弁連としてはすでに労基法改正にかんする意見書を出しており、労働法の規制緩和に反対している。今日は現場の声を聞き、われわれ法律家も男女共通の規制をめざしていく」と述べた。

低賃金ゆえに長時間労働

 現場からの報告では、契約社員の問題について、内田妙子・航空労組連絡会副議長が契約制スチュワーデスと有期雇用問題について報告した。内田氏は「契約スチュワーデスが導入されてから三年がたった。この間各航空会社は正規スチュワーデスを採用せず、すでに契約スチュワーデスが約半数を占めるようになった会社もある。契約スチュワーデスは一年契約で、更新は三年が限度となっている。しかも仕事は正規社員と同じでも、賃金は約十万円も低い。それが正社員にも影響しており、賃金体系が改悪され、契約社員と同様の賃金体系になりつつある。また各種手当の削減も始まっている。契約社員を増加させる労基法改悪には組合としても反対している」と報告した。

 次に全国一般の組合員である中原純子氏が「二十一年間働いてきた会社を解雇され、現在は印刷会社のパートで働いている。しかし、パートの賃金では生活できず、ファミリーレストランでアルバイトを始めている。印刷会社ではパートだが、仕事は八時半から午後五時までと正社員と同じで残業も正社員とまったく同じである。ファミリーレストランは夜九時から深夜一時ごろまで働いている。だからいったん家に帰り、子どもの夕食を準備した後、出かけなければならない。印刷会社で残業のあるときは、そのままファミリーレーストランに行かなければならない。年間に三千時間以上働きながら、年収は三百万円程度にしかならない。特にファミリーレストランではほとんどがパート、アルバイトで、三カ月ごとの契約更新となっており、賃金はほとんど上がらないのが現実である。まさに低賃金ゆえに長時間労働を強いられている。労基法が改悪されれば、もっと低賃金の労働者が増やされることになる。誰のための労基法改悪かと強く言いたい。労基法改悪に反対し行動していきたい」と述べた。

 電機産業の労働者は、「裁量労働制が来年五月から本格導入されるが、事実上サービス残業を強いられることになる。人によっては賃金が十一万円も下がることになる」と訴えた。

規制緩和は労働者の貧困招く

その後、上畑鉄之丞・国立公衆衛生院次長が産業医の立場から、林弘子・福岡大学教授が労働法学者の立場から報告した。

 会場からの発言では、「二交代勤務にかわり慢性的な疲労で医療ミスさえ起こしかねない」(看護婦)や「女性というだけで昇進・昇格できない」などの報告や「過労死は企業による殺人であり、殺人罪の適用を求めるべきだ」「労働協約無視の会社への罰則規定を強化すべきだ」などの意見が出された。

 シンポジウムは、こうした労働条件の悪化を是正するために、労働組合や弁護士ももっと活発に活動することと併せて、労基法改悪が労働者の最低限の権利さえ奪うことになると警告し、労基法改悪反対の運動を盛り上げることを確認した。

 労基法改悪に反対する運動が連合をはじめ労働組合や学者・文化人からも大きく広がっている。今回の日弁連のシンポジウムはそうした運動を進める上でも重要な取り組みである。


Copyright(C) The Workers' Press 1996, 1997,1998