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労働新聞 2017年10月15日号・4面 労働運動

産別協定順守へ「追認闘争」

急がれる闘う労働運動の再建

全港湾・松本 耕三委員長

 全日本港湾労働組合(全港湾)は九月六日、第八十八回定期大会を開催した。大会では労働者の働く権利の確立と生活向上、格差是正、そして産別労働運動の強化などについて討議、次年度方針を決定した。一七春闘では港湾労組の連合組織である全国港湾労働組合連合会(全国港湾)に結集しながら、ストライキなどを背景にいくつかの成果を勝ち取った。また、米トランプ政権とそれに追随するわが国安倍政権の朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)敵視政策にも反対する姿勢を鮮明にしている。こうした点について松本耕三・全港湾委員長に聞いた。(文責・編集部)


米国がつくった朝鮮半島の危機
 大会に向けて、全国オルグをしていくなかで、多くの組合員から「Jアラート」の騒ぎに対して不安の声を聞いた。朝鮮の核・ミサイル問題を口実としたこのから騒ぎは戦争に行く危険な兆候だと思う。この問題で日本のマスコミは完全に安倍政権の言うがままだ。この朝鮮をめぐる問題の本質というのは米国が冷戦終結以降、「ならず者国家」としてイラクやリビア、イラン、そして朝鮮を名指しして、軍需産業の意向も受けながら敵をつくっていることだ。そして日本の安倍政権もこうした米国に追随して朝鮮半島の危機がつくられているということを考えなくてはいけない。中国やロシア、そして韓国も話し合いを追求しているにもかかわらずだ。この間、米国は「ならず者」国家と決めつけたイラクやリビアなどに攻め込んで政権を転覆させた。こうやってまた朝鮮を追い込もうとしている。リビアはかつてアフリカのなかで最も豊かで美しい街並みが広がっていた国だが米国の攻撃とその後の混乱で今なお悲劇が続いている。こうした事態を私たちが住む東アジアで起こさせるわけにはいかない。
 戦争とは政治対立の究極の形であり、それは何らかの経済的理由がなければ起こらない。米国がトランプ政権の下、経済や政治的にも衰退するなかでこういう危機をつくりたがっているというのを非常に感じる。経済危機を戦争に変えるという昔からの手法は変わっていない。総選挙となり、安倍政権が朝鮮半島の危機をあおっているなか、こうした平和の課題にもっと労働運動がしっかり取り組まないといけないと訴えたい。 

労使全体に対する攻撃に職場から反撃
 一七春闘では昨年から業界側から「産別賃金を決めることは、公正取引委員会の関係で独禁法に触れる可能性がある」との声が上がり、産別最賃の具体的回答をめぐって中央団交でも交渉が進まなかった。しかし、昨年十一月に業界側と交わした「産別協定を順守する」などとした協定をもとに、各社に最低賃金引き上げを「追認」させる闘いをやって個別労使間でそれを認めさせることができたが、産別協定として締結することができなかった。
 この独禁法問題の背景は単に「法律違反」「業界の産別否定」ということにとどまらないと思う。いわば「出る杭」が打たれる状況だと感じている。つまり、二〇一二年から一五年くらいの間に多くの産業で「定昇割れ」「ベアゼロ」がずっと続くなか、全国港湾を中心とした港湾春闘では最賃を三年間で大幅に上げた。最賃というのは「純ベア」であり、これに定期昇給がプラスされ、賃上げとなるわけで、月額賃上げは大変な金額を勝ち取っている格好だ。これに港湾運送業界だけでなく、大手船主が加盟する日本経団連、そして国も黙っているとは思えない。業界が労働組合を抑えられないのなら、その業界全体もたたこうということだろう。これは労使双方に対する攻撃ととらえている。
 この最低賃金引き上げは、港湾労働者にとって決して十分なものではないと考えているが、労働運動全体の低迷の影響は大きい。港湾だけが突出した形になっていることが、このような問題を起こす一つの要因だと思う。いずれにしても、闘う労働運動の再建ということが重要課題である。

物流・トラック産業の危機は組織化のチャンス
 全港湾組織はここ数年約一万人前後で推移しているが、伸びていかないのは問題だと思っている。全港湾は港湾産別という面もあるが、もう一つは中小一般の労働者の組織化を標ぼうしてきた。しかし、トラック運転手など民間の一般労働者の組織化の面では十分な結果は出せていない。組織化でがんばったところもあるが、組織全体の「うねり」という面ではまだ十分ではない。
 世界全体を見渡すと、港湾でも自動化の流れが強まっている。AI(人工知能)や、IoT(モノのインターネット)によって、港湾の施設などいたるところに位置情報などすべてのデータを入れることで、自動化された運搬車両は何センチ単位まで位置を把握できる。その結果、コンテナ作業でも自動でコンテナ船から降ろして、運ぶのも正確に保管場所まで運ぶことができてしまう。船上作業も風速や船の位置を計測してクレーンが荷役できるようになる。
 海に囲まれた日本はたくさん港があり、一つひとつの規模が小さいからまだ自動化の流れは及んでいないが、技術的やコスト面でクリアできれば、これから相当問題になるだろう。また、トラック運転手不足も大きな問題だ。今でも人手不足や過当競争で物流・トラックの産業の危機が叫ばれ、国交省などもトラック産業の保護に乗り出そうとしている。こうした産業の保護は同時に「組合つぶしより人を大事に雇う方が先」ということで、組織労働者に対する攻撃が弱くなるということだということだ。ここに組織化のチャンスがあると見ている。

青年の組織化で手応え
 労働運動全体の課題は青年の組織化だ。大変な苦労をしてでも組織化し、鍛えることが基本だろう。私たち全港湾、そして全日建連帯労組、全国一般全国協の三単産で青年を中心に毎年五月の沖縄での平和行進に参加しているが、この成果を基礎に「脱原発フクシマ連帯キャラバン行動」を展開、これが三単産から大きく広がり、今年から平和フォーラムが全面的に支援することになり、自治労、教組、国労まで広がった。今年は三月十八日の脱原発福島県民大会への参加からスタートして、二十日に東京で開かれた「さよなら原発一千万人アクション」集会に至るまで各地でキャラバンで訴え、結構手応えがあった。「原発をなくそう」という全国民的なテーマが青年運動とうまく結合した。比較的「左」と言われる組合幹部が平然と「若い人たちは意識が低い」と言うことには違和感がある。フィールドワークなど行動を通じて青年は変わる。たとえば、全港湾の東北だけで青年部組合員が約六百人いるが、かれらは本当にまじめだ。「意識が低い」ということはない。
 「若者の保守化」とも言われるが、朝から晩までマスコミが政権や大企業の意を受けたような報道を流せば影響受けないはずがない。そして、それは労働運動全体が青年に関与できていないことの証明でもある。



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