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労働新聞 2021年1月1日号・12面〜13面 労働運動

「時代がわれわれを求めている」ー総反撃へ決意

客観情勢は闘う者に有利

武建一・全日本建設運輸
連帯労働組合関西地区
生コン支部委員長に聞く

思想性あらわれた獄中生活
戦前の共産主義者に思い馳せ

 私は一年九カ月もの間、勾留されました。最初は留置場、次が拘置所です。留置場にいた約十カ月、いろいろな人たちと出会いました。
 出稼ぎに来ていたネパール人の若者が勾留されていましたが、私は、日本語や社会事情・法律をあまり知らない人を勾留すること自体が不当だと思っています。この若者は、宗教上の理由で肉などは食べません。私もいっしょに「肉を除いた食事にしてほしい」と要求しました。要求は通りましたが栄養が足りないので、私が弁護士に頼んでお金を差し入れ、うどんを食べることができました。
 彼は非常に喜んでくれ、「ネパールに帰ったら大学に行き国会議員になる。そのときには堂々と対面できる」と話していました。
 二十歳そこそこで、刺青を入れている子もいました。「強盗未遂」で逮捕されたそうです。私は彼に、南アフリカの故マンデラ大統領の話をしました。「二十数年間も投獄されたけど、その後大統領にまでなった」と言ったら、彼はすごく感動しましてね。取り調べについても「誘導されてやっていないことまで言ったらダメ」と話しました。結局、彼は勾留期限の二十二日間で出ることができ、大変喜んでいました。
 とくにネパール人の若者は、私のことをずっと信頼してくれました。留置官が「労働組合の幹部は、言葉が十分通じなくても人の心をとらえるのか」と言っていましたね。
 勾留中は、昼間の時間をいかに有効に使うか計画しました。
 まず、基礎体力を落とさないため、朝はしっかりと運動する。三度の食事に加えて差し入れも食べると身体を壊すので、小さなアメを一日二つしか食べないと決めました。大げさにいえば、「自己闘争」です。
 公判前日や保釈申請を出したときには、仲間の顔を思い浮かべたりして、興奮してなかなか寝られないのです。睡眠をしっかりとれる精神状態にすることも、意識的にしなければいけません。
 本は八百冊ほど差し入れてもらいました。しっかりと本を読み、感想文に整理すると、昼間の十四時間もあっと言う間に過ぎるのです。
 小林多喜二の「蟹工船」や「党生活者」を読み、戦前の共産主義者が拷問されても、屈せず闘っていたことを思い出したりしました。今の日本共産党とはまったく違いますね。ナチス・ドイツの強制収容所での生活を描いたフランクルの「夜と霧」も読みました。韓国の人たちが軍事政権下でひどい拷問を受けてもなお闘ったという本を読むと、「自分はこの程度のことで気にするのか」と、気持ちをコントロールすることに役立ちました。
 最近の本では、角田光代さんが書いた「源氏物語」です。「風と共に去りぬ」など、普段あまり読めない本も読みました。塩野七生さんの「ギリシャ人の物語」「ローマ人の物語」などは、歴史を描く人の観点が分かり、非常に参考になりました。  米国の黒人解放運動の指導者だったマルコムXは、刑務所で一生懸命勉強したそうです。彼の本も読みましたが、囚われの身であっても、いかに時間を有効に活用するかが、その人の考え方、思想性にあらわれるのではないでしょうか。

限界点超えた資本主義
「情勢負け」するな

 二年ほど支部大会に出席できませんでしたので、組合活動は気になっていました。
 コロナ禍で支配される側は大変苦しい思いをしていますが、支配層も狼狽している。だから、われわれにとっては総反撃の状況である、情勢をそうとらえないといけないと強調したのです。「情勢負け」したらいけません。
 総反撃といったのは、時代がわれわれを求めているという確信からです。正しいことを言っても、時代がそれを求めていないときには運動は発展しません。時代が求めていれば、少数であっても一気に多数に転化します。
 グローバル化した資本主義は、限界点をはるかに超えて、破裂する状態です。そこにおびただしい数の新型コロナウイルス被害者が出て、資本主義そのものが立ち行かない状況が浮き彫りにされてきているわけですよね。  この間、情報技術(IT)や金融技術などがものすごい勢いで発達しましたが、実体経済とはずいぶん違う経済構造がつくられました。そこにコロナ禍です。深刻な危機とは、支配層にとってのものはないでしょうか。
 日本の状況だけを見ていると、「そう簡単に革命は…」と思われるでしょう。しかし、世界全体を見ると、例えばフランスの「黄色いベスト運動」の闘い、韓国でも労働運動を中心とした闘いが続いています。帝国主義の親玉である米国でも、人種差別反対など階級闘争が発展している状況です。世界に目を転じれば、客観情勢はわれわれに有利な条件が生まれているということです。
 われわれはもう一度、歴史から学ぶ必要があると思っています。「そう簡単に戦争なんかできない」と思う人も多いでしょうが、一九二九年の大恐慌を受け、わが国では天皇を頂点にした財閥や大地主が軸になって、ファッショ的政策を戦争に至るまで継続しました。このとき起きたのは、労働組合や共産主義者などへの徹底的な弾圧です。
 戦前・戦中の歴史を紐解くと、日本にもどう猛な資本家と権力が存在していることをしっかりと見抜いておく必要があると思うのですね。
 戦前と違うのは、多くの国で労働運動を中心とした闘いがあり、民族解放運動が前進した結果、途上国・新興国の存在が高まっていることです。こうした国際環境はわれわれにとっては味方ですよね。国内でもまだ少ないとはいえ、闘う人びとが存在しています。
 女性の自殺者が増えていることが報じられていますが、世の中が非常に暮らしにくいことをあらわす現象です。労働組合が、苦しんでいる多くの人たちの心をとらえていないことのあらわれでもあります。社会運動でも個別の課題別の闘いはありますが、一つの固まりとしてつくり上げられれば、苦しんでいる人たちにとって希望になり得ます。

幹部自身がわが身振り返れー「14カ条」を提起
 その上で、われわれの主体的力量を強化するには、自分たちのあり方をもう一回総点検して、時代に合う方向に転換しなければなりません。
 そこで私から、「幹部活動の指針十四項目」(別掲)を改めて提起しました。常識的なことですが、組合員、とくに幹部は常に心がけなければいけないと訴えたところです。
 私が逮捕されて何が起きたかというと、土曜稼動が常態的に行われ、一日平均二万五千円だった日雇い労働者の賃金が一万八千円まで削られました。関生の組合員をクビにすることも随所で起きています。
 一連の労働委員会では、これらを「不当労働行為」と認定しています。経営側が負けた事業所は十カ所ほどあります。そのいちばん敵の弱い「環」に焦点をあて、徹底的に攻勢をかけて結果を出す。そうなれば、その他の事業所も影響を受けるわけです。こうした戦略が、必ずしも徹底されていませんでした。この二年間で、難局を突破する方法についての考えが弱まった面が否めません。
 関生の「魂」の原点を見つめ直し、その通り実践すれば、一気に組合員数も伸び、業界全体の体質改善にもつながります。

仲間たちへもう一度
 余儀なく関生を離れ、散らばっている仲間たちを結集させていくためには、幹部に対する信頼が必要です。信頼がないところに相談も来ませんし情報も入りません。信頼を得るために、「十四項目」を実践しようと呼びかけているのです。
 権力の側につくことで逮捕を免れようという人は、本当にごく一部です。関生を離れることを余儀なくされた仲間の多数は、これまでの運動の歴史、到達点に思いをもちながら日々仕事をしています。「関生にいたからこそ、自分たちの生活や権利が守られていた」「関生に結集したことが誇りだった」と思っている人がほとんどです。
 組合員の「かゆいところに手が届く」のが幹部の仕事なのに、届いていない実際がありました。幹部は悪い習慣に早く気付き、すぐ改善することが非常に大事です。
 「十四項目」の重要性を繰り返すのは、幹部への信頼が確保できれば、その人たちは関生に戻ってくるからです。理論をしっかりさせると同時に、言ったことに責任を持つ、必要な情報を公開するなど、絶えず自己点検すれば、一気に力関係は逆転しますよ。

全国に広がる支援の輪
「不況のときこそチャンス」

 皆さんはじめとするさまざまな人たちの尽力で、「関生を支援する会」が北海道から沖縄まで広がっています。併せて、東京での二つの名誉毀損と国賠裁判について、学者・弁護士さんたちが応援してくれています。  危機の時代、敵・権力は労働組合を好きなようにコントロールすることを狙っています。権力に歯向かう者は徹底的に弾圧するという流れの一環です。そこまで権力が追い詰められているということですよね。
 権力の弾圧は「暴力団対策法」の拡張適用であると同時に、共謀罪の「先取り」というべきメチャクチャなものです。関生の次に弾圧されるのは、あらゆる社会運動でしょう。ニーメラーが言ったように、権力は「気付いたときにはもう遅い」状況を狙っているわけです。民主主義を破壊する始まりの象徴たる事件が関生事件であるという問題意識が多くの人たちの間で共有され、支援の輪が広がっているわけです。
 われわれは、敵の攻撃を「反面教師」として闘います。「やられたら、やり返す」です。 不況というのは闘う者にとってチャンスです。不況は「会社倒産の危機」ですから、労働組合、労働者にとっても「危機」と映ります。資本家の力は本質的には、ゼニ儲(もう)けができるからあるわけです。不景気になれば資本家の力は弱まる。だから、相対的に労働者が力を発揮できるときです。
 コロナ禍で解雇され、企業が閉鎖されるなどの厳しい面があります。別の側面では、闘おうとする者がキチンとした方針を持ち、犠牲を受ける人たちの立場に立って運動することが求められているわけです。敵の攻撃さえも、自分たちの力に変えられるはずです。

「特別」ではない関生の運動
 われわれは、賃金をもらい、それを生活の糧にしている人は「すべて組合員」という考え方です。企業のカベを超え、国籍を問わず、誰でも、一人でも入れる横断的な産業別労働組合です。しかも、組合員と家族の権利だけでなく、労働者階級全体の利益を守るという使命も持っています。だから、政治闘争も闘います。大衆性と階級性を同時に追求しなければなりません。これが労働組合として必要な性格ですよね。
 生コン業界では五十五年ほど前には正月の三日間した休みがなかったのですが、今では年間百五十日の休日が確保されています。日々雇用の場合でも、この三年ほど、一日五百円ずつの賃上げを実現しています。それから、労働者を雇用する場合は、組合員を優先的に雇わなければならない「優先雇用協定」をつくり、会社がつぶれても、この協定を利用して人員補充を労働組合主導で行っていく制度もつくりました。
 全国の生コン業界のなかで、こうした条件のところは他にありません。全産業で見ても、少ないわけです。  「関生型」の運動は、トラックやバス、タクシーなどでも可能だと思います。中小企業の協同組合は全国に五万ほどあります。こうした協同組合を労働組合が主導して組織、連携すれば、大企業の収奪と闘うことは可能です。
 メチャクチャな雇用不安と低賃金の構造を変えるのは、やはり労働組合の役割です。資本主義の枠内であっても、多くの労働者、国民を結集させるには、労働組合が重要な役割を果たせるはずです。そして、人民が主人公となる社会構造をつくり上げていく、この主力を担うのも労働組合です。その労働組合が政治思想もなく、選挙に熱中し、「誰が通った」などというレベルではダメです。

業界正常化へ踏み出す
 中小企業といえども資本家ですから、「二面性」があります。一つは労働者を搾取することで存在する性格。もう一つは大企業から収奪される存在です。不当労働行為や人権侵害などを行えば、われわれは断固として闘う、これが基本原則です。一方、大企業による中小企業への収奪に対しては共に闘います。「一面闘争、一面共闘」という理論です。
 セメントメーカーや広域協組はこの弾圧以前から、「ヤメ検」弁護士を二十人以上も準備して機会を伺っていました。そして、中小企業を分断させたのです。われわれの事務所に出入りする事業者をチェックしてどう喝する。関生と関係する事業者との取引も抑圧する。また、「在特会」などのレイシスト集団を雇い入れ、行動部隊を組織する。関生つぶしに十億円の大金を用意・使用している。
 大企業の収奪と闘う政策と方針をもち、労働者と協力・協調できる協同組合であればよいが、変質し、労働組合つぶし、あるいは独禁法などの法令違反、さらに特定の者の利益のための組織になったときは、協同組合といえども徹底的に叩かなければいけません。建交労などは、たとえ変質しようが「協同組合」という理由で闘いません。
 しかも今回の場合、元暴力団員二人が事実上、広域協組を牛耳っています。彼らは法律を無視し、自分の利権しか考えず、関生に打撃を与えようとしています。事業者が異議を言えば、どう喝します。これに立ち向かう勇気がある人が、残念ながら広域協組にはいません。
 ですから、真の意味での協同組合を新たにつくろうと取り組みを強めています。二〇一八年十月に「アシスト阪神生コンクリート協同組合」ができました。今の広域協組のやり方に不満を持つ人たちが結集し、そこを新しい切り口にして誤った支配構造を変えていこうということです。われわれの運動に賛同し、広域協組から脱退して合流しようという人たちが出てきています。また仕事も増えています。

日本の階級政党は労働党
青年に関生の闘い、広げたい

 労働党の皆さんには、日ごろから大変お世話になっています。一連の弾圧についても「労働新聞」などで詳しく取り上げていただき感謝しています。
 大隈議長から直接話を聞く機会もあり、運動のあり方、情勢に対する観点などで大きなヒントを与えてもらい、運動に役立っています。
 やはり、日本の階級政党は労働党ですよね。もはや日本共産党には階級政党という意識はないのではないでしょうか。階級的政党がしっかりと方針を打ち立て、実行に移すことができれば、今は多数でないにしろ、情勢が必ず労働党を求めるのではないかと思いますね。
 青年についていえば、私が逮捕される前年、一七年に「学働館」で「関生の運動に学ぶ」という研修会を開催し、全国から百人近くの学生や青年が集まりました。
 集まった若者たちは日本の多くの労働組合が期待されていないなか、関生の運動に魅力を感じ、肌で学んでいきたいという希望をもっていました。やはり若い人は、頼れる存在があれば、そこに結集しようという熱い思いを持っています。やる気をもって立ち上がれば、一点の花火が荒野を焼き尽くす、そういう状況がつくり出せると思います。
 労働党の皆さんが、こうした若者を大量に組織することを希望しています。
 「自分は若者ではない」と思っている人も、その人なりの経験などを蓄積していますから、これを惜しむことなく若い人たちに発信してほしいですね。私も気持ちは青春ですよ。皆さんとともに、希望にあふれた新年にしたいと思います。

<幹部活動の指針14項目>
(1)嘘、偽りなく、人を騙さない。人として誠実であること。自分の弱みを正当化しようとして相手の弱みに合わそうとするもたれ合いをなくす。
(2)情報は、闘いを鼓舞する。情報を仲間に提供し、敵には情報を漏らさない。
(3)敵対的矛盾は闘いによって解決し、内部的対立矛盾は話し合いで解決する。
(4)約束に責任を持ち、時間は守る。整理整頓を率先して行う。
(5)その場限りの発言で責任を負わないことは、仲間の不信を買い、組織の地位を下げる。発信と行動には責任を持つ。問題を先送りせず、優先順位を決め、迅速に問題を解決する。
(6)幹部は、仲間を思いやることを大切にすると同時に「御用聞き」ではない。組織運営の原則を堅持し、人気取りの役職ではない。方針の実践は、時に嫌なことも言い、互いに高める努力をする。
(7)資本と権力には、妥協なく闘う勇気を持つ。仲間同士の対立矛盾は、話し合いで解決する調整能力が求められている。
(8)功績を挙げても名誉を求めない。成果は仲間から先に得るものである観点を貫く。
(9)敗北しても責任を他に転嫁しない。言い訳をせず自己批判の精神を持つことにより自分を高める挑戦心を持つ。
(10)幹部である誇りを持ち、恥の心を大切にする。
(11)自主性・主体性を確立し、指示待ちスタイルではなく、想像力と創造力を発揮して仲間の模範となる。
(12)自己犠牲をいとわず役職に専念する。やがて威厳が生まれる。
(13)絶えず労働者階級の立場に立ち、独学、本を読む、討論をするなど学習し、得られた知識を組織活動として実践する。月々、年間の目標を明確にし、掲げた目標を達成する。
(14)「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」。情報分析能力を高め、先を見通した方針を実践する、絶えず行動の先頭に立ち、「耳は大きく、口は小さく」を作風とする。


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