20020715

かつてない合理化提案
退職金の確保で成果も
職場・地域から 労働運動の再構築を

JAM雇用対策本部室に聞く


 リストラ、人員削減の攻撃が続く中小の労働者は厳しい状況に置かれている。中小の機械・金属産業の労働者を中心に組織しているJAM(服部光朗会長)などは、雇用と生活を守るため奮闘している。JAM雇用対策本部にこの間の合理化の状況と対応、また今春闘の特徴、そして今後の闘いの方向などについて聞いた。

 JAM結成以来、加盟単組(全組織数2255)を対象に調査しているが、「JAM加盟単組における雇用調整・合理化発生状況の推移」を見ると、昨年10月から12月にかけては、その増加ぶりはすさまじいものがあった。3カ月前に比べると約3倍以上、急激に増加している。中身を見ると、一番多いのが「労働条件の切り下げ」だ。また、「希望退職募集」や「一時帰休」などが多くなっている。
 この時期は翌年3月末決算に向けて、各社とも金融機関の支援を受けるために、とにかく赤字を出さないようにと相当合理化に力を入れていた。
 また、実施はまだされていないものの会社側からの「合理化提案」の状況を見ると、3月25日、4月20日調査では、「労働条件切り下げ」が、1月31日調査と比較して、急激に増えている。これが先述した「逆提案」として行われている。希望退職募集もかなり増えている。
 この数字は、JAM全単組数の28%、約3分の1の単組で、なんらかの合理化提案が出たということだ。これはかつて経験したことのない状況だ。

■退職金確保で前進も
 また最近におけるJAM単組における倒産(法的整理)についても調査を行った。
 そこでの特徴は、退職金となる労働債権が確保されない、あるいは確保されても大幅にカットされる事態がかなりあるということだ。JAMとしては、これらの経験を踏まえ「退職金の保全措置」ということに重点を置いて、徹底した取り組みを進めている。
 退職金というのは、やはりその労働者にとっては、退職後の生活設計に欠かせないものだ。それを失う、あるいは大幅にカットされるということは大変なことだ。しかし、そうした事態があちこちで起きている。
 ある一般機械の会社だが、3月に地裁に民事再生手続開始の申し立てと同時に、経営者は従業員全員を集めて、「全員解雇」「会社の清算をする」と通告をした。「会社清算」を前提に民事再生の申し立てをするというのはあまりにひどいということで、当該単組、地方、本部、含め様々な取り組みを行った。
 そして、地裁に対して「なぜ、こんな申し立てを受けたのか」と申し入れを行った。結局、地裁は「労働組合が民事再生の手続を求める上申書を上げなければ適用の決定をしない、棄却します」ということを明らかにした。地裁の決定を受けて、会社側や代理人は、労働組合との条件交渉に応じてきた。これは画期的な成果だ。
 また、あるケースでは親会社に対して、団体交渉を要求し、会社側は団交は拒否したものの、最終的には親会社が、退職金を加算するということで、平均78.3%退職金の確保ができた。これは民事再生法を会社清算の目的で使う問題点を突いて、親会社から退職金の原資を引き出すことができたという点で闘いの成果があった。
 また、「営業譲渡」という形で企業を切り売りような再建方法も多くなっている。「営業譲渡」というのは「買い手」に非常に都合がいい。欲しいものだけ値切って買えるわけだ。値切って買いたたいた企業に、どれだけ労働者が残れるのか。きわめて企業側に都合のいい処理の仕方だ。最近の市場主義の時代の再建手法というのが、悪質な典型例となっており、許されないことだ。

■生活守る賃金制度を
 今春闘で特徴的だった1つに「賃金体系の見直し」が多く提案されていることがある。また「成果型賃金」なども提案されている。
 やはり賃金というのは、企業業績だけで決まるのではなく、その社会性によっても決まるものだ。こうした社会的な賃金水準というものをどう作り上げていくのかが、これからの課題だ。この点について、JAMはやはりミニマムを重視していこうと考えている。今後は、ナショナルミニマムや産別ミニマムなどミニマム運動の視点からの取り組みが考えられる。
 中小ではまだまだ、生産現場が中心で労働者がいる。私たちは中小で働く現場の人たちの賃金というのが本当に、十分な生活設計ができ、安心して働いていけるようなものにしていかなければならない。運動としてそこを重点にしていこうと考えている。
 こんにちの労働運動を考える時、もう1度、「職場からの労働運動」を再構築していこうということがこれからの課題ではないか。
 なんといっても労働運動は原点である職場のところで、しっかりしないと、再構築はできない。それが今、問われている。
 さらにいえば、地域の運動というのをどれだけしっかりと再構築していくのか。やはり地方連合通じた横の連携、連帯感というのが求められているのではないか。