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労働新聞 2018年5月25日号・4面 労働運動

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昨秋、非正規の組合結成 
初の春闘で賃上げ獲得


組合、職場の仲間も
変われると確信

市毛 照之・仮名

 財界への「賃上げ要請」など安倍政権による春闘解体攻撃が続くなか、一八春闘は中小労組の厳しい交渉が続いている。連合集計では三百人未満の中小でも賃上げ傾向が続いているとされているが、その要因として慢性的な人手不足などが指摘されており、持続的な流れとは言い難い。こうしたなか、一八春闘で非正規労働者の職場で組合を結成し、初の春闘で待望の賃上げを勝ち取った成果について報告が寄せられた。賃上げなど成果を勝ち取るためには、職場に依拠した闘いこそ必要だということを示している。以下、掲載する。


 オレたちの職場は高層ビルが乱立する中でビル管理全般を請負う大手の子会社である。その業務は多種に及び、主に警備や清掃、保守、機器管理などがあり、大手企業グループ傘下に入いる。グループ企業には外食産業もあり、労働集約型の職場のため国内の人手不足を補うためにベトナムなどアジア諸国に人事担当が出向き、現地で面接して労働者を確保する事に拍車がかかり、オレたちのビルメン部門の職場にも外国籍の労働者たちが増えてきている。
 そんな現場の労働者たちは一年から半年契約の非正規労働者たちばかりだ。蟻のように地下深い事務所に集められ管理される職場では、組合を結成する前は大手元請の天下り管理職がかっ歩して威張り散らすパワハラとセクハラし放題の職場だった。
 人手不足のため体調不良でも休めず公休日の出勤も重なる過重労働が負担となった挙句、病を隠して働かざるを得なかった仲間が相次ぎ亡くなった。人らしく働ける職場にしたいと強い思いで集まった仲間たちと一年余の準備をして、昨年秋に労働組合を結成した。この間、組合が本社と呼ぶ管理部門の取締役とホットラインができたことは、現場でやりたい放題してきた末端管理職の脅威となり、目に見えてパワハラ等が激減したのが組合を結成した最初の成果だった。
 初めての一八春闘で、組合結成前に「オレたちの賃金は絶対に上がらない」と公然と言われていた日給(最低賃金×八時間)をアップさせることができた。人手不足のため求人の日給を少しでも高くしたいとの思惑もあり、会社は地域手当や精勤手当を本給の日給に繰り入れる回答を行ってきたが、オレたちはゴマ化されなかった。労働契約法第十八条により四月一日付けの雇用契約更新時から無期転換申込権を行使した仲間たちを中心に、出勤時や昼休みのビラ配布を行った。管理職の眼が怖くてビラを受け取れない労働者が多い中にも「期待しているよ」と耳元でささやく仲間もいた。さらに、上部労組の支援を頼み元請本社の社前集会を会社に通告した。
 そして臨んだ団体交渉の冒頭で会社は、日給の五十円アップと精勤手当のみの繰入れを回答し、組合は元請本社前の社前行動を中止して妥結した。初めての賃上げは日給七百六十五円アップとなった。春闘という言葉はオレたちには縁がないと思っていたが、今は違う。
 組合を結成した直後に元請本社の労働組合にあいさつに行き、「来てもらっても何もできない」と追い返された時には、本当に驚いてしまった。しかし、組合結成の準備で学んだ労働運動の歴史の中で三池闘争のDVDを見た時に、すごい闘いをした三池労組もかつては「眠れる獅子」とか「眠れる豚」とか言われたときがあったことを聞いた。
 本社組合もまだ歩みだしたばかりのオレたちの組合も、そして職場の仲間たちも今のままでなく変わることができると確信を持てた初めての春闘だった。


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