970515


賃金体系改悪は認めない

一時凍結は大きな成果

奥平 隆・全日空乗員組合書記長に聞く


 全日本空輸乗員組合(石飛明夫委員長、約千五百人)は、先に賃金体系改悪の一時凍結をかちとった。組合は、現在もスト権を確立したまま新たな賃金体系の要求を掲げているが、不当にも会社側は回答を出していない。各産業における大競争、規制緩和を背景に、労働条件切り下げ攻撃が強まるなか、これを一時阻止したことは、労働運動にとって大きな意義がある。沖縄などほかの乗員組合もストを構えて闘っている。奥平隆・全日空乗員組合書記長に、成果を獲得した経過などについて聞いた。



 会社側の新賃金体系を一時「凍結」まで追い込んだことは、非常に大きな意義がある。ここ十数年のうち、会社が強行したものを「凍結」や「撤回」させたことはなかった。そうい意味では、組合がそれだけの力を盛り返したといえる。
 そこまでに至るには、まず昨年秋に二回のストライキを打ち、今も国際線を止めるストライキを構え、そこに結集した組合のまとまりが大きい。あまりにも会社の不当なやり方に対して、職場が「断固ノー」といってまとまることができた。引き続き、われわれが会社に堂々と主張できる状況が生まれた。

 次に労働時間管理について、全日空という会社が労働基準法に違反している実情が明らかになった。組合は、そのため労働基準監督署、労働省、運輸省などに訴え続け、紛争の火の手が外にまで広がってしまった。会社としても、そういう世論の批判のなかで動かざるを得なくなった。そういう結果、こういう状況に至っているのではないか。

 もちろわれわれの労働条件は、ひとり全日空のパイロットだけの問題ではない。日本航空などの乗員も同じような状況に置かれているので、労働省、運輸省などへの取り組みは、産別である航空労組連絡会で取り組んでいる。

 あるべき新賃金体系については、組合は要求書を提出し、交渉している。その基本は、「切り下げ、人事考課、出来高制」がなく、労働時間管理をはじめ労働基準法に基づいた賃金体系ということである。三月六日に提出したが、通常一カ月くらいで回答があるが、今回は不当にも二カ月たっても対応していない。

 次に労資関係の正常化については、会社は新賃金体系を強行したことについて基本的に反省していない。他の協定についても、破棄する動きが出ている。だから、会社は必ずしも労資正常化へ努力しているとは思えない。まして、新協定に向けた期限付き交渉はだめだ。そもそも協定破棄が問題なので、元に戻して話し合うならばよい。だから賃金協定、労資関係正常化の問題について、国際線全便規模のスト権は確立したままにしている。

 われわれへの攻撃は、大競争時代、規制緩和だといって、企業を競争に巻き込ませることからきている。ここ数年、競争に勝つためには労働条件も下げなければしかたがないのだという世論づくりをしてきた。産別で検討した結果、いま進められている規制緩和は、利用者にも、働く者にもためにならないということになった。その点を見極めながら闘っていきたい。



闘いの経過:乗員組合、ストで闘いぬく

 全日空は昨年四月、賃金協定を一方的に破棄し、新賃金体系を強行実施した。その内容は、「六十五時間保障(飛行時間保障手当)」の実質削減や能力主義の導入などを柱とした改悪である。

 こうした強行措置に、乗員組合は協定破棄の白紙撤回を求めて反撃した。昨年四月からは二カ月以上指定便スト、秋には全面二十四時間ストを含む二波のストを打ち抜いた。さらに、労働基準監督署、労働省、運輸省などに訴え続け、紛争の火の手を社会的に広げた。さらに本年二月にも国際線全便規模のスト権を確立した。

 一連の断固とした闘いの前に二月末、会社はついに譲歩に追い込まれた。それは新賃金体系実施の一年間「凍結」、その期間は従来通りの賃金体系に戻すこと。一年間に限り、新賃金制度・協定について労資で協議することであった。

 ここ数年、航空各社は大競争、規制緩和の動きを背景として、アルバイト・スチュワーデス導入など労働コスト引き下げ、労働条件悪化を狙ってきた。しかし今回、乗員組合の結束した断固たる闘いによって「凍結」に追い込まれた。この成果はまだ一時的であるにせよ、労働者の闘いの大きな前進である。各産業における規制緩和と労働条件切り下げに対して、労働運動が十分闘えていない現状のもとで、非常に大きな意義がある。

 全日空乗員組合は、スト権を確立したまま闘い続けている。

 一方、沖縄を拠点とする日本トランスオーシャン航空(JTA)の乗員組合(池内宏委員長、約百六十人)も、全日空と同様の攻撃に対してストライキを反復している。

 JTAは昨年九月、一方的に労資間の協定を破棄し新賃金体系導入を強行した。これに対して乗員組合は、協定破棄の撤回などを求めて昨年八月の二十四時間全面スト、今年三月の四十八時間指名スト、四月初めの二十四時間全面ストで闘っている。


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