970825


新ガイドラインの先取りは許されぬ

船水 博・連合北海道事務局長に聞く


 北海道では、米空母の小樽寄港や沖縄米軍の矢臼別移転演習、また新ガイドライン・有事法制に反対する闘いが強化されようとしている。連合北海道は、米空母寄港を明確に「ガイドライン見直しの先取り」、具体化とみて、反対の闘いを行っている。
 九月五日からの米空母寄港に対して、連合北海道は七月末反対を表明、各組合は小樽市長、道知事、在札幌米国総領事館に文書抗議行動を行った。八月十九日には連合小樽が千人規模の集会とデモを展開した。
 北海道平和運動センターは、米空母寄港、演習移転、ガイドライン・有事法制化阻止全道連鎖学習集会(五地区)とキャラバンを八月二十一日から一週間くりひろげている。
 矢臼別演習場では九月十八日から十日間、米海兵隊約三百七十人で一五五ミリりゅう弾砲実弾演習が予定されている。これに対して、連合北海道と道農民連盟(約七万戸)でつくられた「演習移転反対対策本部」は九月十五日、北海道平和運動センター、同盟友愛センターの共催も得て釧路で三千人以上の集会・デモを計画している。演習で被害をこうむる農民が、この闘いに積極的に参加していることは注目すべきである。
 また、根室の漁港・花咲港を演習用物資荷揚げに利用しようとすることに、地元の反対の声が上がっている。



 空母インディペンデンスがなぜいま小樽に寄港するのか、目的がはっきりしない。「親善」といわれても、急な話であり、とうてい小樽市や北海道全体が好意を寄せて招くという状況にはなっていない。

 港湾能力の問題もある。きっ水の深さ、回転する余裕など入港できるのかどうか。安全性の問題では、インディペンデンスは今月初め、横須賀で大量の油漏れをやっているのできわめて危惧(きぐ)される。

 また空母が入港すれば、民間船は沖で待機するケースも起こり得るのではないか。米軍は約三千五百人来るといわれており、小樽のふ頭には民間の荷揚げ施設もあるので、混乱回避、安全確保ができるのか。というように、問題点は現時点で実に多い。

 そもそも小樽港のような民間一般港の米空母利用は、日米安全保障条約のもとにおいても初めてのことである。こんにち「日米安保ガイドライン」の見直しが、九月に開催される臨時国会などにおいて議論される状況にあり、米空母の小樽への寄港は、先の自衛隊機のカンボジア派遣を含め、これから国民的議論を必要とする課題である。今回の事態は、まさに「ガイドラインの見直し」を先取りする意図が明らかである。ガイドライン見直しの先取りは許されない。

 核廃絶、軍縮の面からみても、入港艦船の核搭載の有無については、従前から(別の艦船でも)入港のたびに小樽市としては質問を出していた。しかし、いっさい返答がなかった。返答がないことは、「核を積んでいない」ということにされてきた。しかし、空母の場合は他の艦船と違って積んでいる可能性が高い。そうなれば、小樽市民としてはいっそう心配の種となる。

 小樽市は「核兵器廃絶平和都市宣言」を十五年も前に出し、また道の八十七市町村も「非核都市宣言」「平和都市宣言」を出しているので、果たして他の市町村の同意を得られるのか。軍縮の側面からすると、とても受け入れ難い。

 北方領土問題解決の関係でいえば、最近米ロ関係が雪解けムードにあるが、矢臼別に実弾演習が来て、さらにインディペンデンスも来ることになれば、日本と隣国ロシアとの関係にとってよくないことになるのではないか。

 以上のように、いろいろな角度から見て、連合北海道としては今のところ「寄港は認め難い」という見解を明らかにしている。

 われわれはすでに団体署名を開始しているが、もう少し事態がはっきりしてからより強い意思表示をすることになるだろう。



米空母寄港に反対する小樽集会宣言(要旨)

 小樽市は、一九八二年六月に『核兵器廃絶平和都市宣言』を行い、東西冷戦体制の崩壊した今日では、ロシアや北朝鮮などとの近隣対岸交流を中心とする平和な商業・観光都市、港として発展し、確固たる地位を築いてきた。その小樽港への寄港は、ガイドラインの先取りの意図が明らかであり、許されることではない。今回の寄港が有事の際の軍事利用の実績づくりとなって、小樽港が横須賀港に次ぐ拠点・軍港化されることには断固反対するものである。常に核兵器搭載疑惑がつきまとっているインディペンデンスなどの寄港は、平和を愛する小樽市民に大きな不安を与えるだけでなく、港湾で働く勤労者の仕事や生活をおびやかすことになる。われわれは、寄港は断固認めず、広く小樽市民・道民世論に訴える行動を展開する。


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