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労働新聞 2021年7月25日号・3面 労働運動

日本コンベヤ労組の闘い
組合つぶしの
株主提案を否決

TCSグループ支配からの
脱却へ大きな一歩

JAM・中井寛哉書記長に聞く

 日本コンベヤ(本社・東京)では二〇一三年にTCSグループが株の約三割を取得して以降、労働組合への支配介入、ユニオンショップ協定の破棄、組合事務所の撤去、単組役員への恫喝など組合弱体化を狙った攻撃が続いてきた。こうした攻撃に対して、JAM日本コンベヤ労組はこの間、JAM本部、JAM大阪の全面的なバックアップの下、指名ストライキなどで闘ってきた。一九年四月には大阪府労働委員会が会社の不当労働行為を認定、救済命令を出すなど闘いは着実に前進してきた。そして、組合の奮闘の甲斐もあって、労使関係が正常化に向かおうとしたかという矢先、TCSグループは六月の株主総会において現経営陣の退陣を求める提案を行った。だがこの提案は葬られた。組合にとって勝利ともいえる今回の出来事は株主などステークホルダー(利害関係)に対して、労働者や労働組合がどう臨むべきなのか教訓になるものと考えられる。こうした課題や二一春闘の成果なども含めてJAMの中井寛哉書記長に聞いた。(文責、見出し・編集部)


株主に対する労働組合のあり方問う
 日本コンベヤでは昨年六月に現在の梶原社長の決断で労働組合との間で和解が成立、労働協約は破棄以前の状態に回復、健全な労使関係を構築していく上での第一歩とした。もともと社長はTCSグループの故高山充伯氏が連れてきた。
 しかし、TCSグループの言うままだったら、いずれ会社はつぶれてしまうと考えたのだろう。特にモノづくりの現場では従業員(労働組合)の協力を得ることが経営の観点から見ても決定的となる。
 TCSからすれば、組合つぶしのために社長を送り込んだわけで、「裏切り者」のレッテルを貼られるかもしれないが、われわれから見れば梶原社長は「正常な労使関係を構築し、会社をより発展させていきたい」という至極真っ当な考えをもった人だ。
 株主総会に向けて、梶原社長から組合に支持・協力を求められ、私たちとしても職場集会などを開き、「共に闘っていこう」と意思統一を図ってきた。
 組合員は株主ではないので株主総会には参加できないが、多くの株主が「あるべき会社の姿」を思い浮べて、懸命な判断をしたのだと思う。この結果は、二〇一四年から始まった七年余りにも及んだ闘いの大きな成果だ。
 現在のTCS社長の高山芳之氏は株主総会で「労働組合と良好な関係を築く」などと発言したようだが、彼は一回も労働組合に対して謝罪したことはなく、労働組合との協議にも応じたことはない。TCSは業界でも組合つぶしで有名であり、腰をすえて企業を育てていくというような姿勢がまったく見られない。
 今回、株主提案を否決したことは、日本コンベヤに対するTCSグループ支配から脱却するための道筋をつけたこととなるが、今なおTCSグループは株の三分の一を保有しており、予断を許さない状況にあることには変わりない。
 明治機械、セコニック、ニッポーという企業では今もなおTCSグループの支配の下にあり、団交拒否、労働協約の一方的な破棄など不誠実な対応が続いている。当該企業のある地方JAMと連携を強化し、健全な労使関係の構築と、安心して働ける職場の実現をめざしていく。
 JAM以外でもこのように大株主が突然あらわれ、組合つぶし、一方的な労働条件切り下げなどを強行する経営者は数多くいると思うし、いつ、どの企業でも今後起こり得ることだろう。経営者はどうしても大株主の意向を無視することはできないので、労働組合として細心の注意を払わないといけない。
 こうした株主含めた企業のあり方について、今後労働組合としてどう臨むべきなのか、ブラック企業に対峙していくための一つのモデルケースとなったし、産業別労働組合として教訓に富んだ経験をしたと思う。

21春闘、続く中小の健闘
 前年は、八九・四%の単組がベア・賃金改善分を要求するなど、積極的な取り組みが目立った。しかし、今年は、ベア・賃金改善分の獲得を見込める単組が中心となって取り組んだことから、七七・六%にとどまった。これらのことから、今年のベア・賃金改善分の平均額は千三百円と前年の千二百六十九円を上回った。また、三百人未満の中小組織では、千三百五十円を獲得し、三百人以上の大手・中堅組織の千百三十円を上回った。中小組織が、大手・中堅組織の獲得額を上回るのは六年連続となっている。なお、個別賃金要求を行う単組(三十歳水準)が年々増えてきたが、前年の三百二十九単組から二十七単組減の三百二単組という結果となった。
夏季一時金は、春の交渉時点では、前年を下回った(二〇年「二・〇二カ月」↓二一年「一・九九カ月」)が、夏の交渉分では、プラス(二〇年「一・九二カ月」↓二一年「二・一二カ月」)に転じるなど、ここへきて企業状況に改善の兆しが見られる。
 製造業でいえば、米国や中国向けの輸出がかなり戻ってきており、輸送用機械、業務用機械など、外需の恩恵を受けているところの生産は戻りつつある。内需頼みの交通運輸、サービス業のところはまだまだ戻っていないのが現状だ。そういう意味では、業種ごとの回復過程に格差が出てきている。

ミャンマー連帯の取り組み、短期間で成果
 JAMはこの間、在日ビルマ市民労働組合(FWUBC)の結成を支援するなどの活動を行ってきた。今年二月に起きたミャンマーでの軍事クーデターの直後にはFWUBCともに緊急記者会見を行い、抗議の意思を表明した。
 以降、JAMは加盟組織へ署名を呼びかけ、千二百九十八単組(約三十七万人分)から集約、「JAMものづくり国会議員懇談会」を通じて外務省に提出した。そして、同懇談会がまとめた「軍事クーデターを非難する決議」を衆参で可決することができた。緊急記者会見からわずか四カ月の取り組みであったが、産別組織として総力を結集して取り組んだことにより、結実した成果だといえる。
 来たる八月に開く第二十三回定期大会では、こうしたさまざまな成果を確認するとともに、組織変革に向けたディスカッション・ペーパーを提起する。新しい時代に向けたJAM運動を推進していきたい。


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