労働新聞 2002年12月5日号 労働運動

人勧・合理化攻撃に抗して
ストライキで闘う
闘ってこそ要求は実現する
スト打った自治労傘下単組に聞く

 8月の人事院勧告以降、各自治体では軒並みに給与削減、一時金カットなどが提案されている。こうした攻撃に対し、自治労の全国統一行動日である11月22日を中心に、各地で加盟単組によるストライキが行われた。折しも国際労働機関(ILO)は21日、わが国政府に対して、公務員にもスト権や団体交渉権を認めるべきとの勧告を行った。ストを背景にした具体的な闘いでしか労働者の生活は守れない。今回、ストを闘った自治労傘下の単組役員に聞いた。た。

29分スト
道の削減案を撤回
全北海道庁労組 出村 良平 書記長

 人事委勧告の中身は、国と同じ数字で2.06%の減額だ。また期末・勤勉手当も0.05カ月分減らすという内容だ。それを減額調整という形で、4月にさかのぼってカットを適用するという。
 それと併せて、北海道では一時金が7.5%カットされており、これが3年間続いている。その以前にも5%カットされており、一時金のカットが延べ4年間も続いている。北海道では昨年もマイナス勧告が出された。
 道当局との交渉では、4月にさかのぼってのカットは違法ではないかということを大きな論点にした。この点で合意が得られなければ、29分のストライキを行うと通告して、交渉を行ってきた。
 もともとは、1時間のストを構えて、とくに、道独自の減額措置をやめるべきだと要求して、今回の賃金確定闘争をやってきた。
 スト当日の朝の交渉で、道の独自措置については、3月分の手当の7.5%カットについては「中止をする」との回答があったので、1時間ストは中止した。


吹雪の中、総決起集会開き決意固める(11月21日、北海道庁前)

 私たちはストを打ったが、要求実現という意味で、ストを構えるのとそうでないのでは、全然効果が違う。
 今回の人勧は、小泉首相が「官民格差の是正」などといって公務員の賃金カットを盛んに言っていたように、相当政治的色合いが強いと思う。
 「人勧準拠」というが、公務員の賃金が下がることで民間の賃金は上がるのか。実際は、公務員が下げられれば民間にも悪影響を及ぼすだけだ。来春闘にも影響していく。
 北海道の場合は、他県にも同じところはあると思うが、官が地域の賃金相場をつくってきたという面がある。だから、官が下がれば民間も下がるというのが実際で、こういう悪循環は止めなくてはいけない。
 結果的には4月まで削減をさかのぼるということに抗議して29分のストを打った。
 北教組や自治労道本部とも連携し運動を進めてきたが、以降もがんばりたい。

29分スト
現状で民間の賃金は十分か
秋田県本荘市職労 小松 幸雄 書記長

 今回の人勧で不利益部分の遡及(そきゅう)が出されているが、これはきわめて違法性が高い。民間の企業であれば、妥結した以降の賃金が変化することはあっても、前の分は戻せとはならない。
 今回、2.03%の削減が出されたが、地方はただでさえ国より低い水準にあるのに、国と同じ内容の勧告では国との格差がますます開いてしまう。
 地域の事情からいうと、労働組合もない中小の地場の企業が多い。公務員が地域経済の中心になっているのが実際だ。公務員の給料が下がれば、来年の春闘の段階で民間労働者の賃金を抑える口実にされるのは目に見えている。これでは悪循環だし、地域に与える影響も大きい。
 また、全国で自治体労働者の賃金削減が行われるわけで、経済に与える影響も大きい。そう考えると、ただ単に「人勧準拠」というのはどうかと思う。単純に比較するのではなくて、民間の労働者はこれで生活できるのかということも考える必要がある。こうした検証もなしに人勧準拠というのはどうか。これは組合員の共通した思いだ。

1時間スト
市長の政治責任追及へ
新潟県三条市職労 佐藤 一博 書記長

 三条市は今年の1月に3%2年間削減という提案が行われ、最終的に2月に2.5%削減を2年間行うという内容で合意した。これが今年の4月から始まっている。これはあくまで本俸のみということで、ボーナスなどには波及していない。
 しかし、今回の人勧によって削減を上乗せするという提案を行ってきた。これまで交渉を4回ぐらい行ってきたが、当局は、ただ、ひたすら「財政が厳しいから」と、それだけを繰り返し、歩み寄る姿勢がまったくないのでストを打った。
 公務員の賃金が下がれば、家計の財布のひももきつくなる。今でさえ地域は冷え込み、いっそう地域経済に悪影響が出る。
 三条市の場合は、県と違って、2億足りなくて2002年度予算が組めないという状況があった。市当局の提案は、このうちの1億は市民が負担し、もう1億は職員が負担し、その数字が先の3%2年間減額ということだった。
 今回、人勧を実施すると約1億1000万円が浮く計算になる。予算編成の時の話は(職員負担は)1億ということだったので、私たちは、それでは人勧実施による減額を市独自の2.5%削減・2年間を、入れ替えればよいではないかと言った。入れ替えれば不足する財政で足りない分はそこで浮くではないかと。ところが当局は、「それはそれ、これはこれ」などとということで、話は平行線のままだったのでストを打った。
 「財政難」がその理由にされるが、財政当局の無責任な財政運営や、責任の所在が明らかになっていないのになぜ一方的に職員、市民に犠牲を押しつけるのか、とても納得できない。責任を当局がキッチリ取って、それでも足りなくて我慢をしてくれというなら別だが、実際には当局は「私たちには責任はない」などとと交渉の中で言っている。
 また、市長の話として「国の職員の賃金を100とすれば県の職員は90、市の職員は80でよい」と言ったと新聞で伝えられている。市長にこういう持論があるとすれば、本当のところは財政難が理由ではなく、その持論を押し付けるために職員に無理難題をふっかけているのが実際ではないのか。市長は、議会では「財政事情は良くなっている」と言いながら、職員には「悪い」と言っている。どちらが本当なのか。こうした部分も明らかにしていきたい。

2時間スト
市民と共に合理化と闘う
兵庫県宝塚市職労  梶川 美佐男 委員長

 今年の人勧で平均2%の削減案が出されたが、この実施時期については来年の1月からの削減は承知しているが、4月にさかのぼってマイナス調整することは、不利益不遡及の原則からして法的にもおかしいし、いったん受け取ったものを後から返せというのもおかしい。だから私たちは遡及部分については絶対ダメという姿勢だ。
 また、当局は「財政が厳しい、77億の累積赤字がある」といい、これを埋めるために「全職員の給与を1年間凍結する」「今58歳で昇給がストップする制度を55歳にする」という。さらに、職員の削減、現業職場と保育所、幼稚園の将来の民営化の検討、その上で、来年3月末の退職者については正規の職員の補充をせず、アルバイトの職員を配置するという提案をしてきている。一方で管理職はいっさい減らす計画がない。
 特に賃金については全員2%削減と全員昇給延伸だが、他の自治体は役職のトップに近いほどカット率は高い。宝塚市ではそれが一律だ。
 市は1年半ほど前に約38億円をかけて温泉ランドをつくった。市長は黒字になるといっていたが、すでに赤字を出している。赤字は税金で補てんするので、これの責任も追及している。また、アルゼンチン債を、市の文化振興財団が購入して、約8000万円が回収不能となっている。他にもいろいろあるが、こういう財政運営の失敗を職員や市民の責任であるかのように押し付けるのはおかしい。また、市は財政危機を理由に公共料金の引き上げや市民サービスの切り捨ても行おうとしている。市民からも反発もくるだろう。市民と共に闘っていきたい。


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