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労働新聞 2017年7月15日号・4面 労働運動

全国港湾が業界団体に申し入れ/
「辺野古新基地への
土砂運搬拒否せよ」

仲間と職場の安全守るため要求

全国港湾「辺野古新基地建設
反対委員会」・諸見力事務局長

 全港湾や検数労連、日港労連など港湾労組で構成される全国港湾労働組合連合会(糸谷欽一郎委員長)は五月二十九日、業界団体である日本港運協会に対して、沖縄・辺野古新基地建設の工事に使われる土砂の搬出入業務を拒否するよう求める要求書を提出した。要求書では団体交渉権に基づいて、労使協定の締結を求めている。この土砂搬出元としては徳之島、奄美大島、佐多岬、天草、五島、門司、瀬戸内の計七地域が想定されている。全国港湾はこの間、辺野古新基地建設をはじめ、安保法制や共謀罪などに対して積極的に反対する取り組みを強めてきた。今回の申し入れについて、諸見力・全国港湾「辺野古新基地建設反対委員会」事務局長(全港湾書記次長)に聞いた。(文責・編集部)


安全な職場は労使共通の思い
 日本の港湾は先の大戦で兵たん基地とされ、軍艦などへの荷役を強いられたという苦い歴史をもっている。また、その後も朝鮮戦争、ベトナム戦争でも軍事荷役をさせられた経験がある。
 全国の港にはわれわれの仲間である港湾労働者が日々働いている。そうしたなか、安保法制などの政治状況の下、またも港湾がそうした戦争政策に使われ、結果的に仲間が戦争政策にかかわる作業をさせられるということについては、仲間の生命と安全、職場を守るために反対していくというのが大前提の考えだ。そうした思いがあって、今回、港運協会に対して申し入れた。土砂の運搬では実際に港が使われる恐れが高いので、業界としても拒否するよう求めている。
 協会側は「なんとも言えない」という答えだったが、個別企業においては、日常的に普通に安心、安全で作業ができて、収益があるというのが理想な企業活動なはずだ。戦争の危険を冒してまで、仕事を受注して、利益を得るのかよいのかといえば、そうは思わないだろう。この課題については労使ともに共通する考えだと思う。
 各地の港においては、地域行政に任せるだけではなくて、港運事業者自身も港を守っていくという立場で、率先して港の繁栄、経済の活性化に努めなければいけないはずだ。国策に引っ張られないよう、企業も安全、安心な職場を守るためにともに訴えてほしい思いをもっている。
 また、新基地建設は県知事の岩礁破砕許可を得ないまま、国が強行しているわけで、違法行為ともいえる。こんな違法行為に仲間を従事させるわけにはいかない。

地域住民との連携強めたい
 全国港湾は一昨年の秋ぐらいから国民的諸課題について具体的にどういう取り組みができるのか考えてきた。「労働組合の全国組織として前面に出るべきだ」という糸谷委員長の考えもあり、少しずつ行動をステップアップしてきた。
 そのうえで、辺野古の新基地建設工事で、港湾が使われることに対して、われわれとして何ができるのかということ考えようと、組織のなかに「辺野古新基地建設反対対策委員会」を設置した。そして、門司港(北九州市)など土砂搬出元と、搬入先である沖縄の港それぞれから情報を提供してもらい、取り組むべき課題を模索して、取りまとめてきた。二〇一五年末には、普天間基地の即時閉鎖・撤去を求める署名を集めて、請願行動などに取り組んだ。一六年三月には糸谷委員長を先頭に沖縄を訪問、翁長雄志県知事と面会、港湾労働者として、港が使われることに対して、組織を挙げて反対行動を行っていくことを伝え、逆に翁長知事から激励の声をかけてもらった。また、辺野古新基地建設に反対し、普天間基地の閉鎖・撤去を実現するためにつくられた「辺野古基金」事務局にも行って、カンパを手渡し、今後、どういう連携が可能かということ含めて話しもした。
 その後、五月には土砂が搬出される恐れが高い門司港に実際に行って、現場周囲を視察して、地域住民の方々と懇談も行ったりしてきた。「自分の住んでいる土は使わせたくない」という住民の方々の強い思いが伝わった。今回の申し入れはあくまで、港湾の労使関係であって、実際には地域と連帯して取り組まなければいけない。地域と連帯しなければ、さらに大きな力にはなり得ない。
 「辺野古土砂搬出反対全国協議会」やそこと連携している各地の住民団体との連携もいっそう強めていきたい。


闘いの歴史思い起こしながら
 全国港湾は北海道から沖縄まで日本の海に面した地域にほぼ組織がある。現場の仲間にこの問題を話し、ちゃんとオルグをすると、みんな理解してくれる。過去の日本の港湾が経験した苦い経験を考えたら当然だと思う。ましてや安保法制も成立するなどの昨今の状況を見れば、実際に戦争も起こりかねない状況が目の前にきている。
 こうした取り組みは、いわば、「反戦・反基地」の取り組みだが、それを自分たちの職場の課題、労使の問題として取り上げたことに大きな意味があると思っている。
 自分たちが作業をすることが、結果的に新基地建設への加担となってしまうということを想像した場合、自分たちの足元の問題だと踏み込んで考えなければいけない。港湾労働者はかつてベトナム戦争のときに軍事物資の荷役を拒否して闘った。また、一九九一年の湾岸戦争のときも自衛隊の海外派兵物資荷役に反対した。日本の労働運動が十分な存在感を発揮できていないなかで、もう一度どこかで帯を締め直さなければならないという思いもある。



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