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労働新聞 2017年10月25日号・4面 労働運動

国労/
改めて多数派への一歩踏み直す

組織拡大へ「目の色」変える


菊池忠志・国労委員長

 国鉄労働組合(国労)は七月二十七、二十八日の両日、第八十六回定期大会を千葉市で開催した。大会ではJRおよびグループ関連会社の労働者の生活向上や権利獲得に向けた取り組み、JR発足三十年を迎えたなかでの安全・安定輸送の確立・維持に向けた運動などについて討議が行われ、新たな方針が決定された。また組織拡大への挑戦、安倍政権との闘いなどについても積極的な意見が出され、方針に反映された。こうした点について今大会で新たに中央本部委員長に選出された菊池忠志氏に聞いた。(文責・編集部)


 国労ではこの間、組織のあり方などについて激しい議論もあった。その上でどう団結を回復・強化していくかが問われていた。そういう意味では今回の大会でその課題というのは一定程度、図ることができたとの思いをもっている。
 そして、私たちが課題としている組織拡大にどう向かうのかという決意を組合員全体で一つにできた大会でもあったと私自身は思っている。国労も組織自体は小さくなったが、組織、運動とも改めて多数派に向けての一歩を踏み直した大会だったと思っている。
 国労組合員の平均年齢層も高くなっている。これまでの活動家はさまざまな経験をもって運動は進めてきたが、社会情勢等取り巻く環境が大きく変わっていくなかでやはり経験だけでは職場での労働運動の広がりに結び付いていない状況も確かにある。そうしたなかで国労運動の再生をどう図っていくのかが本当に問われている。その意味ではまず組織拡大に向けて「役員が目の色変えるぞ」と私は大会で強く訴えたつもりだ。 

18春闘でグループ全体の底上げを
 この四年ほど「官製春闘」と言われている状況がある。この背景というのは「アベノミクス」の破たんを覆い隠すために、「個人消費を伸ばすには賃上げしなければ」と言わざるを得ないことのあらわれだ。しかしその一方で大企業を中心に巨額な内部留保を膨らませ、法人税の優遇措置をどんどん進めてきた。この点を考えると一八春闘も「官製春闘」と言われるようなことが大きな状況の変化をつくり出せるとは思えない。私たちはあくまで「政治の側からの賃上げ」に期待するのではなく、労働組合としてキチンと要求して今まで以上の交渉を行い、その上に立ってあらゆる戦術を組んでいくことが基本だろう。JR全体においてはどうしても多数派組合の声が大きくなるのだが、それでも私たちが生活をする上で、必要な賃金をどう確保するのか課題であり、同時に関連会社の人たち含めたグループ全体の賃上げ、労働条件の底上げをどう図っていくのかという課題もまた課せられているのではないかと思っている。

仲間へ確実に国労の声が届くように
 組織拡大についていえば、停滞した現状というのを打ち破るためにエリア、地本含めた体制づくりを図りたい。中央本部としては、新たに中央執行委員会のなかで兼務していた組織部長の任務を専属させ、組織強化・拡大の取り組みにテコ入れしようと決めて動き出している。とくに関連会社の人たちの不満は大きく、そうした声をキチンと取り上げ、確実にそういう人たちも組織化することが大事だ。
 私たちが職場に入ってきたころは労働運動、労働組合というのが職場や地域で当たり前にあった。そういう環境のなかで労働運動に入ったのが私たちの世代だ。しかし、今では職場での労組活動が制限されている状況もある。青年の組織化は率直に言って簡単ではないが、あきらめずに声をかけ続けることが大事だろうと思う。私たちも職場の先輩などから働きかけがあって、労働者としての世界観などをもつことができたし、それによって世の中を見る目が変わってきた。

周りの支えあって、がんばれた
 私は茨城県生まれで、高校時代にやっていた野球を続けたくて国鉄に入った。当時、鉄道管理局があってそこには野球部があった。入社時最初は水郡線(現在水戸駅〜安積永盛駅までと、上菅谷駅まで分岐して走る)というローカル線の駅勤務。当時は別の職場とのいわば「連合分会」でそこの青年部活動をやっていた。それから車掌になり、そこから支部や地本の活動にかかわり始めた。
 そして、地本青年部の書記長も務めていたときに分割・民営化の動きが重なって、私は「人材活用センター」行きとなった。そのうち、人活センターが廃止になって、水戸支社のいちばん端の駅に配転、そこから分会書記長、地方労事務局長、地本執行委員、書記長、委員長を経て本部に来た。当時、人活センター行きを発令されたときは親に言うべきかどうか悩んだが、いずれ分かることだから言わなくてはと伝えたら親は何も言わずに「そうか」というだけだった。ここまでやってこれたのは、やはり、意地もあったし、「自分は何も悪いことをしていないという思い」もあった。また当時は地域で青年運動が活発だったから、自治労の仲間が人活センターにも何回も足を運んでくれて応援してくれた。十二月の草も生えていないようなところで草むしりもやらされたが、それでも周りが支えてくれてがんばり抜くことができた。

ローカル線廃止問題/根底には分割・民営化
 分割・民営化に伴う規制緩和で、地方ローカル線については、その企業の一方的な届け出で廃線ができるというシステムになってしまった。これが大きな問題だ。国鉄時代には全国的なネットワークで大都市の収益を地方に還元させ、平準化させてきた状況があったが、それを文字通り分割することで地方では路線の経営維持が困難になってしまった。しかし、こうなることは当時から分かっていたことだ。これが分割・民営化から三十年経つなかで、一気に噴出した。今、JR北海道のように企業が投げ出したような恰好になっているが、この問題は経営だけの問題にとどまらない。根底にあるのは分割・民営化でつくられてしまった構造問題だ。
 これからもおそらく地方から都市への一極集中が進んでいくなか、ますます地方は地域の高齢化に伴って過疎化する。そのなかで生活の足をどう守るべきなのかという課題がいよいよ迫られている。過疎化が進むなか、大量人員を運ぶ鉄道でいいのかという議論もあるだろう。しかし、基本的な考え方として鉄道というネットワークをどう維持していくのかというのが大きな課題であるということは間違いない。そのことを前提にしつつ、地方交通体系を維持し、生活弱者を中心とした利用者の足をどのように守っていくのかという課題をキチンと国が方向性を示すべきだ。国労として交通政策について毎年各省庁への要請などを行っているが、さらに強化をしようと決めている。とくに北海道では地域の議員や学者、有識者含めてローカル線の維持について考える組織がつくられている。本部としてもバックアップしながら、そこで得た提言や経験を同じような課題に直面する地方で生かせるよう力を尽くしたい。

安倍政権の「戦争への道」許さぬ
 安倍政権がこの間やってきたことを見ると、「経済重視」「デフレ脱却」をうたい文句にしながらも国民生活はよくなっておらず、「アベノミクス」は破綻した。しかし、その一方で安保法制や特定秘密保護法、共謀罪等々、確実に戦争への道を続けてきた。そしてここにきて、憲法改悪を具体的に打ち出してきた。総選挙次第ではこの動きに拍車がかかるだろう。こうした課題に労働運動全体がどう臨んでいくのか本格的に問われるだろう。国労はこの間、安倍政権のこうした動きに反対して闘ってきたが、総選挙の結果いかんに関わらず、この姿勢を崩すわけにはいかない。



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