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労働新聞 2020年11月15日号・4面 労働運動

悪化する雇用情勢

 雇用情勢が大幅に悪化している。厚生労働省によると新型コロナウイルスの感染拡大に関連したと思われる解雇や雇い止め十一月六日時点で初めて七万人を超えた。九月二十三日に六万人を超えてから、わずか一カ月半で一万人も増えた。これは厚労省が全国の労働局やハローワークを通じて集計したものであり、実際の数はもっと多いのは確実だ。
 直近で内訳を分析できる十月三十日時点(六万九千百三十人)では、製造業が一万二千九百七十九人で最も多く、飲食業が一万四百四十五人、小売業が九千三百七十八人で続く。非正規雇用の働き手が三万三千六百九十二人を占めた。
 また、この間企業による人員削減・リストラ策も続々と発表されている(別掲)。この間、比較的非正規労働者を中心とした人員削減が正社員にまで及び始めている。
 こうした全国紙に掲載される大企業を中心とした人員削減だけでなく、地方ではいっそう人員削減や工場閉鎖などの動きが続いている。
 青森県では光学機器メーカーのタムロン(本社・埼玉県)が県内三工場の正社員(四十五歳以上)、準社員らを対象に計二百人の希望退職者を募集すると発表した。工場の一つがある弘前市では市長がハローワークや県と連携を取りながら対策本部を設置する意向を明らかにしている。
 岡山県では今後雇用調整を行う事業者が県内千二百五十六事業所、香川県でも三百六十五事業所に上っている。
 群馬県では主力産業の自動車関連各社がコロナ危機の影響による世界的な需要低迷や生産停止で、軒並み大幅な赤字となった。SUBARU(スバル、太田市)は三月以降に米国工場や群馬製作所の操業を一時停止した。このスバルを主な取引先にしているミツバは七月、子会社を含めて国内約五百人の希望退職者を募集すると発表した。新潟工場(南魚沼市)と子会社の落合製作所(群馬県富岡市)の二工場を閉鎖することを発表している。スバルが本社を置く太田市を中心とする県東部では雇用破壊と相まって地域経済が危機的状況にある。
 この状況下にも関わらず雇用調整助成金の特例措置も現時点では十二月末に打ち切られることになっている。そして、肝心の新型コロナウイルスの感染拡大も一日あたりの感染者数が八月以来の千五百人超えとなっており、「第三波」が現実化しており、いっそう雇用情勢が悪化する可能性が大きい。
 まさにわが国の雇用情勢は危機的状況であり、抜本的な支援策が求められている。しかし、この大事な時期に「自助」を第一に掲げる菅政権は国内企業の九割以上、雇用の七割を占める中小企業について「再編」を打ち出し、その淘汰を叫ぶデービッド・アトキンソン氏を政権の「成長戦略会議」のメンバーに迎え入れた。また、小泉政権をはじめ歴代政権に影響力を及ぼし、派遣法改悪等々、わが国における雇用破壊の戦犯=竹中平蔵氏も同会議のメンバーに収まった。
 こうしたなか、連合の神津会長は十一日、菅首相と会談、雇用調整助成金を来年一月以降も継続することなどを求めたとされている。
 雇用調整助成金の期間延長や最賃の引き上げなどを政府に求めることは当然としても、これだけではまったく迫力を欠くと言わざるを得ない。
 コロナ禍の下、大規模な大衆行動が困難であることを差し引いても、デモや集会など労働組合、労働者の力を結集した取り組みこそ求められているのではないか。(Q)


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