980215


労働弁護団などが声明

労働基準法改悪を許すな

 労働省は一月二十一日、中央労働基準審議会(中基審)に対して労基法改正の法案要綱を諮問した。中基審は二十六日、労働省の提出した法律案要綱について「おおむね妥当」とする答申を出した。これは労働基準の規制緩和に反対する労働団体、弁護士・学者などの声を無視し、労働者の権利や生活を破壊するものである。すでに労働弁護団、連合などが抗議の声明などを出している。以下、紹介する。


労基法改正の法案要綱に対する声明(抜粋)

日本労働弁護団  

   会長  佐伯 静治

一、法案要綱は、われわれが懸念していたことを改めないまま、雇用の弾力化をいっそう進める内容となっており、結果的には人間らしい生活を保障することを目的とする労基法の理念に逆行して、労働者の権利と保護を削ぎ落とすものとなっている。

二、裁量労働制

 裁量労働には『みなし労働時間制』がとられており、成果評価と結びつくことにより無定量の長時間労働がいっそう拡大し、ただ働き残業(サービス残業)を合法化して残業手当の大幅削減になる恐れがあるとして、われわれは、裁量労働制を企画職などのホワイトカラー一般に拡大することに反対してきた。建議段階では『本社及び他の事業場の本社に類する部門』とされていた対象事業場について、法案要綱では、『事業運営上の重要な決定が行われる事業場』となっており、いっそうあいまいで拡大解釈を許しかねない要件となっている。対象業務について、法案要綱では『その性質上』その遂行方法を労働者の裁量に大幅にゆだねる必要がある企画、立案、調査、及び分析の業務に拡大するとしている。業務の性質上裁量労働にかかる業務というのであれば、現行の労基法三八条の二・第四項の裁量労働制(その対象業務については労基法施行規則二四条の二・第六項)の対象業務に該当するか否かを検討すれば十全であって、新たな裁量労働制を導入する必要はない。

三、時間外労働

 わが国の長時間労働の宿幣を改めるためにも、時間外労働規制の基準は罰則をともなった禁止規定とすべきである。また、労基法の体系からしても、中心的な条文である労働時間管理について努力義務規定にすることは許されない。

四、変形労働制

 法案要綱は、一年単位の変形労働時間について、最長所定労働時間の延長、区分期間の三カ月以上から一カ月以上への短縮など要件および特定の緩和を提起している。この要件と特定の緩和は、労働者にいっそう不規則な労働と生活を強いて、時間外手当の減額になるものとして、反対である。


笹森清連合事務局長の談話

 連合は、男女共同参画社会の実現に向け、男女労働者が共に充実した職業生活と家庭生活を営むことができる環境条件の整備と「公正・公平・平等・参加」の社会システム確立の観点をしっかり踏まえ、経営者の総人件費抑制・労働基準の規制緩和を許さず、労働者の権利と労働条件向上につながる生活改善闘争に力を入れる。


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