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労働新聞 2017年11月25日号・4面 労働運動

神奈川/組合つぶしの
攻撃と闘う相模鉄道労組

転籍強要の不当労働行為許すな

 労使合意も労働委員会の勧告も無視し、「約束を守れ」と訴えるバス運転手らを職場から追い出し、これまでの仕事とは全く異なる業務を強制する相鉄ホールディングス(相鉄HD)に対する闘いが、山場を迎えている。私鉄総連に加盟する神奈川・相鉄労働組合は、人権を侵害する反社会的な労務政策に断固反対し、「仲間を直ちにバス職場に戻し、ブラック企業化を許さない」と団結して闘いを堅持、県私鉄の支援も得て闘を継続している。十一月九日開かれた連合神奈川大会には、闘いの報告がなされ、他産別でも、近く出されるであろう労働委員会の命令に向け、「不当労働行為救済命令」を出すよう求める団体署名を積極的に取り組むことが確認され、さらに支援の輪が広がっている。(文責・編集部)


運転士の誇り奪う転籍提案
 一九九〇年代から私鉄各社では、儲(もう)からないバス部門を本体から切り離し「分社化」し、収益を確保するための攻撃が進められてきた。
 相鉄グループの中核企業であり、横浜市を中心とする神奈川東部を走る相模鉄道でも二〇〇〇年にバス事業が分社化、綾瀬営業所から相鉄バスが発足、相模鉄道と相鉄バスの二社体制でバス事業が行われてきた。一〇年には旧相模鉄道(SHD)に残っていたバス事業も分社化、相鉄バスに一社化された。その際、「SHD在籍社員は原則として相鉄バスに在籍出向とし、労働条件の差異について補填を実施する」との労使合意が交わされたが、会社側は約束を守ろうとせず、相鉄バスへの出向を打ち切ろうとしている。労働組合は従来通りの出向継続を求めたが、会社側は応じないばかりか、社員への説明会を強行、「転籍に応じなければどんな仕事をさせるか分からない」などと言い、組合員の動揺を誘いながら転籍に応じるよう求めている。
 そして、会社側は組合との交渉中にも関わらず、一五年九月には転籍提案となる「バス事業支出削減策」を強行実施した。相鉄バスで働いていたSHDからの出向者二百七人のうち、九十七人が相鉄バスに転籍、前後して転籍者を中心に労組を脱退する者も出てきた。しかし、最終的には出向者七十三人が「提案拒否」の意を示し、相鉄バスへの出向継続を強く求めた。
 こうした抵抗に対し、会社側は一六年四月に提案を拒否した者のうち六人にSHDへの復職を発令、そして、バスの運転や整備、運行の仕事があるにも関わらず、長年の経験によるスキルをまったく無視した業務に就かせるとした。その業務とはグループ会社経営のスーパーマーケットでの仕事やマンション・戸建ての広告ポスティングなどまったくこれまでの業務とは関係ないものばかりだ。もちろん仕事自体に問題がある訳ではないし、みんな誇りをもって働いていることに異論はない。しかし、いじめのごとく異業種に強制配転されることは、まさにバス運転士としての誇りを奪うものだ。会社側はこの発令について「相鉄バスとSHDの賃金格差から生じる出向補填費の削減」を理由にしているが、SHDへの復職でも出向補填費は依然として支出され、従来のキャリアとまったく違う職場に配置されれば、バス職場と同様の労働力の提供はできない。しかも、他のバス事業では離職率の高さなどから慢性的な人員不足が続いている。こうしたなかで、ベテラン運転士をバス職場から引き剥がし、復職で他の業務に就かせる合理的な理由は見当たらない。まさに組合つぶしを目的とした提案にほかならない。相鉄はその後も転籍に応じなかったことを理由に次々と組合員をバスの仕事から外し、一七年一〇月一六日をもって七十三人全員を復職させている。 

県労委勧告さえ無視の会社
 この間、組合はストライキ権を背景にしながら労使関係での解決をめざし交渉を続けてきた。しかし、会社側は交渉には応じるものの、提案内容を一ミリも変えようとしない態度に終始してきた。こうした状況を打開すべく、組合は神奈川県労働委員会に「不当労働行為の救済」を申し立てた。そして一五年八月には県労働委員会の公益、使用者、労働者の三者委員が「当分の間、(出向継続を求める者の)復職を行わないよう」、相鉄に要望を出し、不当労働行為の審査と並行して和解の可能性について労働委員会、使用者委員、労働者委員立ち合いの協議が進められた。だが、この最中にも会社側はこれをも無視し、次々と組合員に復職を命じている。こうした会社側の姿勢に対し、県労働委員会は一六年四月には、「労使協議を誠実に行うこと」「四月に復職を命じた者をバス運転業務に戻すこと」「その他の者についても相鉄バスへの出向を継続すること」などを盛り込んだ「実効確保の措置勧告」(正式勧告)を行うが、相鉄はこれを無視するなど、この間十七回にもわたって勧告を無視し続けてきている。
 組合も一六年六月には相鉄の命じる復職義務が存在しないことの確認などを求め、SHDならびに同社取締役社長を横浜地裁に提訴するなど法廷の場での闘いを行っている。また本社前での座り込み行動も展開、勝利的解決をめざし、組合挙げて闘いを継続している。また、県労働委員会に向けて、速やかに不当労働行為救済命令を出すよう求める団体署名も開始した。

<相鉄労組ホームページ> この問題での経過などが掲載。


組合員の団結の力を実感、他産別の支援に感謝
高橋廣康・相模鉄道労働組合委員長の談

 これまで相模鉄道では労使間でさまざまな問題を解決してきた。今回の「転籍強要」は、従来の労使関係にはなかったことで、まさに組合つぶしが最大目的の相鉄ホールディングス、グループ全体の攻撃と見ている。
 この闘いは、もう三年に及ぶ長い闘いとなっているが、転職を強要された組合員の皆さんをはじめとして、本当によくがんばってくれている。会社の「提案」に応じなかった労働者は、必ずしも第一線の組合活動家ではなかった。それでもがんばり続けてるのはやはり組合への強い思いがあるからだと思う。本社前での座り込みなどでお互い顔を見せ合い、慣れない職場での苦労話などをしながら気持ちを奮い立たせている。すでに分社化攻撃が強行された企業の労働者から話を聞く機会を設けた。「とにかく黙ってハンコを押せ」という会社側のひどい扱いについてトツトツと告発してくれ、「分社化・転籍でいいことは一つもなかった」と言っていた。この人の話を聞いて、「最後まで闘い抜くべきだ」との思いを強くして、闘いを継続している。改めて、労働者の力を実感している。
 他の企業でも同様に分社化などの攻撃がかけられているだけに、絶対に妥協できない闘いだ。
 この間、連合神奈川の支援もあって、地域、ヨコの共闘に広がりが出てきた。連合内の労組からも「あまりに会社はひどすぎる」との声が上がっている。またグループ会社の労組も団体署名に取り組んでくれた。これには、労働組合の連帯を実感させられている。



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