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 基準賃金42万円、1800労働時間 5団体共闘で大きく前進

 反響広がる産業政策

中小企業と共に大手に対抗

武 建一・全日本建設運輸連帯労組関西生コン支部委員長に聞く


 全日本建設運輸連帯労組関西生コン支部(関生支部)は、今春闘において生コン産労など五団体共闘を進め、集団交渉によって大阪兵庫経営者会に業界基準賃金四十二万円を確認させた。その他、大企業の横暴阻止など、今日の中小労働運動にとって、重要な経験となるいくつもの成果をかちとっている。最近、定期大会を終えた武建一委員長に闘いの経過などを聞いた。


 九七春闘においては、生コン産業労組、化学・一般労組連合(CSG)、全港湾、運輸一般とわれわれの五団体共闘で闘うことができた。全体としては賃上げ額は五千円で、額としてはたいしたことはない。
 しかし、昨年から格差是正を掲げ、基準賃金四十二万円に達していないところでは四千円を上積みした。生コン全体で一つのガイドラインとしての基準賃金四十二万円ができたことは大きな意味があった。
 昨年の集団交渉は、われわれの労資関係があるところだけの交渉だった。今年は大阪兵庫生コン経営者会ができており、大阪、兵庫の約百六十社と交渉し、四十二万円を基準にして、それ以下のところは接近させることで合意した。京都、奈良は少し低い三十八万円が基準だが、三年間で是正することを確認、大阪、兵庫では期限は決めていないが、是正することを確認した。
 また年間労働時間は、大阪、兵庫は昨年から千八百時間だったが、奈良、京都も千七百九十九時間になった。
 今までは労資関係のあったところだけを拘束していたが、今年からは大阪兵庫生コン経営者会が労組法でいう使用者団体であることを認め、加盟会社全体を拘束することになった。これも大きな成果だと思う。

大企業の過当競争を抑える

 次にわれわれの政策闘争によって、セメントメーカー主導・大企業主導から中小企業主導に転換しつつある。近畿二府四県の生コン各社による生コン協同組合への加入率はほぼ一〇〇%になっている。そして、セメントメーカーの販売競争を抑制するために、セメントのサービス・ステーションを土曜日は完全休業にさせ、稼働時間が今まで二十四時間だったものを営業時間は八時から五時までと、時間管理をしていこうとしている。
 これらの措置によって、メーカーの拡販競争をおさえ、生コン需給を適正化するうえで大きな成果をあげている。つまり中小企業の発言力を高めている。
 中小企業と共に大企業に対抗するために、昨年十二月に中小企業政策研究会(連帯労組、全国一般、生コン産労、全港湾で構成)の呼びかけで、三百五十人が参加するセミナーを開いた。全国の生コン会社からも二百五十人が参加している。
 中小企業の現状は、規制緩和などによって非常に厳しくなっている。そこで中小企業の生き残り策としては、労組と団結して大企業の横暴に対して向かっていくしかない。中小企業経営者には労組アレルギーがあるが、中小企業では労資が対立だけしている時代ではない。大企業との取引関係を対等にしていくなど政策は共通しており、おおむね合意ができた。
 そのセミナーでの合意内容が大きな反響を呼んだ。というのは、不況を背景に、生コンの値段は岡山県では一立方メートル六千円台に落ち込み、四国でも値崩れを起こしている。六千円台というのは完全に原価割れであり、このままでは業者は倒産するしかない。
 和歌山、岡山、四国などの業者から「労組の政策を聞かせてくれ」と要請がきている。このように反響が大きく広がっている。そこでその地域にオルグを派遣して、中小企業と労組の団結を呼びかけている。

闘いの前進恐れ 不当弾圧

 こうした闘いの前進を恐れた大企業・権力は弾圧をかけてきている。
 一月に三人、三月に十二人、七月に一人を不当逮捕している。われわれが不法な仕事を行っている職場を監視し、適法な仕事を求めたことに対し、暴力行為があったというデッチあげ逮捕である。
 一月の事件で検事側の意見陳述は「そもそも労資関係のないところに押しかけ、業務内容の公開を求め、要求を行うなど、それ自体が間違っている」としている。われわれはこれまでも背景資本への追及闘争を行ってきたが、権力側はそうした闘いは日本の労資関係になじまないということで弾圧してきた。明らかに企業内組合にしか労働運動を認めないということだ。
 三月の事件は、日本セメントによる業界を乱す拡販政策に対し、需給適正化を求めたものだ。ここでも事業者に要求するのはけしからん。まして労組が不買運動など越権行為だと弾圧してきた。
 やはり、われわれが中小企業と共同戦線を組んだことと全国への広がり、それを権力側が恐れたということだ。橋本内閣が進める「改革」によって、中小企業は大きな打撃を受けている。そういう所に火がつくのを恐れたというようにみている。

地本5千人体制の出発点

 こうした弾圧もあって、組合員はかつてなく組織拡大に力が入っている。支部には十二のブロックがあるが、各ブロックに特別班を設けている。一般的な宣伝と特別班による工作を組み合わせている。
 組織拡大では二百四十人増え、数からすればたいしたことがないかもしれないが、四十五の拠点ができた。その拠点が線に結びつく希望ができた。近畿地本五千人体制への出発点として位置づけられると思っている。
 中小労働運動は、自分の組合員の利益を代表するだけでは限界がある。米国のUPS労組(小荷物運送)の闘いのように、パートや未組織労働者など最も弱い立場にある人びとの要求を体現できる運動を目指したい。今春闘で中小労働運動の一つの典型を示すことができたと思っている。「頼られ、求められ、魅力ある労働組合」として頑張りたい。 


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