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労働新聞 2017年9月15日号・4面 労働運動

自治労第90回定期大会を傍聴して

存在意義の発揮求められた大会

相楽五郎

 自治労第九十回定期大会が八月二十八日から三十日の三日間にわたり新潟市で開催された(前号既報)。今大会は安倍政権の下、「地方財政と公共サービスを取り巻く情勢は厳しさを増す」(二〇一八〜一九運動方針)状況のなかで、経済財政諮問会議などが社会保障とともに地方財政のいっそうの圧縮に踏み込もうという攻撃に対し、どのように対峙(たいじ)していくかが問われるべき大会であった。
 また、この間安倍政権が進めてきた「アベノミクス」が破たん、国民諸階層の生活環境がいっそう悪化したことを背景に、「一強」と言われた安倍政権は支持率を低下させ、先の都議選で自民党は大敗北を喫した。この安倍政権に対し、自治労としていかに有効な闘いを展開していくのかもまた問われた。
 併せて、連合・神津指導部に対する姿勢も問われた大会であった。自治労大会を前後して、連合・神津指導部は安倍政権が進める「働き方改革」にまさに唱和する形で安倍政権が今秋の臨時国会で成立をもくろむ「高度プロフェショナル制度」(高プロ制)を含む「労働基準法改悪案」を事実上容認する態度を示した。当然だが連合内の多くの産別や地方連合会の幹部から一般の組合員に至るまで批判が集中、事実上神津指導部は「撤回」に追い込まれた。
 世界が、歴史的な転換期に突入したなか、米国では「米国第一」を掲げたトランプ政権が登場、「国際協調」もままならず、世界はますます「戦争を含む乱世」の様相を深めている。
 おりしも、この時期朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の核・ミサイル開発をめぐり、米国とそれに追随するわが国安倍政権らによる対朝鮮圧殺策動がエスカレートし、朝鮮半島を中心にわが国含む北東アジアは戦争の危機にある。自治労はわが国労働運動の中心として、日米の朝鮮圧殺策動に反対し、単なる「護憲」の枠にとどまらず、「戦争協力の安倍政権打倒」「朝鮮への圧迫許すな」と闘いを巻き起こす準備が求められている。
 いよいよ先進的活動家の任務は、ますます重大である。 

方針に厳しい指摘/闘いの成果報告も
 この間、自治労に結集する地方公務員の賃金・労働条件は正規、臨時・非常勤、一般職、現業職問わず常に揺さぶられてきた。一四年の「給与制度の総合的見直し」をはじめ、各自治体では等級別基準職務表の条例化、級別・職制制度の職員数の公表、運用への総務省による指導強化による昇給の制限・抑制などの動きが強まってきた。また地域手当の拡大による地域間格差も拡大する傾向にある。国家公務員の退職制度見直しが地公にも波及しようとしている。
 こうした状況について、「昇給制度で賃金格差が広がっている」「退職手当引き下げに対し署名活動を行い、知事と面会、引き下げ阻止へ申し入れた。本部として全国統一闘争体制が必要でないか。明確かつ具体的な方針を示してほしい」(岩手)との声が相次いだ。また、本部方針案についても、「退職手当見直しについて、(本部方針案は)消極的方針だ。最低でも維持の立場で臨むべき。断固反対の強い立場で交渉を」(岐阜)、「労働組合として『ダメなものはダメ』『譲れないものは譲れない』という一貫した姿勢を貫き、その信念を組合員に伝えるべき。退職見直しについて(本部方針案に)『反対』という言葉が見当たらない。退職手当は私たちの賃金そのもの。『下げます』と言われて反対しない労働組合がどこにあるのか」(秋田)と厳しい指摘が上がった。
 併せて、「重要課題である統一闘争の再構築をどう進めるのか。総括に基づかない方針では運動の前進につながらない」(宮城)、「産別統一闘争をしっかりと組んでいくこと、勤務・労働条件、賃金闘争をしっかりと闘うことが組合員の心をつかむことだ」(大分)、「地公賃金闘争の強化を。人事院や総務省に対し強い姿勢を」(沖縄)、「全国展開の大衆行動を」(新潟)と産別統一闘争と具体的な大衆行動を強く望む声も相次いだ。大阪の代議員は「公共サービスに責任取るべき為政者は巧みに公務員バッシングで批判の矛先を向けながら、人勧無視や給与カットを繰り返している。しかし、批判されるべきは、政府・自民党と維新の会だ」(大阪)と発言した。
 また、こんにち安倍政権が経済財政諮問会議などをテコに「インセンティブ改革」「トップランナー方式」などの「公共サービスの産業化」を推し進めていることについて、地域医療を守る立場からの発言が山口、滋賀などから発言があった。新潟県の代議員は、指定管理による地域基幹病院の再編に関し、旧財団職員の賃金と一時金引き上げを勝ち取った闘いについて報告した。公営企業の民間委託・譲渡に対する取り組みについても神奈川や現業評議会などから報告が行われ、長崎からは佐世保市営バスが民間バス会社と再編するにあたって、当局に対し、組合員の要求に応えるよう要求していることも紹介された。
 こうした代議員の発言は、自治体職場では安倍政権—総務省と追随する当局のいちだんと強まる攻撃のなかにあって、いよいよ闘わざるを得ない状況に追い込まれ、怒りが広がり、闘いのエネルギーが満ちてきていることを強く感じさせるものであった。

連合の現状に強い批判相次ぐ
 また今回の大会で特徴的であったのは、連合労働運動の現状に対する強い疑念が少なくない代議員から上がったことであった。
 とくに連合・神津指導部がいったんは「高度プロフェショナル制度」を含む労働基準法改悪案を事実上容認したことについて、川本委員長自身も開会あいさつのなかで、「現場の単組、組合員の皆さんに心配、不安をおかけしたことについて、連合会長代行の立場からもお詫びを申し上げたい」と言わざるを得なかった。
 代議員からは「地方連合会や県本部などに情報が伝わらなかったことに組合員は不安を感じている」(岡山)、「労働組合の原点を忘れ、政府の方を向いたと思われかねない動き。多くの諸先輩が組織分裂を乗り越え、連合結集を果たした歴史を思えば、今一度原点に返り、連合運動を進めなければ」(高知)、「『総評労働運動を連合運動に継承・発展させる』として(自治労が)連合に入って、三十二年経つ。今、連合運動への社会的信頼や、期待は薄れているのではないかと危ぐしている」(長野)との発言はもっともである。
 自治労は連合内にあって、改めて連合・神津指導部が推進する路線を点検し、闘う方針を打ち立てるため努力すべきではないか。


安倍政権打ち破る大衆行動望む声
 自治労方針ではわが国の情勢について、「対米追従路線から脱却し、アジア近隣諸国と真摯(しんし)に向き合い、良好な関係を構築することこそ重要」と提起した。また、安倍政権が進める改憲策動や沖縄・辺野古への新基地建設反対、反原発などの方針も打ち出された。また代議員からも「日米同盟が優先され、戦争する国への回帰を許すな。朝鮮でも対話が必要」(沖縄)、「地方自治を守る観点からも沖縄の米軍基地の整理・縮小を」(静岡)との声が相次いだ。また、オスプレイ配備反対の闘いについて佐賀の代議員が報告、同様に青森、東京からも発言があった。そして、「大衆行動があって安倍政権に大きな打撃が与えられた。この流れを止めるな。全国統一行動を。もっと自治労が大胆に前面に出るべき」(秋田)といっそうの大衆行動を求める声も上がった。なお、沖縄の代議員は大会初日終了後、新潟駅頭で新潟平和運動センターの仲間の応援も受けながら、米軍基地の整理・縮小、辺野古新基地建設反対のアピール行動を行った。
 とくに朝鮮の核・ミサイル開発・実験を口実にトランプ米政権は対朝鮮圧殺策動を強めている。安倍政権はこうした米国の策動を一貫して支持、安保法制の成立を受け、自衛隊と米軍との共同作戦も常態化している。朝鮮半島を中心とする北東アジアでの緊張は激化、一触即発の事態も十分予想される状況となった。まさにわが国の進路が問われている。
 沖縄をはじめ、神奈川、東京、青森などの基地県では新基地建設、機能強化反対の闘いが粘り強く続いている。また安倍政権が進める亡国と戦争の道に対し、いわゆる保守層に位置する人士からも憂慮する声が上がっている。
 戦後、労働運動はサンフランシスコ条約に反対する闘い、一九六〇年安保闘争の中で中心的役割を果たし、広く国民の信頼を集めた。三度、わが国労働運動が真価を問われる情勢に直面している今日、自治労の決起の意義は強調するに値する。


政策的対抗軸明確にすべき
 支持率低下で求心力を急速に失っている安倍政権だが、野党第一党の民進党がその有力な対抗勢力になり得ないことがもはや明らかになった。
 「民進党は暴走する安倍政権の対抗軸となっていない」(群馬)との声も上がったが、一四年の自治労八十七回定期大会(別府大会)で決まった、「中道・リベラル勢力の結集」というこんにちでは「民進党基軸」ともいえる「新たな政治対応方針」を再検討する必要もあったのではないか。「民進党については…(中略)…『中道』『リベラル』勢力の中心軸として発展することを期待」(運動方針)というが、大会後に行われた民進党代表選では小池・東京都知事率いるグループとの連携に前向きな姿勢を示した前原氏が代表に選出、最近では大阪で公務員バッシングに狂奔している維新の会との連携さえ口にしているのだ。そして、民進党自体も離党者が相次ぎ、もはや分解過程に入ったともいえる。
 しかし、政治方針についてはせいぜい、「野党勢力として具体的に社民党と明記を」との声が上がった程度である。
 また、「野党間の連携を強化する動きを支持」(運動方針)と提起し、いくつかの県本部からも「野党共闘」を支持する声も上がったが、その政策的対抗軸については必ずしも鮮明でないと言わざるを得ない。
 戦後七十数年間、選挙に動員されてもそれに見合う生活改善はもたらされなかったこと、民主党の「政権交代」に裏切られた経験から、真の打開の道は選挙ではなく直接民主主義、労働者自身の断固たる闘争、広範で強力な統一戦線の力による政権樹立の道である。これこそ真の対抗軸となり得るのではないか。
 独立・自主の国の進路を切り開く闘いこそこんにち求められているのである。統一戦線の組織者として労働運動がその役割を果たすことこそ、こんにち求められている。

危機感バネにいっそう奮起を
 川本委員長はあいさつのなかで、自治労組織について、「二〇〇〇年に百万人だった組合員数は、二〇一五年の調査では八十一万人に減少している。組織率の低下は深刻だ。このままの状況で推移すれば、基本的な力の低下が進行し、組織の存続そのものが危機を迎えると言っても、過言ではない。これに対して、改めて組合員の側も、職場を守る、地域を守るといった自治労運動の起点に立ち返る必要がある」と強い危機感を示した。自治労の帰すうは一産別にとどまらず、わが国労働運動全体にかかわる課題だ。まさに自治労の存在意義を発揮するときだ。
 自治労が大会で示された闘い望む代議員の声に応え、すべての組合員の賃金・労働条件の改善・向上はもちろん、わが国の進路をめぐる課題でもいっそう闘いの先頭に立つことを強く求めたい。


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