ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

労働新聞 2018年7月5日号・4面 労働運動

18春闘/
連合に大衆行動の強化を望む


地場中小の実態踏まえた総括を

自治労全国一般評議会 
亀崎 安弘事務局長

 一八春闘は大きなヤマ場を超え、産別を中心に総括議論が進んでいる。連合によると賃上げ実績は二・〇八%で、一五年の水準には及ばない低水準なものであった。一方、大企業は過去最高益をあげ、最新の統計によると全企業の利益剰余金(内部留保)は四百二十六兆円で、昨年比三十六兆円も増えている。こうしたなか、中小での春闘について、自治労全国一般評議会の亀崎安弘事務局長に聞いた。(文責・編集部)


依然として格差 是正が大きな課題
 一八春闘の全体的な総括については八月に開く総会まで待たなくてはいけないが、中間総括は六月十六日に委員長・書記長会議でまとめたものがあるので、それに基づいて話したい。
 会議では、トヨタが賃上げ金額を非公表としたことについて「いかがなものか」「納得がいかない」と問題視する発言が出された。春闘のリード役を果たす大手のこうした姿勢は、後に続く中小に少なからず影響を与えるものとなった。
 全国一般が六月十二日現在で集約した五百三十九分会のうち、賃金引き上げを要求したのは四百六十七分会(「人勧準拠」「賃上げ要求していないが、交渉ありの職場含む)で、全体の八六・六%。妥結した二百四十一分会の回答額は単純平均で三千四百三十八円、対前年比で二百八十円増となった。また妥結を含む回答があった三百十三分会の単純平均は三千六百八十六円で、対前年比で五百三十円増、加重平均では四千五十五円、対前年比で三百十三円増という数字だ。
 過去の集計では、集計を重ねる度に平均額がダウンしていく傾向もあったが、一八春闘では回答水準は単純・加重平均共に下げ止まり、妥結・回答も昨年実績を額で上回った。粘り強い取り組みで底上げが図られたと評価している。
 連合は一八春闘について、「中小組合における賃上げ率が大手組合を上回っている」と評価している。大手では定昇制度があり、その上に賃金改善分が乗る形になっている。だが、私たち中小では、定昇制度があるところは少なく、率で上回ったとしても、基本ベースが低いので、額に直したらまだまだ大手の方が上回っているのが実際だ。大手との格差が縮小したとはいえないというのが、私たちの率直な実感だ。
 地方連合会が取り組む地域ミニマムの資料を読んでも、地域間や大手と中小間の格差は依然として大きいと書いてあり、中小企業の底上げをはかるには、自らの賃金の把握や賃金制度や定期昇給制度の整備、地場の賃金水準を把握したなかでの交渉力を強化するなどし、大手組合を上回る闘いが必要だ。
 この間の春闘では全国一般の回答水準は連合集計でいうところの「九十九人以下」とほぼ同じだった。一七春闘では全国一般は連合集計とその差が開いたが、一八春闘では再び連合の回答水準に近づいている(表)。
 また、一口に「中小」といっても、トヨタなど大手の下請け、サプライチェーンといわれる職場もあるが、私たちが組織しているような地場中小ではそうした関係は少なく、「大手追従・準拠からの脱却」といわれても、実感があまりない。こうした地場中小では、まだまだ賃上げが十分に勝ち取れないのが実態だ。日本全体で見れば、サプライチェーンに含まれず、また組織化もわずかな地場中小が圧倒的であり、春闘を総括する場合に、こうした点について視点を当てていかなくてはいけないと思っている。

18春闘での特徴と組織化の課題
 私たちのところでも運輸や介護職場などの業種では人手不足もあって比較的高い回答額を引き出している。ある運輸職場では四万円アップを要求して、勝ち取ったところもある。
 また、中小企業の場合は同族経営が多く、後継者が見つからないということで、事業閉鎖に追い込まれた職場も出てきている。福島にある車両関係のゴム会社でも後継者が見当たらず、私たちのところに連絡がきたときには、すでに会社側が閉鎖に向けた手続きをしてしまい、組合も廃業を認めてしまっていた。このような後継者不足による廃業が相次いでおり、対策の必要性を感じている。
 また、今年四月から始まった無期転換ルール(労働契約法十八条に基づき、有期労働契約が反復更新されて通算五年を超えたときは労働者の申し込みにより、無期労働契約に転換するルール)をめぐる課題にも取り組んでいる。長崎県立大シーボルト校では非正規の組合員二人を無期転換ルールの適用を逃れるために三月末で雇い止めする方針だったが、組合の取り組みで撤回を勝ち取るなどの成果もあった。
 組織拡大も大きな課題だ。組合員の減少で専従者を置けなくなり、今までの運動を維持できない状況も生まれている。
 一八春闘においては、賃金だけでなく労働条件などの調査を五年ぶりに行った。非正規の組織化については、職場に非正規の仲間がいるが、六〇%ぐらいの職場で組織化に踏み出せていないということが分かった。正規で働いている自分たちの賃金や労働条件の改善に向けた取り組みも十分とはいえないなか、非正規の課題になかなか手が回らないという声もあった。私たちとしても、非正規の仲間の処遇改善が全体の底上げにつながると強調しているが、地方労組のオルグも十分に職場に足を踏み込めていない実態も明らかとなった。
 こうした状況を踏まえ、すべての職場にオルグを働きかけることを確認している。
 とくに中小の場合は、専従者ができるだけ個々の職場に行かなければいけないと思う。入って実態をつかみ、そこでオルグをしていく。それが全国一般の運動の基本だ。単組を「自立」させることも必要だが、やはりオルグをかけて、政治的課題も含めて、本部としての考えをしっかりと伝えていくことが大事だ。常に情勢は変わっており、職場と密接につながらなければいけない。
 また、今年二月を中心に全国一斉労働相談に取り組んだ。相談件数は多いが、まだまだ組織化にはなかなかつながっていない。それでもある県ではSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を駆使して組織化につなげるなど成果も出ており、引き続いて重視していきたい。

悪質経営との闘い
 会議ではいくつかの地方労組から悪質な経営者などとの闘いについて報告が行われたので、いくつか紹介したい。
 大阪府の堺市を中心にスーパーなどを展開するサンプラザでは一四年二月に組合を結成して以降、営業手当の減額や不当配転などの攻撃が行われ、府労委へ何本も申し立てを行い、立て続けで勝利した。
 組合つぶしを狙った攻撃に屈することなく、粘り強い闘いが続いている。
 また長野県松本市を中心に四つある自動車学校の信州ジャパン自動車学校における闘いを全体で支えようと決めている。同校は地元のアルピコグループ傘下だったが、ホテル経営の失敗の穴埋めとして、岡山県を中心に全国で自動車学校を展開する勝英(SDS)グループに買収された。オーナーは備前市長を務めた人物だ。
 私たちは買収に反対して闘ったが、経営側に有利な最高裁の判例もあって、買収されてしまった。それでも、アルピコ時代に持っていた労働協約や労働条件はそのまま移行し、しばらくは何も問題は起きなかった。
 ところが一五春闘で、会社側は「買収費用がかかった」という口実で一時金について超低額回答を行い、労働条件の一方的改悪を提案、不誠実団交を繰り返してきた。この攻撃に対して、一七年六月には県労委に不当労働行為を申し立てるなどの闘いを継続してきた。攻撃は、今年二月ぐらいから一気に強まった。オーナーが突然岡山から出てきて、組合員を呼び出し、「組合を抜けるか、勝英の地域社員になるか」と強引に迫り、組合役員を狙い撃ちにした異動を強行するなど不当労働行為を続け、組合のある職場は四校から一校となり、約六十人いた組合員もいまでは約三分の一まで減ってしまった。同グループはさらに全国の自動車学校を買収しようとしているが、買収先の職場で同様な組合つぶしが広がることにもつながってしまう。こうした攻撃を跳ね返すために支援共闘会議を立ち上げ、オーナーがいる岡山にも闘いを広げるなど、地方を越えた闘いを準備している。

労働者代表制に強い危惧
 連合は一九八九年の結成から二〇一九年十一月には三十周年を迎えるが、神津会長は二〇年までに「一千万万連合」の達成に向け呼びかけ、「労働者(従業員)代表制について、政策制度の取り組みの正面に据えていく必要がある」との問題意識を六月七日に開催した第七十七回中央委員会で示している。
 これは「労働組合不要論につながりかねない」との声も出されている。そのため私たちは危機感をもっている。中小の小さな職場の場合は、労働者制によって、労働組合が要らないということにつながってしまう。今言われている労働者代表制は使用者の責任で労働者代表を選び、運営にかかる費用も会社が支出するというもので、当然経営者の意向が強く反映するものになってしまう。これで労使対等な関係が築けるとも思えず、職場で問題が起きたときに会社側に強く声を上げることができるか疑問だ。かつてこの問題は連合内でも議論がされ、全国一般としては反対を表明してきたことも踏まえて動向を注視していかなくてはと思っている。
 連合労働運動がもっと存在感を示すためには、労働者の雇用や人権に関わる課題について、産別を超えて、皆でがんばることが必要である。先ほど紹介したような組合つぶしも続いている。また安倍政権による「働き方改革一括法案」のなかに高度プロフェッショナル制度が盛り込まれており、これについては撤回をさせていくなど大衆行動の強化も迫られている。最賃引き上げの課題もある。こうした課題にキチンと旗を掲げて闘うことが、ナショナルセンターとしての連合の役割だと強く感じている。

(注)
2018春闘 連合規模99人以下4190円 全国一般4055円 差▲135円
2017春闘 連合規模99人以下3987円 全国一般3747円 差▲240円
2016春闘 連合規模99人以下3749円 全国一般3781円 差  32円


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2018