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 迫る労基法の抜本改悪

 急速に広まる反対運動



 労働法制の規制緩和、労働基準法の抜本改悪が進められようとしている。労働省は七月に「改正試案」を中央労働基準審議会に提示、十二月までに中基審に最終取りまとめを提出させて、来年の通常国会で通過させる構えである。労基法改悪の緊迫した情勢のなかで、労働者の権利を守るために、労基法改悪反対の運動が広まっている。

 労働省の労基法「改正試案」は、日経連がかねてから主張していた労働力の流動化促進に沿ったもので、ホワイトカラーに裁量労働制を広げ、有期雇用上限を一年から三―五年にする、変形労働制の拡大など、労働者の権利を著しく侵し、労働条件を切り下げるものである。
 連合は労働法改正問題で、「権利拡充の労働法実現」「基準緩和の阻止」をかかげた取り組みを強めている。
 十月二十九日に全国統一駅頭宣伝を展開、十一月五日から十日にかけて、労働省前で二十四時間の座り込みを行う。十一月八日には東京・亀戸中央公園で三万人規模の集会を開催することなどを予定している。
 また先の連合大会では「労働法制の見直し・改正に関する特別決議」を採択した。決議では、(1)時間外・休日労働および深夜労働の男女共通規制の法制化、(2)長時間労働を容認する裁量労働制の導入、変形労働時間制の緩和をしないこと、(3)労働契約の五年への延長を許さない、(4)パート労働者、派遣労働者の保護、などを求めた。 これを受けた形で、権利拡充の労働法制実現! 基準緩和阻止! 連合要求実現の「応援団」が十月十六日に設立された。応援団は浅倉むつ子氏(都立大教授・男女雇用平等法を実現するフォーラム代表)、角田邦重氏(中央大学教授・日本労働法学会代表理事)、樋口恵子氏(東京家政大教授・男女雇用平等法を実現するフォーラム世話人)、山本博氏(弁護士・日本労働弁護団副団長)の四氏が呼びかけたもの。
 すでに百人を超える学者・弁護士などが参加しており、労働基準法の緩和反対の意見広告を出すことや各集会で基準法緩和の危険性と社会的規制の必要性を訴え、世論を喚起するとしている。


労働法学者、弁護士が共同声明(資料)

労働法制の規制緩和に反対するアピール(抜粋)

 政府が行政改革・規制緩和の政策を進めるなかで、労働法制の分野においても、労働者保護のための法規制が緩和・廃止されようとしています。
 労働者保護の視点から定められた法規制は、労働者と使用者との社会経済的地位の差異にもとづいて、ILO条約などの国際労働基準をも考慮しつつ労働者の人間らしい労働生活を確保するためのものであり、事業活動に対するいわゆる経済的規制とはその基本的な性格を異にするものであって、市場競争原理や個人責任の原則から、雇用・労働条件にかかわる法規制を見なおそうとする考え方は一面的であり、強く批判されなくてはなりません。
 労働法規制の緩和は、かねてから企業側が強く求めていたものであり、緩和の内容が一般にそのような方向に沿っていることをみると、社会的公正に適合した規制緩和と言えるかどうか強い危ぐの念を抱かざるを得ません。
 私たちは、労働法、労使関係、労働問題などの研究者・実務家として、現在進められようとしている労働法制の規制緩和が労働者に一方的に犠牲を強いる意味が強いものと考え、反対の意見を表明します。

一九九七年一〇月

アピール呼びかけ人
片岡 昇(京都大学名誉教授)
戸塚秀夫(東京大学名誉教授)
中山和久(早稲田大学教授)
熊沢 誠(甲南大学教授)
西谷 敏(大阪市立大学教授)
角田邦重(中央大学教授)
佐伯静治(弁護士・日本労働弁護団会長)
石川元也(弁護士・自由法曹団団長)


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