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労働新聞 2021年2月15日号〜3月5日号・2面 労働運動

経団連の「22年版経労働委報告」を批判する

断末魔の資本主義の延命策し、「未来志向の労使関係」騙る

 二〇二二春闘は連合と日本経団連との「労使フォーラム」が一月二十五日に開催された。二月十日には川崎重工やIHI、三菱重工業、日本製鉄など大手機械、鉄鋼メーカーの労働組合が要求書を提出、自動車や電機の労組も後に続き、三月十六日の集中回答日に向けて労使交渉が本格化する。
 コロナ禍を受けて二回目となる二二春闘だが、燃料費をはじめ、食料品など生活に必要な製品の価格が軒並み上昇、労働者の生活を直撃している。一方、連合中央・芳野指導部は「未来づくり春闘」と銘打ち、「賃上げ二%、定期昇給含め四%」と要求を打ち出しているが、この物価上昇で吹き飛んでしまう水準だ。「生活できる賃金よこせ」の声を二二春闘で爆発させよう!
 この二二春闘に当たって、わが国財界の総本山=日本経団連は一月十八日、かれらの春闘方針とも言うべき「二〇二二年版経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)を公表した。数回にわたり検証、批判する。
 「報告」序文のなかで経団連は岸田政権のスローガンである「新しい資本主義」と自分たちが打ち出した「サスティナブルな資本主義」が「軌を一にする」と規定した。だが、その実際は「成長と分配の好循環」などとと安倍政権下での「アベノミクス」の「トリクルダウン理論」を再び持ち出し、「成長がまず全力に取り組むことが社会的責務」などと労働者に説教を垂れるのだ。
 そして「報告」序文では、「デジタルトランスフォーメーション(DX)とグリーントランスフォーメーション(GX)の推進」を叫び、「ヒトが最も重要な経営資源」「働き手のエンゲージメントを重視した『働き方改革フェーズU』への深化…(中略)…新たな成長分野・産業への円滑な労働移動」によって、「生産性を高め、イノベーションを加速し、DX・GXを実現しなければならない」と立て続けに叫んでいるのだ。
 昨年版の「報告」でも「働き方改革フェーズU」が強調されたが、改めて財界の労務政策の大きな柱として打ち出されている。
 デジタル化など情報技術分野を中心としたわが国の立ち遅れにいらだつ財界は、遅れを挽回しようと「DX」「GX」を強調、そして、こうした情報技術に長けた一握りの人材の育成に力を注ごうというのだ。
 この間、日本経団連は新卒一括採用、終身雇用、年功序列賃金などで構成されるいわゆる「日本型雇用」の見直しを主張、昨年の「報告」ではいわゆる「ジョブ型雇用」の導入を提起していた。

生産性向上に向けた「ジョブ型雇用」
 そして今回の「二〇二二年版経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)でもあらためて「ジョブ型雇用」の導入を加盟企業に呼びかけ、いわゆる「日本型雇用システム」がその導入を阻害していると決め付け、「転職等の労働移動を抑制し、日本の外部労働市場が未発達である」要因としてやり玉に上げた。
 「報告」では「ジョブ型雇用」について、「技能やスキルを自ら磨き、主体的なキャリア形成と専門性の高い働き方を望む働き手にとって、自身の能力を発揮できる」「成果に応じた処遇が得られる点で魅力的な制度」とその「魅力」を強調している。
 わが国における労働生産性について、「報告」は、「わが国の労働生産性(二〇二〇年)は、経済協力開発機構(OECD)加盟三十八カ国中二十八位」「一人当たり労働生産性のOECD内順位は、一九七〇年以降、八八年〜九二年を除くとG7中最下位」等々、その低位を嘆きつつ、「AI(人工知能)やロボットの活用を含めた省力化投資や付加価値・対価に見合わない業務の削減」の必要性を説いている。
 「GAFAM」五社の時価総額の合計で日本の全上場企業の時価総額を上回り、アップルはトヨタ自動車の約十倍の時価総額だ。「第四次産業革命」でのわが国の立ち遅れがもはや誰の目にも明らかになるなか、日本経団連は焦燥感をつのらせながら、生産性向上に向けた号砲を鳴らしている。そして、そのための労務政策にこの「ジョブ型雇用」が据えられているのだ。
 併せて、「職務評価に伴う査定昇給や、昇格・昇進に伴う昇給のウェートを増大するなど、成果や業績を適切に処遇へ反映する仕組みが肝心」(「報告」)と述べ、すでにユニクロなどのサービス業を中心に広がっている成果主義の導入を促している。
 「デジタルトランスフォーメーション(DX)とグリーントランスフォーメーション(GX)の推進」を至上命題にする日本経団連は「ジョブ型雇用」の採用も含めた雇用システムの導入を迫っているのだ。

「円滑な労働移動」で一大リストラ準備
 また「報告」では「円滑な労働移動の推進」を課題に挙げている。「今後、円滑な労働移動の推進、日本経済全体の生産性を高めていく上で避けて通れない重要な課題」「『ヒト』をスターアップを含め成長分野・産業等へ円滑に移動させていくことこそが、わが国経済の持続的な成長の礎」(「報告」)と言うわけだ。
 かれらが叫ぶDX、GXの進展に向け、事業再編や工場閉鎖などの大リストラがコロナ禍をも口実に相次いで打ち出されている。
 「円滑な」というが、その実際は労働者の首切り・解雇にほかならない。その上、「労働移動を阻害しない雇用のセーフティーネット」(「報告」)なるものを提起、併せて、「解雇無効時の金銭救済制度の創設に向け検討」(「報告」)などと解雇の金銭解決制度の導入も謳うなど、いっそうの労働法制の改悪を迫っている。
 コロナ禍のさなか、多数の労働者が職場から追われ、雇用不安が言われているが、この状況下において、労働者の解雇を容易にし、雇用の不安定化をいっそう助長させるこの金銭解決制度を導入を許してはならない。
 そして、「報告」ではこうした諸施策について、「この検討と実現には、労働組合をはじめとする働き手の理解と協力が欠かせない。賃金引き上げに限らず、こうした課題検討型の労使交渉・協議を行うことが、未来志向の労使関係への深化につながる」などと説いているのだ。
 春闘を日本経団連が望む労務政策についての協議の場に変質させ、これこそが「未来志向型の労使関係」というのだ。

「賃金決定の大原則」振りかざし、
賃上げ抑制の姿勢あらわ

 日本経団連は「二〇二二版経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)で二二年春闘における「基本スタンス」を明らかにしている。おおよそ以下の通りである。
・業種や企業によって業績がばらつく「K字型回復」の様相が長期化するなか、企業労使で自社の置かれたいる状況を共有した上で、一律ではなく、個々の企業に適した対応を検討することが現実的
・月例賃金だけではなく、諸手当や賞与・一時金などさまざまな選択肢の仲から、自社に適した賃金引き上げに向けて、企業労使で知恵を出し合うことが建設的な労使交渉」ーー
としている。昨年春闘でも日本経団連は二一年版「報告」で「自社の実情に適した賃金決定の徹底」を加盟企業に呼びかけており、その姿勢を踏襲している。これが、かれらがこの間主張してきた「賃金決定の大原則」である。
 「報告」の「序文」には「行き過ぎた資本主義がもたらした社会課題」として、「無期雇用労働者と有期雇用労働者」「大都市圏と地方」と並べて、「大企業と中小企業」を挙げているのにだ。その姿勢は一言でいえば、企業間格差を是認するものであり、この方針が貫徹されれば、いっそう日本経団連が指摘している「社会課題」である企業間格差は拡大するだろう。
 中小企業における賃上げについても、「報告」では「中小企業の賃金引き上げが重要」と言うものの、「実態から大きく乖離した要求水準を掲げることについては慎重に検討すべき」と述べ、きわめて否定的な姿勢を示している。
 こんにちわが国での一人当たりの実質賃金はピーク時の一九九七年と二〇二〇年を比べると、六十四万円も減っている状態だ。
 良く知られているように、一九八五年、当時の日経連は「新時代の『日本的経営』」という報告書を発表した。これは労働者を三つのグループ((1)長期蓄積能力活用型グループ、(1)高度専門能力活用型グループ、(3)雇用柔軟型グループ)に分類、とくに(3)にあたる部分を派遣・非正規労働者と位置づけ、「総人件費の抑制」のため、その拡大に努めてきた。またこの財界の要望に応える形で歴代政権は労働者派遣法を成立させ、九九年には派遣労働を事実上自由化、〇三年には製造業務まで派遣労働が解禁された。その結果、こんにちでは非正規労働者の数はおおよそ二千百万人以上となり、雇用者全体に占める比率も約四割以上まで達しようとしている。そして、低賃金の非正規雇用が増えた結果、非正規のみならず、正規労働者の賃金も押し下げられ、年収二百万円未満のいわゆるワーキングプアは約千二百万人に上るといわれている。
 日本経団連がいう「行き過ぎた資本主義がもたらした社会課題」とはかれら自身が望んだにも関わらず、その責任について口をつぐみ、まるで他人事のように「説教」を垂れているのだ。  非正規、正規問わず労働者の賃金が抑制され続けてきた状況にこのコロナ禍である。そして、食料品などの生活必需品、電気、ガスなど国民生活に欠かせぬ諸物価の高騰が労働者を直撃している。

諸物価高騰で苦しむ労働者尻目に
過去最高の内部留保を合理化

 総務省が二月十八日に発表した一月の全国消費者物価指数は五カ月連続で前年同月を上回った。今春には、前年同月比の上昇率が二%に近づく可能性があるとの見方も出ている。特にエネルギーの上げ幅は一七・九%と第二次石油危機当時以来の四十一年ぶりの記録的大きさだ。都市ガスが一七・八%、灯油が三三・四%、ガソリンが二二%も上がっている。また、生鮮食品を除く食料も一・三%上昇している。  こうした労働者大多数の生活状況の悪化を尻目に日本経団連は「個々の企業に適した対応」「『賃金決定の大原則』を堅持することの重要性が、二一年に増して高まっている」(報告)などと賃金抑制の姿勢を強めている。
 一方で、「収益が高い水準で推移・増大した企業においては(中略)ベースアップの実施を含めた、新しい資本主義の軌道にふさわしい賃金引き上げが望まれる」(報告」としている。なんのことはない、あくまで「収益が高い水準で推移・増大した企業」とあらかじめ限定した上での「賃上げ」である。しかも、それさえも「職務や資格別や階層別、人事評価・査定結果など、働き手が担っている仕事や役割、組織に対する貢献度などに応じた重点的な分配が有効な手法」(報告)というのである。つまり、「収益が高い水準で推移・増大した企業」においても、「エンゲージメント」「価値創造力」が高い労働者に対しては少しばかりの賃上げで応えるものの、それ以外の労働者については人事評価や「貢献度」を計りながら、格差をつけた配分にするというのだ。
 また、企業の二〇年度の内部留保(金融・保険業を除く)は前年度比二・〇%増の四百八十四兆三千六百四十八億円と九年連続で過去最高を更新した。「報告」ではわざわざ「コロナ禍における内部留保の意義」なる章を設け、内部留保が「企業倒産の抑制などを通じ、雇用の維持にも寄与した」とその「意義」を強調している。だが、続けて、「他方で、ポストコロナに向けた将来への投資が必要」「DX(デジタルトランスフォーメーション)やGX(グリーントランスフォーメーション)の進展による産業構造の変化を見据え、成長分野への投資や新規事業の開拓」に向けて「内部留保はその原資となる」と言っているのである。
 「人への投資」と言いながら、生活危機にあえぐ大多数の労働者に対する賃上げに内部留保から一円たりとも使わぬ姿勢をあらわにしている。過去最高の内部留保を積み上げながら、何が「サスティナブルな資本主義」「成長と分配の好循環」だ。結局、大多数の労働者の賃上げに背を向け、SDGs(持続可能な開発目標)や「地域社会への貢献」などを持ち出しながら、一握りのIT(情報技術)やAI(人工知能)技術に長けた「DX人材」を成果主義で処遇し、囲い込む一方、DXに対応できない、あるいは親和性が低い業種やそこで働く労働者には低賃金を押し付け、経営危機になれば真っ先に切り捨ていることを意味しているのだ。
 その上、日本経団連は春闘について、「労使でさまざまな事項を議論する場として『春季生活闘争』ではなく『春季労使交渉・協議』と発信することが望まれる」(報告)とその変質を迫っている。そして、「企業と労働組合は『経営のパートナー』として社会問題の解決に共に取り組み、『社会の安定帯』としての役割を果たし、未来志向の労使関係をめざすことが望まれる」などとあるべき「春闘」「労使関係」像を打ち出している。  「報告」では「グローバル化の進展」「生産年齢人口の減少」「労働生産性の低迷」などとわが国の企業をめぐる環境変化に危機感を示しながら、「DXやGXへの取り組みの重要性の高まり」などを「労使が直面する課題」として挙げている。
 そして「労使一体による協働」「労使コミュニケーションを活性化」(報告)の重要性を強調している。  また、「報告」では春闘について、「ベースアップなど賃上げばかりが注目されている」と不満を示し、賃上げなどを脇に置き、企業が迫られているさまざまな課題について、「交渉・協議」する場にするというのだ。
 つまり、生産性向上に向け、DX・GXなど産業構造の変化に「労使一体」で取り組めと言っているのである。これは日本経団連を頂点とする財界の方針に宣誓・協力する労働運動づくりへの「宣言」である。

低額水準の連合要求
春闘変質狙う財界に呼応する潮流許すな

 このように「報告」で示された日本経団連の姿勢に対し、連合はどのような姿勢で臨んでいるのか。
 連合は二二春闘を「未来づくり春闘」と位置づけ、昨年来と同様に「底上げ」「底支え」「格差是正」の取り組みを通じて、「分配構造を転換する突破口とする」という方針を掲げた。具体的には 賃上げ分として「二%程度」と定期昇給分(賃金カーブ維持相当分)を含め、「四%程度」との到達水準を示している。
 だが、先述したように、わが国での一人当たりの実質賃金が低い水準で抑えられ、しかも、昨今の物価上昇である。消費者物価指数が二%上昇すれば一世帯の家計負担は年五万六千円増えるという試算もある。
 また、コロナ禍の影響を受け、製造業含む多くの業種で残業が減り、生活設計を見直さざるを得ない労働者も増大している。ある大手自動車メーカー下請け企業に勤務する労働者はこれまで毎月手取りで三十〜三十五万円ほどの収入があったものの、コロナ禍で工場の稼働日が激減、月十五万円ほどあった残業代が四万円ほどにまで減ったというのだ。そして、住宅ローンの支払いに困窮、マイホームを手放してしまったのだ。こうした労働者が増えているという。
 そもそも、残業しなければ生活できないというのがおかしいのであり、こうした状況をかんがみれば、連合要求はあまりに低額水準といわなければならない。「生活できる賃金を」が労働者の切実な声であり、一律大幅賃上げこそ求められている。
 また、二二春闘においても連合は日本経団連とともに「人への投資」を強調している。
 「報告」では「積極的な『人への投資』の重要性についても(連合と)認識を共有している」と述べている。
 しかし、日本経団連がいう「人への投資」とは一握りの「DX人材」に絞ったものであり、業績が悪い企業はもとより、業績が好調な企業でさえも、さまざまな人事評価制度も用いながら、大多数の労働者に「賃上げ」という形で「人への投資」を行うわけではないのである。「人への投資」などという甘言で、日本経団連と共通の土俵に立っていては連合がいう「底上げ」「底支え」など実現しないのだ。
 また、連合内において、日本経団連が望む「春闘変質」に呼応する部分が動きを強めている。
 トヨタでは二月二十三日の第一回労使交渉で、組合要求に満額で回答する方針が示された。トヨタ労組は今回、全組合員平均を基準として要求する方式をやめ、職種と職位に応じた十二種類(千六百〜四千九百円)の賃上げ要求を提出していた。また、ベアも前年に続いて要求の有無を非公表としていた。
 一九春闘で豊田社長は労組側に対して「百年に一度のCASEの時代に、生きるか死ぬかの状況が分かっているのか」などと一喝、翌二〇春闘では、労使交渉を公開、幹部職や基幹職の代表も加えた三角形の机配置で交渉し、それでも組合が「共通の基盤」に立っていないと見るとベアゼロ回答した。二一春闘はこうした経営側の姿勢に組合は屈服、賃上げや一時金の議論を脇に置きながら、トヨタ生産方式やカーボンニュートラルなどの話し合いに終始した。
 そして、二二春闘では「『本音の会話』ができたことを嬉しく思う」(豊田社長)、「この大変革期を皆さんと全員で戦い抜くために、労使で議論を重ねてきた」(トヨタ労組・西野委員長)。この結果での「満額回答」である。もはや、トヨタにおいて春闘は賃上げ交渉は後景化され、経営側が望むさまざまな「課題」について労使で「協議」する場に変質したのだ。
 経営側の一喝におののき、宣誓を誓った上での「満額回答」。統一闘争としての春闘を内部からかく乱してきたこうした連合内潮流は「自民党支持」までちらつかせながら、財界とそのための政治を労働運動から支えようというのだ。
 これを「産別・単組自決」ということで、容認することは許されない。連合指導部の姿勢が問われている。

「新しい資本主義」への幻想払拭し、
大幅賃上げ、国民諸階層の要求掲げ闘おう

 「新しい資本主義」を掲げ登場した岸田政権。その岸田政権の下で設置されたのが「新しい資本主義実現会議」であり、日本経団連の十倉会長とともに連合の芳野会長もそのメンバーとして加わっている。
 全世界的に地球環境危機、格差と不平等の拡大、これまでの経済システムの活力喪失、それに新型コロナウイルス・パンデミックによる膨大な死亡者の発生と生活破壊、深刻な経済危機、そして米国の中国包囲網の形成による分断、ウクライナにおける戦乱などこれまで資本主義の存在を可能にしてきた諸条件が大きく崩れようとしている。
 こうしたなか、全世界の支配層は資本主義の延命にやっきとなり、「グレート・リセット」などと断末魔の叫びを上げている。わが国では岸田の「新しい資本主義」がそれである。
 だが、その「新しい資本主義」なるものは、こんにちの危機の真の原因と根本的な解決の道をごまかすだけで、危機はいっそう深刻化するであろう。そして、その危機による犠牲は労働者をはじめとする大多数の国民に強いられようとしているのだ。
 資本主義という「生産・交換の仕方」が限界に達し、資本主義的生産関係が社会的生産諸力の発展の「桎梏(しっこく)」になり、いよいよ「資本主義の命脈が尽きた」時代に入っている。もはや「資本主義の手直し」では事態は変わらない。
 二二春闘を本格的に闘う上で、こうした時代認識を共有するとともに、コロナ禍でいっそう傷ついた連合内外の労働者や、大多数の国民の要求や叫びに耳を傾け、かれらとともに立ち上がることを呼びかける。
 「新しい資本主義」という敵・支配層のスローガンに引き寄せられているようでは、労働運動の存在意義はますます低下するだけである。
 しかも、わが国・支配層は「先送りされてきた積年の構造改革課題に取り組む」として「令和国民会議」(令和臨調)をこの六月に発足させ、連合なども巻き込もうとしている。
 また、ウクライナにおける戦乱が示すように、もはや第二次世界大戦、冷戦後構築された「国際秩序」は本格的に崩壊した。いよいよわが国の進路が問われている。  ウクライナ情勢を利用しながら米バイデン政権は中国への圧迫を強めている。今年はわが国と中国との国交正常化五十周年を迎えるが、岸田政権は「敵基地攻撃能力」を含む新たな安保戦略の策定などを進めている。安倍元首相らに至っては事実上の「核保有」さえ求めている。
 まさに国の進路が問われているこんにち、連合をはじめ、わが国労働運動は二二春闘において、大幅一律賃上げとともに、アジアの平和と共生に向け闘おう。

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