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労働新聞 2019年9月15日号・4面 労働運動

「職場を守る」
職場守る不屈の闘いに学ぶ


 JAM大阪グンゼSOZ労組 
水口委員長(3)

 前号まで、会社(グンゼ)からの再三の合理化攻撃に対する闘いの経過を聞いた。二〇一一年に二週間のストライキをはじめとする大きな闘いがあり、さらに組合独自の「再建計画」を立案、経営側にのませて合理化攻撃を撤回させた。昨年は、会社の組合つぶしと徹底して闘って勝利した。


ーー一連の闘いで気をつけてきたことや教訓を教えてください。

 対等の労使関係は憲法で認められている。労働組合法、労働基準法や「労働協約」をフルに使って集団的労使関係をどう構築していくか。これができていない組合がなんと多いことか。
 会社に言われたから簡単に「三六協定」を結ぶというようなことを皆やっているのではないか。会社が残業やらないと仕事ができんというのなら、人員を増やすことをまず考えるべきだと打ち返すべきだ。組合が会社の同胞になっている。「協力関係」ならよいが、「協調関係」になってしまっている。「協調」は向こうになびくことだ。
 闘争をやっているときに大事なのは、フルに頭を回転させて知恵を絞ることと、絶対崩れないために流れを止めないことだと思う。活動の流れを止めてしまうとダメなんで、次に何をするというシナリオを、ちゃんと執行部はつくって、活動している組合員に違和感を持たせないようにやり続けることです。
 それから執行部が怒りに任せてやると争点が分からなくなってしまう。組合員の恨みの矛先をどこにもっていくか。感情が出るのは組合員の方。執行部はまず客観的事実をそろえて、相手が何を虎視眈々と狙っているか、あぶり出すことやと。

ーー労働組合として財務分析をする際に肝心なのは何ですか。

 財務分析の一つは過去からの歴史を客観的にみる、すう勢分析をすることは必要だと。それはそうですがそこにとどまってはダメで、その数字は現場の何が悪さをしているか、何がいいことになっているのかまでやらないと使えない。
 たとえば在庫、棚卸資産などにあらわれる数字が、具体的などこの何をあらわしているかということにたどりつかないと現場では火がつかないんですよ。

ーー労働運動全体の課題についてどう思われますか?

 JAM内の他の単組にもいくことがあるが、執行部だけでなく全組合員とフリースタイルで討議しています。労働三権、団体交渉、賃金はどうやって決めるべきかという話をしています。今はボトムアップが重要だ。身近なことから入るようなことを工夫している。例えば労働者同士でもいろいろ思っている。若手と年長者ではお互いにある。たとえば、若い人は先輩を敬う、先輩は後輩を育むと。これを続けているうちに組合が強まると。
 リンゴの箱の話もよくします。売る時には一番上にうまそうなリンゴを載せてこれを箱ごと買えというよねと。いちばん上は熟練工だと。いちばん下に、青いリンゴ入っているんちゃうと言われたときに赤いリンゴに免じて青い奴も買ってくれというでしょ。腐った部分があればそれ削るよと。それはこっちがやるから箱ごと買えと。そして、削られた奴はなんで削られたか考えろと、青いリンゴはどうやってうまいリンゴになるか考えろと、赤いリンゴは熟れればいずれ腐るんだからどう青いリンゴをうまいリンゴにするかを考えろと。お互いが協力関係にあるから箱ごと売り上げが上がるんやと。単組にいくとこの話をしています。
 もっと原点回帰して説明をしていくべきだと思っています。
 それと、「明日はわが身」と真剣に考えられるか、考えられないかで活動や運動は変わってくる。視点を変えるべきだ。最近よく若い人たちに法律についても考えてみいと話している。弱者と強者がいて、今の法律はそれがありきで作ったにすぎない。下の者が上の者にとって代わったらなんでいけないのか。その法律を変える力を持っているのは国民やと。
 自ら立ち向かうことで労働組合の大衆的運動を強め、推進したいと思っています。(おわり)


<あとがき>
 JAM大阪の「日本コンベア労組 不当労働行為救済命令報告集会(四月)」で、水口委員長の発言をきき、この労組の闘いをはじめて知った。水口氏は一年間、事務所に泊まり込んで闘いを指導したという。闘いのなかで考え抜いた発言は説得力があり、真剣そのものだった。
 二〇一三年度の大会報告には、一九八五年のプラザ合意以降の政治・経済の経過と会社の業績の関係や、小泉以降の政権、政策の暴露、地に足をつけた「苦闘の歴史」や教訓が率直に書かれている。
 厳しい状況下で、財務諸表や市場調査、自らの闘いの総括など「具体的状況の具体的分析」から闘いを始めている。それを基礎にした二〇一〇年の闘いは、経営側の後ろにつくのではなく、自ら会社の再建にいどみ、勝利した。職場での「会社の改善意見箱」と集約、組合員の集団討議などの行動提起、労働組合の団結を一貫して追求する姿勢も大事だと思った。
 この組合への一回目の合理化は、米国IT(情報技術)バブル崩壊、小泉、竹中の構造改革が進められたとき、二回目はリーマン・ショックの不況下である。
 こんにち世界同時不況、急速に進む技術革新。さらに危機が深まっている。さらなる労働者への攻撃は不可避、現場での闘いを基礎から強化することが求められている。労働運動の反転攻勢のために示唆(しさ)に富む経験だと思う。  (関西支局・長岡親生) 


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