970905


ストで対抗する道に深い確信

港湾の規制緩和に反対して

霧島  哲雄(港湾労働者)



 私は港湾運送の中小企業で働く労働者である。

 現在、港湾全体では景気を反映して物流、荷動きが少なくなっている。一方、メーカーなど荷主がコストダウン策として、荷主直系の運送体制を使い、それによる受注減もある。おまけに関西では、阪神大震災の影響も残っている。ほかの港湾関連業者によると、大震災によって荷物がいったん阪神から名古屋や横浜に流れたら、戻ってこないという。震災後、七、八割は復旧しているが、残りの二、三割は戻ってこない。

 私が働く港湾では業者は数十社あるが、十人前後の企業が圧倒的に多い。貨物量の低迷で、中小零細はどこも苦しい状況にあるといえる。私の職場では、まだ表だった合理化はない。しかし、今後荷動きが少なくなると、事業縮小、人員減という動きが出るおそれもあるだろう。

 とりわけ厳しい環境にあるのが、トラック部門である。全港湾労組のなかでも、トラック関係はかなり多い。ご存知のように、この業界は七年前の物流二法施行以来、規制緩和が一番進められた業界である。当然、コスト削減の要求が強烈だ。そのうえ、こんにちでは社会的に「競争」があおられている。そうした風潮を背景に、減った貨物量をめぐって業者が殺到する。荷主サイドも運送業者をふるいにかけ、一〇%、一五%などの運賃値引きを要求してくる。物流業者は、へたに抵抗すると受注そのものが取れなくなるので、荷主の強引な要求を飲まざるをえない。

 だから、荷主直系の物流業者は、いくらコストダウンしても親会社が長期に抱えてくれるので生き延びるだろう。ところが、そうでない業者は競争の中で負けることになる。

 その結果、労働者にどういう影響が出るか。コスト削減の動きが強まっている職場では、どうしても十分な賃上げ、一時金獲得ができないことになる。

 九七春闘の場合、特別減税の廃止、消費税増税、医療費値上げの動きなどもあるため、われわれは三年ぶりに全国統一要求(二万五千円)とした。しかし、港運は中小零細企業が多く、コスト削減などもあって、昨年を若干下回る結果に終わった。こうした賃上げ抑制の状況では、港湾労働者の家計は厳しい。

 さて、この一年間、われわれの最大の闘いは規制緩和に反対する闘いだった。昨年十一月の統一ストライキに始まり、今年三月の港運同盟と共に打ち抜いた二十四時間ストを頂点に何波もの統一行動を展開した。

 われわれが港の規制緩和に反対するのには、理由がある。港湾が規制緩和になると、たいへんなことになるからだ。港湾運送事業免許が緩和されれば(大手)新規事業者参入が激化し、今でも圧倒的に多い中小零細はバタバタつぶされるかもしれない。認可料金制度が廃止になれば、現在でもその制度が順守されていないのに、運賃値引き競争に輪をかけることになる。労働力需給調整などをする事前協議制がなくなれば、われわれの就業機会、雇用保障はなくなっていくだろう。要するに、港運業界は完全な「弱肉強食」の世界に突入する。戦後、先輩たちが苦闘して闘いとってきた港の秩序は破壊され、労働条件が切り下げられていくのは目に見えている。現に、大手業者は地方港に進出しつつある。

 そのうえ、米国までが制裁金をちらつかせながら、腕づくの「開港」を迫っている。われわれの今年のストライキ闘争には、当然、この米国の不当な要求に対する抗議も含まれていた。

 ストライキを打ち抜いた一連の闘いについて、われわれは高く評価すべきだと思う。「規制緩和は時の流れ」「ストライキは時代遅れ」というような世の中の宣伝に抗し、規制緩和に対してストライキで対抗する道があるということを、具体的に示すことができた。

 米国の運輸労働者のストライキなど、抵抗が国際的に起きている状況のなかで、われわれはストライキの道に合流したわけである。また自分たちが非常にきついなかを闘い抜き、お互いの信頼関係を深めることができた。自らも闘いに確信を深めることができた。

 これからの課題は、敵の攻撃に対応できるかどうか、今年の闘いを上回る闘いを組織していけるかどうかにかかっている。率直にいえば、まだ一部の単組では闘いに向けて「温度差」がある。全港湾全体では規制緩和に対して危機感は強いが、すみずみまで周知徹底しなければならない。やはり、ストライキは港全体を止めないと意味がないので、どうしても港湾全体の労働者の闘いがカギといえる。

 そうした態勢をつくりつつ、われわれは断固闘っていきたいと考えている。


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