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労働新聞 2017年12月15日号・4面 労働運動

「次世代」の体制づくりへチャレンジ

改めて「農協革新」の意義を発信

全国農団労/大谷篤史書記長

 全国農林漁業団体職員労働組合連合(全国農団労)は今年七月に第三十回定期大会を東京で開催した。安倍政権による農業破壊と農協解体攻撃に反対するとともに、協同組合にふさわしい農協のあり方などについて議論が行われた。議論となった焦点の課題などについて本大会で新たに選出された大谷篤史書記長に聞いた。(文責・編集部)


定期大会開催、
安倍政権の「農協解体」攻撃に抗する
 今回の定期大会では比較的、組織・財政検討委員会の方針を受けて、今後の組織のあり方や体制について議論が集中した。というのは、これまで組合三役を担っていた世代からの「次の世代」にバトンタッチしていく形と、その体制をどう確立していくか、そしてそれを裏付けるための財政の確立についてメインで議論されたと思っている。
 そして新たな方針として、とくに安倍政権による農協解体攻撃というのがこの間ずっと続いているなかで、今年「農業競争力強化プログラム」関連法が可決され、今後その具体策が出てくることに対し、改めて農協で働く私たちの立場から「農協革新」を対置し、新自由主義的な流れに、私たちがどう抗していくかというスタンスを確立した。
 「農協革新」というスローガンはもともと、単に経営のことは経営者に任せればいいということではなく、私たちの賃金や労働条件をキチンと確保して、働きやすい職場にするためには農協における事業も含めた改革を求める立場から打ち出された。農協の事業については改革が必要というのは一定の事実だ。
 私たちがこの間とくに強調してきたのは、農産物の販売についての見直しだ。これまではただ市場に卸せばいいという具合だった。その点では工夫がなかったと思う。今は消費者が「安全・安心」を最重視しており、付加価値をつけて消費者にアピールして買ってもらう工夫が必要だ。「直販」というのも一つの手段だ。こうした販売戦略のあり方というのを私たちから提案できないかと考えている。そして、付加価値をつけることで、それが農家の手取りにも還元される。市場には「安定供給」という命題もあるので、高く売る努力というのもすべきだろう。私たちも「営農販売担当者交流会」を開くなど、こうしたことをテーマに討議をしている。
 組織拡大についてだが、この間、石川県で未加盟だった一単組が加わった。現在、農協の広域・圏域合併の動きが進んでおり、今後は一農協(一JA)となるところでの組織化が課題になるだろう。
 また職場では人材の流失が大きな問題となっている。とくにJA共済のノルマ推進が職員に重い負担となってのしかかっている。以前は「農協職員一斉推進」が主流だったが、今は全国的にはLA(ライフアドバイザー、共済の専門職)が回って契約を取る形にシフトしている。「一斉推進」では、共済部門以外の職員もそれぞれ別の業務を抱えながら推進に従事するため、かなりの負担となっている。人員が減っているなかでの負担の増加で、それを苦に辞めたり、メンタル面での不安を訴えるケースもある。そこで私たちも「共済事業改革」というものに取り組み始めて、「数字ありき」ではなくて、職員の負担をどう下げていくか提言している。
 この間の広域合併に伴い業務を統一化していくなかで、だんだんと人員が減っている。また、パートなど非正規に置き換わった部分もある。合併直後はあからさまリストラ策などは出ていないが、合併して労働条件などの統一整備が進んだ後に人員削減が課題として浮上する可能性もある。
 いずれにしても協同組合という基軸を据えた「農協革新」という発想が改めて重要だと再確認したい。 

毎年「青年交流集会」開く
社会との「回路」の役割担う
 青年の職員は、良くも悪くも「農協に染まっていない」。そこでお互い話をして、自分たちの置かれている現状を確認して、要求などを発信していくことが大事なんだというふうに思えるかどうかが組合運動にとって大きい。ここで染まって「言ってもムダだ」となると組合活動にもつながっていかない。今後の農協を担っていく青年が働き続けられるような職場づくりは大きな課題で、実際若年層の中途退職の問題にも直面している農協は多い。
 参加者からの反応として大きいのは、「他の県や農協の話を聞くのは初めて」という声だ。とくに共済の推進とか長時間労働に対する不満などはどこの職場からも共通して出てくる。青年部組織がないところの組合員は青年部組織がある職場の話を聞いて、「ああ、こうやれるんだ」と刺激も受ける。
 もう一つ、この青年交流集会はレクリエーション的な意味合いもある。例えば春闘討論集会などに参加するのは役員クラスばかりになりがちだが、こうした取り組みは敷居も低いと受け止められ、一般組合員も参加しやすい。一般の組合員がいろいろな接点をもてることは大事だと思う。また、二〇一一年の「3・11」や昨年の熊本大震災に際して、ボランティア活動にも取り組んだが、「少しでも役に立ちたい」という青年組合員の思いは強く、こうした活動も青年組合員と社会との接点をつなぐ「回路」として重要だと感じている。
 安倍政権の下、労組や農協が「既得権益の集団」と攻撃をされるなかで、こうした取り組みを通じて、青年組合が自分たちの本当の役割というものを改めて確認する場にもなっている。

「合意ありき」のTPP
米資本の思惑背景に
 今回の環太平洋経済連携協定(TPP)11の「大筋合意」は日本が完全に先走って、まさに「合意ありきの合意」だ。
 日本以外の国々かなり国益を主張した。カナダが今回反発したのもそのあらわれだ。おそらく米国の「ジャパン・ハンドラー」と言われている「親日派」「知日派」の人たちがトランプ政権の登場で米国政府を代表して動くことが難しくなり、代わりに安倍政権にTPPを先走りさせている部分があると思う。安倍首相は「米国抜きのTPPでいい」というスタンスではなく、米国に向けて「あなたのために合意した。早く復帰してほしい」ということだだろう。米国が抜ける以前のTPPに戻したい米国の資本の論理がものすごく働いているのではないかと見ている。
 米国抜きのTPPより先行して日米FTAなど結ばれてしまうと、TPPの意義もなくなってしまう。このTPPをつぶしたくないという思いもあって、米国の現政権もFTAについてはこの前の日米首脳会談でも突っ込めなかったのではないか。いずれにしてもわが国の農業分野で影響がでるのは間違いない。
 また問題なのは安倍政権がほとんど今回のTPP11についてまともな説明をしていないことだ。現在、国会も開かれているが、ほとんど議論もされていない。

流れに逆行する安倍政権
世界の動きに展望感じる
 安倍政権のこんにちまでの動きを見ると、とにかく「戦争できる体制づくり」に突き進んでいるということに尽きる。いざ、朝鮮半島で戦争が始まり、戦禍が日本に及べば、私たちの産業や生活はもはや成り立たなくなる。こうした危険なことが進んでいるにも関わらず、TPPもそうだが、国会でのまともな議論がないまま既成事実が積み上げられている。こんな政権をこれ以上許してはダメだ。とくに朝鮮半島をめぐる情勢ではトランプ米政権の動きもあり、大変不安だ。先の総選挙でもそうだが、安倍政権があれだけ朝鮮危機をあおっているのはこれを利用しようという思惑だろう。
 私たちはこれまで連合や平和フォーラムの呼びかけに応え、沖縄での平和行動や広島での反核行動に取り組んできたが、さらに強化していきたい。
 内外情勢ともに複雑で、残念だがなかなか明るい材料があるとはいえないが、世界に視野を転じると、これまで権勢を振るっていた米国の一極支配がそれほど強くなく、かなり崩れてきていると感じている。「米国第一主義」のトランプ政権の登場もそのあらわれではないか。他力本願ではないが、そのなかで米国などの多国籍大企業の影響力が狭まるスキを突いた形での運動の広がりに希望をもっている。中東でも米国の政策は失敗して、もはや米国の手が届かなくなっている。しかし、安倍政権はこうした世界的な変動とはまったく逆により米国にベッタリなのは危険であり、労働運動は抗していかなくてはいけない。



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