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労働新聞 2020年1月1日号・12面〜13面 労働運動

人びとを鼓舞し、元気に闘う

資本主義の根幹揺るがす確信

全日本建設運輸連帯労働組合
関西地区生コン支部
書記長・武 洋一

 敵・権力による全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部に対するさまざまな弾圧が続いている。一昨年八月に不当にも逮捕された武建一委員長をはじめとする仲間が未だに勾留されている。だが、当該の関生支部はひるむことなく意気軒昂(けんこう)に闘いを展開している。そして、関生の闘いに対する全国の支援は単に権力に対する怒りだけでなく、関生の結成とそれ以降の闘いとそれを導く考え方への理解と支持へと発展している。この広がりは、敵・権力を追い詰めている。安倍政権への怒りが高まるなか、関生の闘いはこうした人びとを逆に激励している。危機の時代、安倍政権は闘いが広がることを恐れており、、この闘いがわが国労働運動全体に波及すればひとたまりもない。改めて「労働新聞」読者に関生の闘いに対する支援を呼びかける。この間の闘いと勝利に向けた展望などについて関生支部の武洋一書記長に聞いた。(文責・編集部)


獄中でも闘う姿勢貫く武委員長
 武委員長は、自分の体調管理に気をつけながら、出獄後を見据えて次の方針や政策をどう打ち出すか、絶えず本を読んでいると思います。体もいたって丈夫だし、頭もハッキリしていますから心配ありません。逆に、闘いのエネルギーを貯めていますよ。
 ただ、関生支部がいくら委員長の経験や成果を受け継いでいるといっても、委員長の「眼力」は必要です。
 組合員はもとより、業者の皆さんからも「委員長は今の状況をどう考え、どう打開しようと思っているのか聞きたい」という声もあります。業者のなかには、口には出せないけれども、「関生と共同したい」という話もあります。
 同じように囚われの身にある外国人のなかには、宗教上の理由から拘置所が出す食事が食べられない人もいます。委員長はこうした人たちの状況を知り、改善を求め、変えさせました。面会した弁護士も「自分が捕まり苦労しているのに、仲間のことまで目を配れるのは普通ではない」と言っていました。
 委員長は、闘う姿勢をずっと貫いているんです。

自滅必至の広域協組「4人組」
 関生支部に対する弾圧はいつも、中小企業運動(協同組合化)が拡大した時期と重なります。
 一九九〇年代初頭、生コン業界はバブル経済のなかで安売り競争に入り、倒産・廃業が相次ぎました。危機的状況の下、業界から私たちに「業界再建に力を貸してほしい」という要望があり、九四年に大阪府下を網羅する大阪広域協組ができました。それが、名古屋や岡山にも波及しました。紆余曲折がありながら、二〇一五年には未加盟業者も含む大同団結が実現、ほぼ一〇〇%の大阪・兵庫の生コン業者が大阪広域協組に加盟するまでに至りました。
 権力は、こうした運動をつぶしたい。一九八〇年代、二〇〇五年にも弾圧があり、業者をつぶしました。でも、関生支部はつぶれなかった。二〜三年すると協同組合運動は復活しました。資本・権力なりに研究したのでしょう。先に関生支部をつぶそうということです。今回、そこに現在の広域協組の「四人組」と言われる一部執行部が乗ったという構図でしょうか。
 一連の弾圧で、関生支部はいくらか物量的な打撃を受けています。私たちの組織は、一九六五年に大阪の五つの生コン工場の百八十人でスタートしました。現在でも、その倍以上の仲間ががんばっています。それを思えば、苦境もいずれ乗り越えられます。
 「四人組」が私たちに牙を向いてきたきっかけは、一六年十二月に決めた「六項目の提言」です。この「提言」では過去に行った労働組合攻撃について反省し改めることや、協同組合の理事がその役職を利用して個社や私的利益の誘導などを慎むよう求めています。私たち関生支部をはじめ、全港湾大阪支部、交通労連生コン産労、建交労関西支部、UA関西セメント労組、近畿圧送労組でつくる関西生コン関連労働組合連合会が広域協組に求めたものです。いずれも当然の提言ですが、広域協組からすれば、自分が取ってきた利権を「奪われる」というイメージをもったのでしょう。
 広域協組は一七年春闘で約束した運賃引き上げの約束を反故(ほご)にし、組合の切り崩しにかかったわけです。労組連合会は運賃引き上げの実現に向けて、いったんは十二月に無期限ストの実施を決めました。ところが、建交労、UA関西セメント労組、生コン産労は広域協組にストへの不参加を表明したのです。それでも関生支部は、近畿一円で五日間のストを決行しました。
 これに対して広域協組は、関生支部の分会があったり、協力関係にある生コン業者、輸送会社を排除しました。年明けの一八年一月には「威力業務妨害・組織犯罪撲滅対策本部」なるものを設置、関生支部への攻撃を本格化させたのです。併せて、差別・排外主義者を引き入れたのです。
 そして、排除された輸送会社の代わりに「四人組」が経営する輸送会社が入るなど、利権の構図がつくられました。今は業界でそのことに文句を言うと、排除されるのでなかなか口に出せません。しかし、「四人組」の利権構図に対する不満や反発は日増しに高まっています。また、「四人組」の間でも利権争いの対立・矛盾があります。必ず中から崩壊しますよ。そして、私たちはその外側からこの利権構図をぶち壊します。

敵の弱点突く関生の運動
 現在、近畿では生コン価格は一リューベ(一立方メートル)あたり二万千八百円です。しかし、ゼネコンなどはこの価格を維持できないでしょう。大阪では二五年の万博開催や夢洲(ゆめしま)を中心に、カジノを含む統合リゾート(IR)開発など建設ラッシュが当面は続くでしょう。ゼネコンなどは広域協組を通さない形で、建設現場に生コンプラントをつくるでしょう。かつて帝国ホテル大阪を建設する際にも、三菱はプラントをつくりました。だから、今は関生つぶしで重宝がられている「四人組」も、いずれゼネコンに捨てられる運命でしょう。ゼネコンの連中は高みの見物です。
 資本主義社会は、企業間の競争が大前提です。その競争を抑制する協同組合運動はつぶしたいんですよ。だから、安倍政権は農協などもつぶしにかかっています。中小企業や農民が大同団結して、上にモノ申すことを恐れていますから。
 関生支部は、産業別労働組合です。その機能を発揮して集団交渉を重視してきました。生コンの値段が上がったのであれば、それを等しく業界、そこで働く労働者に還元する仕組みです。利益を誰かが独り占めしたら、そこに差ができてまた競争になる。一九八〇年代に日経連の大槻文平会長(故人)は、競争を抑制する運動を「資本主義の根幹を揺るがす」と言って恐れたわけです。

当たり前の組合活動に対する弾圧
 一連の弾圧で特徴的なのは、労働組合が要求すれば「強要」、賃上げを勝ち取ればそれも「恐喝」ということでしょう。正当な組合活動さえ弾圧の口実とされている点です。憲法二十八条には組合活動の権利の保障をうたっているにも関わらずです。
 弾圧は、安倍政権が成立させた共謀罪の適用さえも見据えたものである。同時に、関生支部だけでなく、すべての労働運動、市民運動に対して向けられたものです。
 またもう一つは私たちが行っている建設現場でのコンプライアンス(法令順守)を求める活動さえも「威力業務妨害」ということで弾圧の口実とされています。
 九五年一月に発生した阪神淡路大震災では、高速道路や新幹線の架橋などが倒壊しました。私たちはこの原因に、業界の過当競争による品質不良や手抜き工事にあることを明らかにしました。セメントに規定よりも多く水を加えた「シャブコン」も横行していました。その教訓から、私たちはコンプライアンス活動を積極的に取り組んできました。安倍政権は「国土強靭(きょうじん)化」などと言っていますが、今のままでは強靱な国土建設はできません。

共感広がる関生の闘い
 多くの労働組合は、「関生は特異」という目で見ていたと思います。確かに、私たちの闘いは激しいかもしれません。それは、敵の攻撃が激しいからです。私たちは当たり前の組合運動を実践しているだけです。職場に労働組合をつくり、未組織も含めて賃金や労働条件の改善に取り組む。いざとなればストライキを闘う。過労死が社会問題になる中、やっぱり労働者がキチンとモノがいえる状況が必要なはずです。経営側に対してまともな要求もせず、ストも打てないようでは労働運動はますますダメになります。
 「怪我の功名」と言っては語弊があるかもしれませんが、一連の弾圧を通じて、関生支部の闘いや運動に対する理解や共感の広がりも実感しているところです。
 今年四月にはルポライターの鎌田慧さんやフォーラム平和・人権・環境の呼びかけで「関西生コンを支援する会」が発足、その後、静岡や愛知、愛媛など四国で「支援する会」がつくられました。こうした動きはどんどん全国に広がっていくでしょう。
 安倍政権の下で安保法制や共謀罪などが成立し、沖縄・辺野古への新基地建設や原発再稼動の動きが強まっているなか、当たり前の組合活動が弾圧されていることへの危機感のあらわれでもあると思います。
 振り返れば、関生支部は八〇年代から始まった数度の弾圧を、自力で跳ね返してきました。この自負が若干強すぎた部分や、さまざまな人たちに理解されるような環境をつくってこなかった弱点があったのかもしれません。全国を行脚して、理解を求めることをしなければと思っているところです。

業界の未来見据えて
 関生支部が主張していることは本当に単純なんです。労働組合が「賃上げしろ」と言ったら、中小企業の経営者は、「運賃や価格が低いから払えない」と言います。なら、どうするか。「運賃を上げよう」「生コン価格を上げよう」と、ゼネコンなどの背景資本と共に闘いましょう。当然、労働者を搾取する中小の経営者とはとことん闘います。同時に、中小企業は大企業に収奪されている面もありますから、大企業による収奪に対しては共に闘います。「一面闘争・一面共闘」という考え方です。中小企業同士で争うエネルギーを大企業に向ければ、大きな力になります。その結果、必要な運賃や料金を手にできれば、経営も安定するし、労働者にも還元されます。そうした中小企業のおかれた現状を理解したからこそ、協同組合運動がここまで発展したのです。
 こうした考え方は、どの産業でも適用できるとも思っています。例えば、大阪ではトラック業界で労使懇話会がつくられました。中小企業が生きる道は、そこにあると思っています。
 また、生コン業界の未来を見据えれば、今のようなセメントと水、砂や砂利を混ぜるだけの製品では生き残ることは難しいでしょう。
 関生支部は業界の皆さんと共同して「グリーンコンクリート研究センター」をつくり、社会基盤整備とそれに資する環境にも配慮した研究を行っています。例えば「ポーラスコンクリート」の開発です。通常のコンクリートとは違い、透水性・通気性が優れています。これまで、雨が降れば、泥を含んだ水が河川に流れて汚染していましたが、「ポーラスコンクリート」は水を通しますが不純物を通さないので、川を汚しません。まだ製造コストの面などで全面的に普及されているわけではありませんが、韓国では護岸ブロックに使われ始めています。日本でも本格的な研究・開発が必要です。
業界は次世代に向けたタネをまかなければいけない時代なのに、それを食べてしまっている状況です。「今は利益が出ているからいい」という発想はダメです。環境にやさしく、未来につながる製品開発をしなければいけません。

希望指し示す闘い今年も
 労働党、「労働新聞」の皆さんが内外情勢などについて常に分析と発信を続けていますが、もっと強めてほしいですね。人びとの目を開かせるような呼びかけを期待しています。私たちが社会のあり方を論じるときにポイントにしていることは、人びとを鼓舞することです。「闘えば、こんな情勢になる」という希望です。その点で、共産党はまったく違いますね。かれらが言うのは、「敵の力が強いから」という言い訳ばかりです。
 関生支部には、業界正常化に向けた期待の声が集まっています。「四人組」の自滅は時間の問題ですが、それを待たず、私たちの側から彼らの支配をぶち破ります。武委員長をはじめとする仲間の早期奪還、完全勝利に向けて、昨年以上に元気に闘います。「労働新聞」読者の皆さんのいっそうのご支援をお願いします。


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